ISO9001の文書管理とは?必要な文書や電子化、保管期間を解説

FAQISO9001の文書管理についてよくある質問
ISO9001とは、組織が提供する製品やサービスの品質マネジメントシステム規格です。
製品やサービスの品質管理のためのルールが定められており、その中には組織が扱う文書に関する管理方法が定められています。
品質管理マネジメントシステムを構築・運用するうえで、適切な文書管理は欠かせません。
ISO9001を取得・継続するためには、要求されている文書管理のルールを明確にし、組織として確実に実現することが求められます。
そこで本記事では、ISO文書の基本的な考え方から、ISO9001で求められる文書管理の要求事項、具体的な管理手順までわかりやすく解説します。さらに、文書の電子化や保管期間、実務で押さえておきたい管理のポイントについても紹介します。
目次
ISO文書管理とは?

ISO文書管理とは、ISOのマネジメントシステムを適切に運用するために必要な文書や記録を、作成から廃棄までのライフサイクルを通じて、適切に管理する活動です。
ただ文書を作成するだけでなく、必要な情報を必要なときに利用でき、最新版や変更内容を適切に管理できる状態を維持することが重要です。
文書管理の基本「ライフサイクル」
ISO文書管理の核となる考え方が「ライフサイクル管理」です。文書は作って終わりではなく、以下の5つの段階を通じて適切に管理される必要があります。
| ステージ | 内容 |
|---|---|
| ①作成 | タイトル・日付・作成者・版数などを明記し、文書としての識別ができる状態で作成する |
| ②承認 | 内容の適切性・妥当性をレビューし、責任者の承認を経てから共有・配布する |
| ③配布 | 必要な人が必要なときにアクセスできる方法で、適切な範囲に配布・共有する |
| ④改訂 | 変更が生じた際は変更履歴を記録し、版数を更新。旧版が誤って使用されない管理が必要 |
| ⑤廃棄 | 保管期間を経過した文書を、定めたルールに従って適切に廃棄する |
このライフサイクル全体を管理する仕組みを構築・運用することが、ISO9001における文書管理の基本です。「文書の保管」だけでなく、「誰が・いつ・どの内容を作成・変更したかが追跡できる状態」を組織全体で維持することが求められます。
ISO9001における「文書化した情報」とは?
ISO9001における「文書化した情報」とは、品質マネジメントシステムの運用に必要な情報を、組織が作成・維持または保持するものを指します。
文書化した情報の形式や媒体が一律に指定されているわけではないため、紙の文書だけでなく、電子ファイルや業務システムなどを利用して管理することも可能です。
そのため、「ISO9001を取得するには大量の紙の書類を作らなければならない」と考える必要はありません。重要なのは、品質マネジメントシステムを効果的に運用するために必要な情報を明確にし、適切に管理できる状態をつくることです。
ISO9001の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO文書の具体例
ISO文書には、組織のルールや業務の進め方を示す文書と、実際に業務を行った結果を証明する記録があります。
代表的なものには、次のような文書・記録があります。
- 品質方針・品質目標
- 業務手順書・作業手順書
- 製品仕様書
- 品質計画書
- 検査・試験の記録
- 校正記録
- 教育・訓練の記録
- 内部監査の記録
- マネジメントレビューの記録
- 不適合や是正処置に関する記録
- 外部から入手した必要な文書
ISO公式の解説でも、手順書、作業・試験指示書、仕様書、品質計画書、品質マニュアル、フォームなどが文書化した情報の例として挙げられています。
【ISO9001】文書管理に関する要求事項

