FSMS(食品安全マネジメントシステム)とは?わかりやすく解説
- FSMSとは、食品の安全を維持するための経営・運営管理システム
- FSMSにはISO22000を始めとする様々な認証規格が存在する
日本では2020年にHACCP義務化が決定し、より高いレベルの「食の安全」が求められるようになってきました。HACCPを始めとする食品の衛生を保つマネジメントシステムのことをFSMS(食品安全マネジメントシステム)と言いますが、「マネジメントシステム」と聞いてもピンと来ない方も多いかもしれません。
そこで、この記事では「FSMSとはどのようなものなのか」という疑問について、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。
目次
FSMSとは
FSMS(Food Safety Management System)を日本語訳すると、食品安全マネジメントシステムとなります。つまり、食品の安全を維持するための「経営・運営管理システム」がFSMSです。
簡単にいえば
「食品に関する事故を発生させないために、食品に潜む食品危害リスクを理解し、それらを低減していくための仕組み=システム」がFSMS です。「仕組み」とは「気をつける」とか「従業員に注意させる」といった個人の配慮や注意に依存したものではなく、ルールや手順に基づき計画を策定し、実行(運用)した後、評価・レビューを行い、改善していくというPDCAサイクルを回す仕組みです。FSMSは、食品安全性を高めることが必要な食品製造業を中心に取り入れられているマネジメントシステムです。
FSMSによる「リスク低減」の仕組み
ここでは、さらに「仕組みによってリスクを低減する」ことについて深掘りします。
例えば、食品に潜む代表的なリスクに「ノロウイルス」による食中毒のリスクを低減する仕組みについて考えてみましょう。
ノロウイルスとは、10〜100個体が体内に入るだけで食中毒を発症するといわれている非常に強力なウイルスです。目視でウイルスの確認はできませんが、「85℃〜90℃で90秒加熱する」ことで、ウイルスを死滅できるといわれています。
そのため、仕組みによってノロウイルスというリスクを無くすためには、「85℃〜90℃で90秒加熱する」ことがしっかり行われているかということを管理することが大切です。
もし加熱が十分でない可能性がある場合は「どうすれば確実に加熱できるのか」を検討し、実行できない原因を取り除くことです。
つまり、「リスクを低減するためのルールやマニュアルを定めて実行し、監視方法や、実行されたかどうかを記録する方法、問題が起きた場合の対処法を定める」ことで仕組みを構築します。
HACCPを始めとするFSMSでは、「重要管理点(CCP)」というものを設けることが多くあります。重要管理点とは、食品中のリスクを防止・除去、リスクを許容できるレベルに低減するために必須な段階のことです。
今回の場合には、「85℃〜90℃で90秒加熱する」ことが重要管理点といえます。
FSMSを認証する制度
FSMSには、マネジメントシステムを認証する制度があります。規格とは、簡単にいえばシステムの設計図のようなもので、「規格ごとに定められている要件を満たす仕組みを構築・運用しなければならない」ということが決められています。
ここでは、FSMSを認証する代表的な規格を紹介します。
ISO22000
ISO22000とは、国際標準化機構(ISO)によるFSMS(食品安全マネジメントシステム)規格です。
HACCPの食品衛生管理手法をもとに食品安全リスクを低減し、安全なフードサプライチェーンの展開を実現する国際規格で、FSMS規格のスタンダードともいえる規格です。
FSSC22000
FSSC22000とはISO22000をベースに構築された「より確実な食品安全管理システム」を実践するためのFSMS(食品安全マネジメントシステム)の国際規格です。
食品工場での予期せぬ食品事故などの防止も含まれているため、取得するにはISO22000の要求事項に前提条件プログラム、追加要求事項といった3つの要求事項を満たす必要があります。
SQF
SQFは食品の安全衛生とともに食品の品質を向上させることを目的とした国際規格です。また、HACCPによる衛生管理手法に基づくFSMSに加えてISO9001に見られるようなQMS(品質マネジメントシステム)に関する規格でもあります。
BRC
BRCとは英国小売協会が発行する食品安全、法令遵守、品質管理の3点に焦点が当てられた規格です。
本規格はイギリスだけでなく世界でも使用されている規格で、主に小売事業者を中心に取得されています。
GLOBALG.A.P
GLOBALG.A.PはGAP(農業生産工程管理)に関する国際的な第三者認証規格で、主に農作物、畜産物、水産養殖を行う事業者を対象とした規格です。
FSMS認証を取得するメリット・デメリット
ここでは、FSMS認証を取得するメリット・デメリットを解説します。
メリット
FSMS認証を取得する主なメリットを以下にまとめました。
- 食品安全に関するリスクの低減
- 従業員の食品安全に対する意識の向上
- 製造工程が可視化されることで、ムダを削減し、業務効率化につながる
- 消費者や取引先からの信頼度の向上
- 海外展開時に取引がスムーズになる可能性がある
デメリット
FSMS認証を取得する主なデメリットを以下にまとめました。
- 認証取得までに手間や労力がかかる
- 認証取得や維持に費用がかかる
FSMS認証を取得することで、消費者や取引先からの信頼の向上につながります。
FSMS認証を取得すべき業種
FSMS認証では、取得対象となっている業種が異なります。
ISO22000であれば、フードチェーンに関わるすべての業種が取得可能です。一方、FSSC22000ではフードチェーン全体における食品安全を担保するために8つのカテゴリを対象としています。
FSMS認証全体でいえば、
FSMS認証を取得すべき業種には「食品製造業」が挙げられます。食品製造業は、食品フードチェーンの中でも食品の安全性や信頼性が問われる業種です。ただし、食品製造業以外にもFSMS認証を取得する企業は多くあります。そのため自社が取得するメリット・デメリットや必要性を検討することがおすすめです。
まとめ
この記事では、FSMSやFSMS認証の種類、取得メリット・デメリットなどについて解説しました。
食品安全性を高めるために、リスクを低減する仕組みを管理することが食品安全マネジメントシステムでは求められます。仕組みを構築・運用することで、これまで以上の安全性や信頼性を獲得できるでしょう。
また、そうした食品安全マネジメントシステムに関する認証もあり、最もスタンダードな規格にはISO22000があります。メリット・デメリットを検討し、必要性が感じられるのであれば取得することがおすすめです。
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