FAQISO14001の要求事項に関するよくある質問
環境の国際規格であるISO14001は、環境負荷の軽減や法事例順守などを行い、環境に配慮した管理体制を構築するための規格です。
近年では、グリーン調達への対応や取引先からの要求を背景に取得する企業も増えています。
これからISO14001の取得を考えている担当者は、その情報量や進行の仕方などに頭を悩ませているのではないでしょうか?
そこで本記事では、ISO14001の要求事項を各項目に分けてわかりやすく解説するとともに、2026年版の変更点や実務で対応する際のポイントまで紹介します。
目次
ISO14001とは?

ISO14001とは、国際標準化機構(ISO)が発行した「環境マネジメントシステム(EMS)」に関する国際規格です。
一言でいえば、「企業活動が環境に与える負荷を最小限に抑えつつ、持続可能な事業成長も同時に達成するための仕組みづくりのガイドライン」であるといえます。
ISO14001は環境パフォーマンスの改善を目指す規格
ISO14001が対象とする「環境」は、自然保護のみを指すものではなく、企業の活動・関係・行為が影響を与える大気や水、資源、土壌など幅広い自然環境を含みます。
そのため本規格を導入することで、「環境負荷の低減」や「法令順守」を通じて、環境パフォーマンスを継続的に改善できる点が特徴です。一度きりの取り組みで終わらせず、PDCAサイクルによって仕組みそのものを見直し続けることが求められます。

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ISO14001の要求事項は組織の事業内容に応じて運用する
ISO14001の要求事項は、自社の経営目標や事業活動と矛盾しない形で運用することが重要です。
例えば、製造業の場合には、以下のような取り組みが考えられます。
| 取り組み | 組織の環境への影響 | 自然環境への影響 |
|---|---|---|
| 不良品率の低減 | 無駄なコストの抑制 | ごみの低減 |
| 残業を減らす | 従業員のモチベーション・作業効率の向上 | 電気使用量の削減 |
自社の事業内容とかけ離れた取り組みを掲げても現場に定着しないため、業務実態に即した運用がポイントです。
ISO14001の要求事項一覧と各項目の内容
要求事項とは、ISO14001を取得するために企業が実現すべき基本的な要件のことです。
規格は「箇条1」から「箇条10」までの構成となっており、要求事項に沿って体制を構築・運用することで、環境への配慮が仕組みとして機能していることを証明できます。
1:適用範囲~3:用語及び定義
ISO14001における適用範囲や要求事項で用いる引用規格、用語の定義などについて定めた章です。
企業が実際に取り組む内容をまとめた部分ではないものの、要求事項をより正確に理解するために、一度は目を通しておくと良いでしょう。
4:組織の状況
PDCAサイクルのPlan(計画)にあたる部分で、自社が置かれている状況を分析するプロセスです。
内部・外部の課題整理や、顧客・地域社会といった利害関係者のニーズを特定します。また2024年の追補に基づき、「気候変動」が自社のマネジメントシステムに与える影響を考慮することが必須となっています。
これらの分析結果を踏まえたうえで、自社の「どの事業」の「どの拠点」に環境マネジメントシステムを適用するのかという「適用範囲」を明確に決定する必要があります。
5:リーダーシップ
PDCAサイクルのPlan(計画)にあたる部分で、経営層が環境マネジメントに主体的に関与することを求める章です。
トップマネジメントは、環境方針の決定や全従業員への周知、運用に必要なリソース(予算・人員)を確保する責任を負います。また、組織内の役割と権限を明確にし、現場と経営が一体となって環境目標を達成できる体制を整えることが求められます。
6:リスク及び機会への取組み
PDCAサイクルのPlan(計画)にあたる部分で、成果達成に影響するリスクと機会を特定し、対策を取るためのプロセスの確立を求める章です。
具体的には、自社の活動が環境に与える「環境側面」を洗い出し、排出物や資源使用などの影響を評価します。同時に、法規制などの「遵守義務」を明確にし、違反リスクを防ぐ体制を整えます。
こうした取り組みをもとに具体的な環境目標を立て、運用フェーズで迷わず動けるよう、具体的な対策案と手順を決定します。
7:支援
PDCAサイクルのPlan(計画)にあたる部分で、環境マネジメントシステムを円滑に動かすための「土台」を整える章です。
具体的には、適切な人的・物的リソースを確保し、従業員に対して必要な教育や訓練を実施して環境意識と能力を高めます。また、必要な情報の周知や文書管理のルールを定め、組織全体が同じ認識で活動を継続できる仕組みを構築します。
8:運用
PDCAサイクルのDo(実行)にあたる部分で、計画した取り組みを実行するフェーズです。
具体的には、環境に影響を与える業務やプロセスごとに手順を定め、日常業務に組み込んで管理します。例えば、省エネルギーや廃棄物管理の手順、外部委託先への環境基準の適用などが挙げられます。
あわせて、事故や災害といった「緊急事態」を想定した対応手順の策定や定期的な訓練の実施も必要です。
9:パフォーマンス評価
PDCAサイクルのCheck(確認)にあたる部分で、運用した結果、マネジメントシステムが計画どおりに機能しているかを評価するフェーズです。
具体的には、定期的に目標の達成度や現場の遵守状況を監視・測定し、内部監査と経営層によるマネジメントレビューを通じて、組織全体のパフォーマンスを評価します。
この振り返りによって、現状の課題を浮き彫りにし、次の改善へとつなげるための判断材料を揃えます。
10:改善
PDCAサイクルのAction(改善)にあたる部分で、パフォーマンス評価の結果をもとに、環境マネジメントシステムを継続的に改善するフェーズです。
評価で明らかになった課題や問題点に対して、是正処置や予防処置を行い、業務プロセスや管理方法を見直します。この継続的改善を繰り返すことで、環境パフォーマンスの向上と事業成長を目指します。
【2026年4月発行】ISO14001:2026の改訂で要求事項はどう変わった?
ISO14001:2026は、2026年4月15日に正式発行されました。2015年版の基本的な枠組みを維持しながら、気候変動や生物多様性などの環境課題、リスクと機会、ライフサイクルの視点などがより明確になっています。
ここでは、ISO14001:2026で特に押さえておきたい変更点と2015年版から移行する企業が確認すべきポイントを解説します。
ISO14001:2026の主な変更点
ISO14001:2026では、環境課題への対応やリスク・機会の考え方が明確化され、事業活動だけでなくサプライチェーンを含めた環境管理がより重視されています。
主な変更点は以下のとおりです。
| 環境課題への対応の明確化 | 気候変動や生物多様性など、幅広い環境課題への対応がより明確になりました。 |
|---|---|
| リスク及び機会への取組みの明確化 | 環境側面や順守義務などを踏まえ、リスクと機会を特定・管理する考え方が明確になりました。 |
| ライフサイクルの考え方の強化 | 製品・サービスのライフサイクル全体を考慮した環境管理がより重視されるようになりました。 |
| 外部提供プロセスなどの管理強化 | サプライヤーなど外部から提供されるプロセス・製品・サービスも含めた管理がより重視されます。 |
| 変更管理の考え方を明確化 | EMSに変更を加える際に、環境面への影響を考慮して計画的に管理することが明確になりました。 |
| リーダーシップの強化 | 経営層が環境マネジメントを主導し、組織全体で環境への責任を共有することがより重視されます。 |
ISO14001の改訂情報の詳細は、以下の記事をご覧ください。

