HACCPは、食品を扱う業者が行う衛生管理手法の一つであり、1970年代にアメリカで取り入れられたものです。その後、世界中にHACCPの考え方が広まり、今では食品衛生管理の国際基準となっています。

HACCPは、食品製造において原材料の搬入から、製造、梱包、出荷の全工程でそれぞれに起こりうる食品汚染の危険因子を分析し、その危険を回避するために科学的根拠に基づいた方法で管理を行うものです。

この手法は、全ての工程を網羅的に監視することができ、問題が生じた工程を経て製造された製品の出荷を未然に防ぎます。そのため、万が一製品に問題が発生したとしても、どの工程で危険が生じたのかを事後でも容易に分析することが可能になりました。

日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて食品を扱う全業者に対してHACCP導入が義務化される予定ですが、実際にHACCPを導入するにあたり、業者内にHACCPに関する特別な資格を持つ人員が必要なのでしょうか?詳しく見てみましょう。

HACCP導入は資格がないとできない?

HACCPを導入するためには、まず業者内でHACCPチームを編成し、自社製品の分析や製造工程の一覧化を行う必要があります。

その上で一覧化された各製造工程で起こりうる食品汚染の危険因子を分析し、それに対する安全管理法をマニュアル化し、実際にマニュアルが適正に行われているのかを記録し、問題点が生じたら管理法についてその都度再分析を行うという一連の計画書を作成します。
そして、HACCPの承認には、これらの計画書がHACCPの基準に該当しているか、施設の基準は守られているか、という点が第三者機関に審査されます。

このように、HACCPの導入には、HACCPのガイドラインに則った衛生管理計画が行われているかが重要であり、HACCPチームにはHACCPや衛生管理の知識を持つ人員を配置しなければなりません。そのため、一般的な業者では人材の育成が困難な場合もあるのです。つまり、人材が豊富な大企業以外では、どのように計画を立てるのかという問題とも向き合わなくてはならないということです。

そこで、これらの業者の支援を行うのが、HACCPコーディネーターやHACCP普及指導員です。これらの資格保持者は、HACCPの構築や検証を行うための専門知識を持ちます。人員が足りない場合には、これらの資格を持った講師を招いてチームを編成することもできるのです。

しかし、地域での講習会やe-ランニングなどを利用して知識を深めた人材がいる場合には、これらの資格を持つ人員は必要ではありません。つまり、HACCPは専門的資格を持った人がチームの一員となることが望ましいとは考えられますが、HACCPの基準に合った計画書が作成できれば、資格がなくても導入することは可能なのです。

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HACCP認証を獲得するメリット

HACCP認証とは、業者内の衛生管理が国際基準のHACCPに合致しているかを第三者機関に認証してもらうことをいいます。

認証には審査費用がかかり、更新制のため数年おきに10~20万円の更新料も必要になります。しかし、近年では先進国を中心にHACCPを義務化する国が増えており、食品の国際取引を行う際にもHACCPによる衛生管理が求められる時代になりました。そのため、HACCP認証を獲得することは、国際的な取引を円滑にし、国内外に自社製品の安全性をアピールするきっかけにもなります。

また、衛生管理の知識を持った人員を育成するきっかけにもなり得るため、業者全体の衛生管理意識が高まる効果も期待できるでしょう。

HACCP認証の種類は?

HACCPの承認を下す機関は一つだけでなく、日本では様々な団体や自治体が認証を独自に行っています。

代表的なものは、各自治体が承認するその地域独自の地域認定 HACCP、各業界団体がその業界・業種に限られている業界団体HACCP、厚生労働省が食品衛生法で定める総合衛生管理製造過程制度などが挙げられます。

認証する機関は異なりますが、根本的にはHACCPの考え方が基本とされており、それぞれに大きな差はないとされています。

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