前提条件プログラム(PRP)とは?HACCPとの関係や具体例を解説

FAQ前提条件プログラム(PRP)に関するよくある質問
HACCPは危害要因分析と重要管理点を中心とした衛生管理の手法ですが、従来型の衛生管理である一般衛生管理プログラムとは異なるものです。
HACCPは、この一般衛生管理プログラムを前提条件としています。HACCPに沿った衛生管理は、2020年6月1日施行の改正食品衛生法で制度化され、2021年6月1日から完全施行されました。HACCPに沿った衛生管理を行うには、一般衛生管理の実施も欠かせません。
そこで本記事では、前提条件プログラムの定義や必要な理由、HACCPとの関係、具体的な管理項目を解説します。さらに、ISO22000・FSSC22000におけるPRPの位置付けも整理し、食品安全の管理体制を整えるためのポイントを紹介します。
前提条件プログラム(PRP)とは?

前提条件プログラム(PRP)とは、食品を安全に製造・提供するために、日常的に整えておくべき衛生管理の基本的な条件や活動のことです。
ISO22000:2018では、PRPを「組織内及びフードチェーン全体での食品安全の維持に必要な基本的条件及び活動」と定義しています。具体的には、施設・設備の衛生管理や従業員の衛生教育、害虫・害獣の防除などが該当します。
PRPを適切に整備することで、食品への汚染や異物混入などのリスクを低減し、HACCPによる危害要因の管理を効果的に進められます。
前提条件プログラムが必要な理由
前提条件プログラムが必要なのは、食品を安全に製造・提供するための衛生環境を整え、食品安全上のリスクを日常的に低減するためです。
例えば、施設の清掃が不十分であれば、食品に微生物が付着するおそれがあります。また、従業員の手洗いや器具の洗浄・消毒が徹底されていなければ、食品への二次汚染につながる可能性があります。
こうしたリスクを防ぐには、個別の製造工程を管理するだけでなく、日常的な衛生管理を継続することが重要です。PRPでは、以下のような取り組みを通じて、食品安全を支える環境を整えます。
- 施設・設備の衛生管理:製造場所や調理器具を清潔に保ち、汚染を防ぐ
- 従業員の衛生管理:手洗いや健康状態の確認などを徹底する
- 害虫・害獣の防除:ネズミや昆虫などによる汚染を防ぐ
- 食品の適切な取り扱い:原材料や製品の保管・運搬時の衛生状態を維持する
PRPは、HACCPによる危害要因の管理を効果的に機能させるための土台です。日常的な衛生管理を確実に実施することで、食品安全上のリスクを低減し、安定した食品の製造・提供につなげられます。
前提条件プログラムと一般衛生管理の関係
前提条件プログラム(PRP)と一般衛生管理は、どちらも食品安全を支える基本的な衛生管理です。日本の食品衛生管理では、一般衛生管理がPRPに相当するものとして扱われることがあります。
一般衛生管理には、施設・設備の清掃や従業員の衛生管理、使用水の管理などが含まれます。ただし、PRPの具体的な要求事項は適用する規格によって異なるため、ISO22000などの規格に沿って必要な管理方法を定め、継続的に運用することが重要です。
前提条件プログラムとHACCP・OPRP・CCPの違い
前提条件プログラム(PRP)は、食品安全を確保するための基盤を整えるものですが、HACCP・OPRP・CCPといった食品衛生に関するよく似た言葉と混同してしまう方がいます。
そこで、ここでは前提条件プログラムとHACCP・OPRP・CCPの違いについて詳しく解説します。
PRPは食品安全を支える衛生管理の基盤
PRPは、食品を安全に製造・取り扱いするための衛生環境を整え、汚染などのリスクを日常的に低減するための基本的な条件や活動です。
【主な活動】
- 施設や製造設備の清掃・洗浄
- 従業員の手洗いや衛生教育
- 害虫・害獣の防除
- 使用水や廃棄物の管理
こうした衛生管理を継続することで、食品への汚染や異物混入などを防ぎ、HACCPによる危害要因の管理を支えます。
HACCPは食品安全ハザードを分析して管理する仕組み
HACCPは、原材料の受け入れから製品の出荷までの工程で、食品安全上の危害要因を分析し、重要な工程を管理する衛生管理の手法です。
PRPで衛生環境を整えたうえで、工程ごとの危害要因を評価し、必要な管理方法を定めます。
例えば、加熱不足による食中毒菌の残存が懸念される場合は、加熱温度や時間などを管理します。PRPが施設全体の衛生環境を支えるのに対し、HACCPでは製品や製造工程に応じた危害要因の管理に重点を置きます。
| 比較項目 | PRP(前提条件プログラム) | HACCP |