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ISO14001:2026への移行に向けて企業が確認すべきこと
ISO14001:2015から2026年版へ移行する企業は、新しい規格とのギャップを確認し、既存のEMSに必要な変更を反映することが重要です。
まずはISO14001:2026の要求事項を確認し、現在の環境マネジメントシステムと比較して、見直しが必要な項目を洗い出しましょう。
なお、2015年版からの移行期間は通常3年間とされています。具体的な移行期限や審査の扱いについては、認証を受けている認証機関に確認することが重要です。
ISO14001要求事項を満たす実務運用のポイント

ISO14001の要求事項を満たすには、規格に合わせて書類を整えるだけでなく、自社の事業活動に環境マネジメントを組み込み、継続的な改善につなげることが重要です。
環境側面を洗い出して重要度を適切に評価する
環境側面は、自社の事業活動に伴って環境に影響を与える可能性がある要素を幅広く洗い出し、重要度を評価することがポイントです。
例えば、電気・紙・廃棄物だけでなく、原材料の調達、製造、輸送、製品の使用・廃棄など、事業活動の各段階から環境側面を確認します。そのうえで、環境への影響が大きいものを特定し、優先的に管理します。
順守義務を一覧化し実際の遵守状況まで確認する
ISO14001では、環境に関する法令や条例などの順守義務を把握し、実際に守れているか確認することが重要です。
適用される法令を一覧にするだけでなく、必要な届出や測定、点検などが適切に実施されているかを定期的に確認し、法令違反の防止につなげます。
環境目標を事業活動と関連付けて設定する
環境目標は、自社の事業活動や環境側面と関連付け、実際の改善につながる内容にすることがポイントです。
例えば「環境に配慮する」といった抽象的な目標ではなく、「電力使用量を○%削減する」「廃棄物を○%削減する」など、達成状況を確認できる目標を設定します。
環境方針と現場の活動を一致させる
環境方針は、経営層が掲げるだけでなく、現場の具体的な活動に反映させることが重要です。
環境方針に掲げた内容と環境目標、日々の業務がつながっていれば、従業員も自分の業務と環境活動の関係を理解しやすくなります。
ISO14001の審査で確認されやすいポイントとは?