ISO9001では要求事項の以下の部分に、文書管理に関する内容が規定されています。
7.5 文書化した情報- 7.5.1 一般
- 7.5.2 作成及び更新
- 7.5.3 文書化した情報の管理
ここでは、ISO9001の文書管理に関連する要求事項の各項目について解説します。
文書化した情報の種類
ISO9001の要求事項「7.5.1一般」において、文書化の対象となる情報について定義しています。
7.5.1一般
組織の品質マネジメントシステムは、次の事項を含まなければならない。a)この規格が要求する文書化した情報
b)品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報※ISO90017.5.1一般より抜粋
上記のa)b)の2点について、以下に解説します。
a)ISO9001が要求する文書化した情報
品質マネジメントシステムの土台となる文書で、業種を問わずに作成することが必須の情報です。
例えば、品質方針・品質目標、業務に関わる人の力量 の証拠、設計開発のインプット・アウトプット・変更などの文書が挙げられます。
b)ISO9001の有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報
組織は業務の実情にあわせて、文書の要否を判断することが認められている情報です。
「文書化は不要」という判断を部分的に組織に委ねている理由は、手順書を作成することが有効な職種もあれば、品質向上につながらない職種もあるためです。
例えば、仕様書や生産計画書、指示書などが挙げられます。
求められる文書の作成・更新

ISO9001の要求事項「7.5.2:作成および更新」において、適切な文書作成・更新につながるように取り組むべき要件を示しています。
7.5.2作成及び更新
文書化した情報を作成及び更新する際、組織は、次の事項を確実にしなければならない。a)適切な識別及び記述(例えば、タイトル、日付、作成者、参照番号)
b)適切な形式(例えば、言語、ソフトウェアの版、図表)及び媒体(例えば、紙、電子媒体)
c)適切性及び妥当性に関する、適切なレビュー及び承認(内容の評価、承認)※ISO9001 7.5.2作成及び更新より抜粋
以下に、取り組むべき内容についてまとめました。
| 適切な識別及び記述 | 文書にタイトルや日付、作成者、参照番号などを記載し、その文書を識別できるようにする。 |
|---|---|
| 適切な形式・媒体 | 現場の状況に適した形式・媒体で文書を作成する。例えば、紙・電子データの選択や言語や図表など。 |
| 適切性及び妥当性を評価・承認する | 文書の内容が適切かどうかを評価し、適切かつ妥当であった場合、承認を経て共有、配布、公開する。 |
求められる文書の管理方法
ISO9001の要求事項「7.5.3文書化した情報の管理」において、文書化した情報を適切に利用でき、かつ十分なセキュリティ管理で保護することを求めています。
7.5.3文書化した情報の管理
7.5.3.1
品質マネジメントシステム及びこの規格で要求されている文書化した情報は,次の事項を確実にするために,管理しなければならない。a)文書化した情報が,必要なときに,必要なところで,入手可能かつ利用に適した状態である。
b)文書化した情報が十分に保護されている(例えば,機密性の喪失,不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)。7.5.3.2
文書化した情報の管理に当たって、組織は、該当する場合には、必ず、次の行動に取り組まなければならない。a)配付、アクセス、検索及び利用
b)読みやすさが保たれることを含む、保管及び保存
c)変更の管理(例えば、版の管理)
d)保持及び廃棄※ISO9001 7.5.3文書化した情報の管理より抜粋
要求事項の内容を、7.5.3.1「文書管理にあたり、求められる状態」と7.5.3.2「文書管理に求められる対応」に分けて解説します。
7.5.3.1「文書管理にあたり、求められる状態」
- 必要なタイミング・場所で、利用に適した状態で管理すること
- 漏えいや紛失のリスクから守られた安全な状態
上記を満たすため管理方法として、紙・電子データにおける文書管理の例をまとめました。
| 媒体 | a)必要なタイミング・場所で利用するための文書管理例 | b)適切なセキュリティ管理で保護するための文書管理例 |
|---|---|---|
| 紙 | 適切な配布方法やファイルなどの保管場所を定める。 | 鍵のかかるキャビネットやそれに準ずる環境で保管する。 |
| 電子データ | 適切な保管環境の用意と、必要なときにアクセスできる経路を構築する。 | セキュリティ対策ソフトなどを利用し、適切なアクセス権限を設定する。 |
7.5.3.2「文書管理に求められる対応」
文書管理するうえで取り組むべき内容を、以下にまとめました。
| 文書管理に求められる対応 | |
|---|---|
| a)配付、アクセス、検索及び利用 | 必要に応じて、文書の配布やアクセス権の設定・付与、検索・利用を行えるようにする。そのために、以下について整備する。
|
| b)読みやすさが保たれることを含む、保管及び保存 | 破損、紛失などが発生しない状態での保管・保存を行う。そのためのルールを定めて実行する。 |
| c)変更の管理(例えば、版の管理) | 文書を更新した際に、変更箇所の履歴を記録し、版数を記載する。 |
| d)保持及び廃棄 |
|
文書の保管期間