|---|---|---|
| 目的 | 食品安全を確保するための基本的な衛生環境を整える | 食品安全上の危害要因を分析し、リスクを管理する |
| 管理対象 | 施設・設備、従業員、使用水などの衛生管理 | 原材料や製造工程における生物的・化学的・物理的危害要因 |
| 管理方法 | 清掃・消毒、衛生教育、設備の保守点検など | 危害要因分析に基づき、必要な管理手段や監視方法を設定する |
| 具体例 | 製造設備の洗浄、従業員の手洗い、害虫・害獣の防除 | 加熱温度・時間の管理、冷却工程の管理 |
| 位置付け | HACCPによる管理を支える基盤 | PRPを基盤として、重要な危害要因を管理する仕組み |
OPRP・CCPとの違い
OPRPとCCPは、ISO22000でハザード分析の結果に基づいて設定する管理手段です。CCPでは測定可能な「許容限界」を、OPRPでは測定または観察が可能な「処置基準」を定めて管理します。
| 項目 | 役割 | 管理の例 |
|---|---|---|
| PRP(前提条件プログラム) | 食品安全を支える基本的な衛生環境を整える | 施設の清掃、従業員の衛生管理 |
| OPRP(オペレーション前提条件プログラム) | ハザード分析で重要と判断された危害要因を管理する | 原材料の受け入れ時の確認、異物混入防止の管理など |
| CCP(重要管理点) | 重要な危害要因を許容可能な水準まで低減・防止するため、特に重要な工程を管理する | 加熱殺菌工程の温度・時間の管理 |
OPRPとCCPは、管理の厳しさで区別するものではありません。管理手段の性質や、許容限界と処置基準のどちらで管理できるかなどを踏まえて分類します。
例えば、加熱殺菌工程がCCPに該当する場合もありますが、実際の分類は製品や工程、危害要因の分析結果によって異なります。
前提条件プログラムの主な管理項目
前提条件プログラム(PRP)では、食品への汚染や異物混入を防ぐため、施設・設備の衛生管理から従業員の教育、食品の回収手順まで、幅広い項目を管理します。
具体的な管理内容は業種や製造工程によって異なりますが、基本となるのは、清潔な製造環境を維持し、衛生管理を継続的に実施することです。
ここで、主な管理項目と具体的な取り組みを確認しましょう。
施設・設備の衛生管理と保守点検
施設や設備を清潔で適切な状態に保つには、定期的な清掃と保守点検が欠かせません。清掃しやすい配置や汚染を防ぐ設備構造にも配慮し、衛生的な製造環境を維持します。
【管理項目の例】
- 整理整頓を行っているか
- 清掃がしやすいように機器や設備と壁の間隔が空いているか
- 床の下まで清掃が行き届くよう、設備と床の間に空間が確保されているか
- 製品を床に直置きしないように適切な位置に作業台が設置されているか
- 水が流れやすいよう、床に適切な勾配が設けられているか
- 更衣室や作業場、廃棄場などのゾーニングが行われているか
- チェックリストなどを用いて保守点検が行える状態になっているか
- 洗浄、殺菌は確実な方法で実践されているか
- 5Sは実行されているか
従業員の衛生管理と教育
従業員が食品を汚染する原因とならないよう、健康状態や身だしなみを管理するとともに、衛生ルールを理解して実践できるよう教育します。
【管理項目の例】
- 従業員は「するべきこと」と「してはいけないこと」を正しく認識しているか
- 従業員は衛生管理のための行動を日常的に実践できているか
- 従業員は衛生管理を確実に実行する意欲があるか
- 従業員は食品を汚染する微生物の種類やその微生物が及ぼす危害内容について知識があるか
- 従業員は微生物によって食品が汚染されないように制御する知識を有しているか
害虫・害獣の防除と使用水の管理
害虫・害獣による食品への汚染を防ぐとともに、食品や器具に使用する水の安全性を確保します。侵入や汚染の兆候を定期的に確認し、問題があれば速やかに対策を講じます。
【管理項目の例】
- 施設内に鼠族昆虫が侵入しているかどうかを定期的に点検できているか
- 施設内あるいは施設周辺に鼠族昆虫を誘引する要因はないか
- 侵入があった場合は侵入経路を特定し、対策することができるか
- 敷地内の鼠族昆虫の発生源が取り除かれているか
- 排水溝や換気扇など、侵入経路になりそうな場所の防鼠対策ができているか
- 作業用水と消防水、暖房用の水、冷凍機用の水などは混入しないように配管が分けられているか
- 使用水を再利用する場合は、適切な処理を行っているか
- 提供される、あるいは製品に使用する水は殺菌されたものであるか
- 水道水以外を作業用水として使用する場合は、定期的に水質検査を行っているか