ISO14001の審査では、必要な文書がそろっているかだけでなく、要求事項に沿った仕組みが実際の業務で運用され、環境パフォーマンスの改善につながっているかが確認されます。
ここでは、特に確認されやすい4つのポイントを解説します。
環境側面の特定・評価が実際の事業活動と一致しているか
環境側面が、自社の実際の事業活動を適切に反映しているかが確認されます。
例えば、電気使用量や廃棄物だけでなく、原材料の調達、製造、輸送、製品・サービスの提供など、環境に影響を与える活動を幅広く洗い出せているかがポイントです。
法令・条例などの順守義務を適切に管理しているか
環境関連の法令・条例などを把握し、自社に適用される順守義務を適切に管理できているかが確認されます。
法令の一覧を作成するだけでなく、定期的に改正情報を確認し、実際の業務で遵守できているかまで確認することが重要です。
内部監査とマネジメントレビューが形骸化していないか
内部監査やマネジメントレビューが、形式的な手続きになっていないかが確認されます。
監査やレビューで見つかった課題を改善につなげ、その結果を次の活動に反映できていることが重要です。
緊急事態への準備・対応を実際に検証しているか
環境事故や災害などの緊急事態を想定し、対応手順が整備されているだけでなく、実際に機能するかを確認しているかがポイントです。
必要に応じて訓練やテストを行い、その結果から手順を見直すことで、緊急時にも適切に対応できる仕組みを整えられます。
ISO14001取得の流れ
ISO14001を取得するには、環境マネジメントシステムを構築して実際に運用し、その後に認証機関の審査を受けるという流れで進めます。
取得までの大まかな流れは、以下の5段階です。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 1. 準備 | 担当者を決め、取得方針を社内で共有します |
| 2. 現状分析・仕組みづくり | 現在の業務とISO14001の要求事項を比較し、必要な仕組みや文書を整備します |
| 3. 運用 | 構築した環境マネジメントシステムを実際の業務で運用します |
| 4. 内部監査・審査 | 内部監査やマネジメントレビューを行ったうえで、認証機関による審査を受けます |
| 5. 是正・認証取得 | 審査で指摘された事項に対応し、問題がなければISO14001の認証を取得します |
取得までの期間は、一般的に6か月~1年前後を目安に考えるとよいでしょう。ただし、企業規模や適用範囲、現在の環境管理体制によって必要な期間は変わります。
特に、ISO14001では仕組みを作るだけでなく、実際に運用して、その有効性を確認することが重要です。そのため、審査直前に準備を始めるのではなく、余裕を持って計画を立てましょう。
自社だけでの対応が難しい場合は、ISOコンサルタントの支援を受けながら取得を進めることがおすすめです。
ISO取得の流れは、詳細は以下の記事をご覧ください。

【業種別】ISO14001取得費用はいくら?相場・内訳・維持費用を解説
これからISO14001の認証取得を考える企業にとって、認証取得までの流れは気になるポイントではないでしょうか?自社取得の場合には1年以上、コンサルタントに依頼しても半年以上かかることが一般的であるこ…
ISO14001要求事項に関するよくある質問

ISO14001要求事項に関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。
Q:ISO14001の要求事項とは何のこと?
ISO14001の要求事項とは、組織が認証を取得・維持するために「守るべきルール」をまとめたものです。環境マネジメントシステムを構築・運用するうえで、最低限満たさなければならない条件が規定されています。
Q:2024年追補で追加された気候変動への対応とは?
気候変動への対応とは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)において、気候変動が事業や情報セキュリティに与える影響をリスクとして考慮することを求める規定です。
自社の仕組みが「気候変動からどのような影響を受けるか」を検討することが求められます。具体的には、以下の3つを行う必要があります。
- 異常気象や法規制の変化が、事業に及ぼすリスクや機会を特定する
- 1が、環境マネジメントシステムに影響するかどうかを判断する
- 検討したプロセスを記録として残す
Q:要求事項にある「環境側面」と「環境影響」の違いは?
「環境側面」と「環境影響」には、「環境側面:原因、環境影響:結果」という違いがあります。
- 環境側面(原因):環境に変化を与える可能性のある事業活動(例:電気の使用、廃棄物の排出)
- 環境影響(結果):環境側面の結果として生じる変化(例:地球温暖化、資源の枯渇)
まとめ
この記事では、ISO14001の要求事項を中心に、環境マネジメントの基本とその仕組みをわかりやすく解説しました。
ISO14001は、企業が環境に与える影響を把握し、リスクを低減しながら持続的な改善を行うための国際規格です。取得することで、取引先からの信頼向上や業務効率化、社員の意識改革など、企業経営に役立つさまざまなメリットが得られます。
メリットを最大限に享受し、「環境への配慮」と「事業活動の成長」の両立を目指すうえで、ISO14001要求事項の理解は非常に重要です。本記事を読み込んでいただいて、環境マネジメントシステム構築に役立ててください。
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原材料の調達から製品・サービスの提供、廃棄まで、自社の事業活動全体を起点に環境側面を洗い出すことがポイントです。