要求事項として、特定の期間は定められていません。
しかし、組織には、保管する期間とそのために用いる媒体を決定する責任があります。顧客や法的な要求、製品及びサービスの寿命に応じた保管期間を決定し、定められた期間文書を保持した後に、廃棄を行います。
また、以下のような保存期間が定められている法定保存文書については遵守しましょう。
| 法定保存文書 | 保管期間 |
|---|---|
| 仕訳帳など取引に関する帳簿 | 7年 |
| 従業員の身元保証書や誓約書など | 5年 |
| 健康診断個人票 | 5年 |
| 監査報告・会計監査報告 | 5年 |
| 労働者名簿や雇用・退職に関する書類 | 3年 |
| 災害補償に関する書類 | 3年 |
| 社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する書類 | 2年 |
ISO9001要求事項を満たす文書管理の手順

ISO文書は「作成→レビュー・承認→配布・共有→改訂・最新版管理→保管・廃棄」という流れで管理します。自社の業務に合わせて管理方法を定め、実際の運用と文書の内容が一致する状態を継続することが、適切な文書管理につながります。
ここでは、それぞれの手順を詳しく解説します。
1.必要な文書を作成する
まず、品質マネジメントシステムの運用に必要な文書を洗い出し、業務内容に合わせて作成します。
すべての業務を細かく文書化するのではなく、ISO9001の要求事項や自社の業務内容を踏まえ、品質マネジメントシステムを適切に運用するために必要な情報を明確にすることが重要です。
文書を作成する際は、文書名や文書番号、作成日、版数などを設定しておくと、その後の改訂や最新版管理を行いやすくなります。
2.レビュー・承認を行う
文書を作成したら、「内容が適切か」「実際の業務で運用できるか」を確認したうえで、必要な承認を行います。
例えば、現場の実態と手順書の内容が異なっていないか、関連する規程や他の文書との矛盾がないかなどを確認します。
レビュー・承認の責任者や方法は、あらかじめ社内でルールを定めておくと、文書ごとに判断がばらつくことを防げます。
3.関係者へ配布・共有する
承認した文書は、その業務に必要な従業員が、必要なときに利用できる状態にしておきます。
紙であれば所定の場所に配布し、電子データであれば共有フォルダや文書管理システムなどを利用してアクセスできるようにします。
また、旧版の文書が現場に残っていると、誤って古い手順を使用する可能性があります。そのため、最新版がどこにあるのかを明確にし、不要になった旧版を適切に管理することも重要です。
4.改訂・最新版管理を行う
業務内容や法令、顧客要求などに変更が生じた場合は、必要に応じて文書を改訂し、常に適切な最新版を利用できる状態にします。
改訂した場合は、版数や改訂日、変更内容などを記録しておくと、いつ、どのような変更が行われたのかを確認できます。
改訂後は関係者に変更内容を周知し、旧版が誤って使用されないように管理しましょう。
5.保管・廃棄する
最後に、文書や記録を定めたルールに従って適切に保管し、保管する必要がなくなったものは適切な方法で廃棄します。
保管する文書については、保管場所やアクセス権限、バックアップの方法などをあらかじめ決めておくと管理しやすくなります。
また、保管期間を過ぎた文書や不要になった旧版をそのまま残しておくと、誤使用や情報漏えいにつながる可能性があります。必要な期間を確認したうえで、紙・電子データそれぞれに適した方法で廃棄することが重要です。
ISO文書を適切に管理するポイント