排水・廃棄物の管理と食品の衛生的な取り扱い
排水や廃棄物を適切に処理し、食品や作業場が汚染されない環境を整えます。また、原材料の受け入れから製品の保管まで、食品の衛生状態を維持し、交差汚染を防ぐことが重要です。
【管理項目の例】
- 排水設備は逆流が発生しないよう定期的に整備・点検が行われているか
- 作業場の排水の方法は適切か
- 水質汚濁防止法を遵守しているか
- 蓋付きのゴミ箱を使用しているか
- 廃棄物処理法を遵守しているか
- 廃棄場と作業場は明確に区分され、作業場が汚染されないように対策されているか
- 食品の受け入れ基準が設けられているか
- 保管方法や保管場所の区分け、温度は適切で、二次汚染を防ぐことができるか
- 食品とその他の備品は明確に区分けできているか
- 衛生作業手順を遵守できているか
- 交差汚染防止対策がなされているか
食品の回収手順と検査設備の管理
食品の安全性に問題が発生した場合に備え、製品を迅速に回収する手順を定めておきます。また、検査に使用する設備や機器を適切に管理し、検査結果の信頼性を確保します。
【管理項目の例】
- 回収プログラムを迅速に発動できるよう、従業員に周知されているか
- 自主回収を行う際に、食品衛生法に基づく都道府県等への届出や、保健所の指示に対応できる体制が整備されているか
- 検査機器・設備がリスト化され、管理されているか
- 点検結果や校正結果が記録・保管されているか
前提条件プログラムは、衛生管理が現場で継続して実施されているかを確認し、点検記録などを活用して改善を重ねることが大切です。
ISO22000・FSSC22000におけるPRP
ISO22000やFSSC22000では、前提条件プログラム(PRP)を食品安全マネジメントシステムの重要な要素として位置付けています。
PRPによって衛生的な製造環境を整え、HACCPによる危害要因の管理と組み合わせることで、食品安全を確保します。ただし、両規格では要求事項や適用範囲に違いがあるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
ISO22000・FSSC22000とは
ISO22000は、食品の安全性を確保するためのマネジメントシステム規格です。食品の製造・加工だけでなく、保管や輸送など、フードチェーンに関わるさまざまな組織が対象となります。
一方、FSSC22000は、ISO22000を基盤に、食品安全に関する分野別の前提条件プログラム規格(食品製造向けのISO/TS 22002-1など)や追加要求事項などを組み合わせた認証スキームです。食品関連企業が自社の食品安全管理体制を整備し、継続的に改善するために活用されています。
ISO22000・FSSC22000におけるPRPの位置づけ
ISO22000では、組織の業種や活動に応じたPRPを確立・実施し、食品安全を支える衛生環境を維持することが求められます。PRPだけで危害要因をすべて管理するのではなく、ハザード分析に基づいてOPRPやCCPも設定し、組み合わせて運用します。
FSSC22000では、ISO22000の要求事項に加え、業種に応じたPRP規格や追加要求事項への対応も必要です。そのため、施設の清掃や設備管理などの日常的な衛生管理に加え、適用される規格の要求事項を確認し、自社の管理体制に反映することが重要です。
まとめ
この記事では、前提条件プログラムの定義や必要な理由、HACCPとの関係、具体的な管理項目について解説しました。
PRPは、施設・設備の衛生管理や従業員の衛生教育、害虫・害獣の防除などを通じて、食品への汚染や異物混入のリスクを低減し、HACCPによる危害要因の管理を支えます。また、OPRPやCCPとは役割が異なるため、それぞれの位置付けを理解し、適切に管理することが重要です。
ISO22000やFSSC22000に取り組む際は、適用される規格の要求事項を確認し、自社の業種や製造工程に合ったPRPを整備しましょう。手順を定めるだけでなく、現場での実施状況を記録・確認し、問題があれば改善を重ねることが、継続的な食品安全の確保につながります。
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チェック表には「済」の印だけでなく、異常があった場合の内容と対応を書き込める欄を設けましょう。管理者が週に1回など頻度を決めて記録を確認し、確認者のサインを残しておくと、現場での実施状況を把握しやすくなります。ISO22000の認証審査でも、PRPが食品安全上のリスクに応じて適切に運用されているかが確認されます。