ISO文書を適切に管理するには、最新版を確実に利用できる状態にするとともに、アクセス権限を適切に設定し、電子化・一元管理によって必要な文書を効率よく扱える環境を整えることが重要です。
ここでは、ISO文書を適切に管理するポイントを3つの観点から紹介します。
最新版を管理する
ISO文書は、現場で常に適切な最新版を利用できるように管理することが重要です。旧版が残ったままだと、誤った手順や古い情報に基づいて業務を行う可能性があります。
そのため、文書を改訂した際は、版数や改訂日、変更内容などを記録し、最新版がどの文書なのかを明確にしておきます。また、旧版を使用場所から回収・削除するなど、誤使用を防ぐ仕組みも必要です。
アクセス権限を設定する
ISO文書は、業務上必要な人が必要な情報を利用できる一方で、変更や削除を行える人は適切に制限することが重要です。
特に電子データの場合は、閲覧・編集・承認などの権限を役割に応じて設定します。誰でも自由に文書を変更できる状態では、意図しない改訂や削除につながるためです。
また、機密性の高い情報を含む文書については、アクセスできる担当者を限定するなど、文書の内容に応じて管理方法を分けることも大切です。ISOの文書管理に関するガイダンスでも、文書化した情報へのアクセスや利用権限を定め、システム上で管理する考え方が示されています。
ISO文書を電子化・一元管理する

ISO文書は、電子化して一元管理することで、最新版の共有や検索、アクセス権限の設定などを効率化できます。ISO9001では、文書化した情報の形式や媒体が一律に指定されているわけではなく、電子媒体を利用した管理も可能です。
たとえば、文書管理システムやクラウド上の共有環境に文書を集約すれば、部署ごとに異なるファイルを保管する状態を避けやすくなります。さらに、アクセス権限や変更履歴を設定できるシステムを利用すれば、最新版管理や文書の変更状況も把握しやすくなります。
ただし、電子化すること自体が目的ではなく、自社の業務に必要な文書を、必要な人が適切に利用・管理できる仕組みを構築することが重要です。
ISO規格に則った文書管理を行うメリット

ISO9001規格に則った文書管理を実施することで、企業には以下のようなメリットがあります。
- ナレッジの共有・蓄積が進む
- 個人に依存しがちな業務ノウハウを文書として残すことで、属人化を防げます。人材の入れ替わりがあっても知識が引き継がれやすく、新入社員の教育にも活用できます。
- リスクマネジメントを強化できる
- 文書の作成者や改訂履歴が明確になるため、誤った情報の使用や改ざんリスクを低減できます。トラブル発生時も、原因の把握や再発防止につなげやすくなります。
- 業務効率が向上する
- 必要な文書を必要なときにすぐ確認できるようになり、探す手間や管理工数が削減されます。その結果、日常業務の効率化につながります。
このように、ISO9001に則った文書管理は、情報の信頼性を高めながら、業務の効率化とリスク低減を同時に実現できる仕組みといえます。
まとめ
ISO9001取得においては、お客様が求める製品・サービスを提供して顧客満足度の向上につなげる仕組みづくりを構築・運用します。
そのためには、自社の事業活動に適した文書管理を行うことが重要です。文書化した情報を保護しつつ、社員が適切に使用できる形式や記述などで作成・更新しましょう。
より自社に適した文書管理を目指したい場合、プロのコンサルティング業者にサポートを依頼することがおすすめです。
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月間10万PV越えの業界最大級ISO取得・運用情報サイト「ISOプロ」の編集部。ISO取得や運用に関する悩みや基礎知識を初心者の方にも分かりやすくお届けします。サイトユーザー様がISOに関わる業務を円滑に進められるよう、有益で信頼できる情報発信に努めて参ります。
「審査のために文書を増やす」のではなく、自社・自組織の業務に必要な範囲を見極め、現場で継続して運用できる文書体系にすることが重要です。