• ISOとは国際的に通用する規格を制定している機関
  • ISOの取得は信頼性の向上や組織のシステム構築・改善などのメリットがある
  • 規格を理解したマネジメントシステムを構築したうえでISO審査機関による二段階の審査を経て取得する

ISO 規格を取得すると決めたときに、真っ先に気になるポイントはISO規格の認証取得の「費用」ではないでしょうか。ISO規格を認証取得するには、会社のマネジメントシステムを構築したうえで、審査登録機関(認証機関)による審査を受ける必要があります。

そのため、ISO取得費用は大きく2種類に分けられます。「マネジメントシステムを構築する費用」と「ISO審査機関に支払うISO審査費用」です。

この記事では、ISO取得にかかる審査費用の業種別・規格別・規模別の相場やランニングコスト、ISO認証取得におけるトータルコストについて解説します。

ISO取得にかかる費用とは

そもそもISOマネジメントシステム認証とは、品質管理や環境管理、情報セキュリティなどのマネジメントシステムが国際基準に則って運用で来ていることを第三者機関により証明する制度です。
企業の信頼性向上や入札要件対応などのメリットがある一方で、認証取得には一定の費用が発生します。

ここでは、ISO取得にかかる費用の全体像と、その内訳についてわかりやすく解説します。

ISO取得費用が企業によって異なる理由

ISO取得にかかる費用は、企業ごとに大きく異なります。主な要因としては、以下のような点が挙げられます。

まず、審査を行う「審査機関」によって料金体系が異なることが挙げられます。同じISO規格でも、審査日数の設定や出張費、書類作成サポートの有無などが異なるため、費用差が生まれます。

また、「企業規模」「事業内容」も取得費用を左右する要素です。
例えば、従業員数が多い、拠点数が多い、製造業などで工程が複雑といった場合には、審査日数が増え、それに伴って費用も高くなります。

ISO取得にかかる費用内訳

ISO取得にかかる費用の内訳を以下にまとめました。

審査費用・ISO登録料

審査費用は、審査機関による登録審査にかかる費用です。一般的に、登録審査の相場は約50万~120万円が相場です。
一方、ISO登録料は、認証後、登録にかかる費用で、約3万~5万円が相場です。

また実地審査では、ISOを取得する現場(本社や支社)で行われるため、審査機関から現場までの交通費、日帰りが難しい場合には宿泊費も別途かかります。

コンサルティング費用

自社でのISO構築が難しい場合、外部コンサルタントに取得サポートを依頼した場合に発生する費用です。
コンサルティング会社によってサービス内容や契約形態などの違いがありますが、約50万~200万円が相場です。

人件費

ISO規格に基づいた体制を構築・運用するために、社内でISO担当者やISO事務局を選任する必要があります。本来の業務に充てるべき人手や時間をISO業務に割くことで、人件費が発生するのです。

直接発生する支出ではありませんが、「ISO取得にかかった期間×ISO担当者の人数×ISO担当者の給与」がISO取得にかかる人件費となります。

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【規格別】ISO取得費用の相場

ここでは、規格別にISO取得費用の相場を解説します。

ISO9001(品質マネジメント)の費用相場

ISO9001の取得費用は、中小企業(従業員数10〜50名程度)の場合、審査費用・ISO登録料、コンサルティング料金を含めて約85万〜200万円が相場です。

【ISO9001】審査費用相場

業種1-20名21-50名51-100名101名以上
製造業・加工業36万円46万円66万円96万円
建築・建設業35万円52万円74万円100万円
ITサービス32万円49万円72万円82万円
システム開発32万円48万円73万円88万円
WEB制作32万円76万円79万円104万円
卸売業・小売業36万円44万円68万円97万円
コンサル業35万円57万円79万円94万円
保険業41万円47万円70万円
不動産43万円48万円70万円

※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。

関連記事:ISO9001の取得費用は?維持コストや費用を抑えるポイントも解説

ISO14001(環境マネジメント)の費用相場

ISO14001は、ISO9001よりやや高額になる傾向があり、中小企業での取得費用相場は約90万〜210万円です。
具体的には、審査費用・ISO登録料が約40万~60万円、コンサルティング料金が約50万~150万円として計算しています。
ただし、従業員数が多い場合や多拠点運営をしている企業では、300万円を超えることも考えられます。

なお、企業規模・業種別の具体的な審査費用相場は、以下をご覧ください。

業種1-20名21-50名51-100名101名以上
製造業・加工業40万円61万円64万円72万円
建築・建設業41万円64万円59万円
ITサービス36万円64万円88万円
卸売業・小売業42万円60万円66万円118万円
コンサル業41万円70万円108万円
保険業42万円43万円

※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。

ISO27001(情報セキュリティ)の費用相場

ISO27001は、さらに審査費用が高額に設定されていることが多く、中小企業での取得費用相場は、約100万〜225万円です。
具体的には、審査費用・ISO登録料が約50万~75万円、コンサルティング料金が約50万~150万円として計算しています。
ただし、従業員数が多い場合や多拠点運営をしている企業では、300万円を超えることも考えられます。

なお、企業規模・業種別の具体的な審査費用相場は、以下をご覧ください。

業種1-20名21-50名51-100名101名以上
製造業・加工業51万円73万円103万円123万円
建築・建設業51万円71万円97万円129万円
ITサービス54万円76万円98万円120万円
システム開発53万円74万円97万円120万円
WEB制作55万円81万円97万円
卸売業・小売業52万円77万円104万円114万円
コンサル業51万円82万円95万円103万円
保険業58万円100万円113万円
不動産62万円97万円113万円

※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。

関連記事:【保存版】ISMS認証(ISO27001)の取得費用は?内訳や相場を解説

自社取得とコンサル依頼の費用比較

ISO取得費用は「自社取得」と「コンサル依頼」のどちらがお得?

ここでは、自社取得とコンサルに取得サポートを依頼して取得した場合のメリット・デメリット、費用の比較について解説します。

自社取得・コンサル依頼のメリット・デメリット

自社でISO認証を取得する場合とコンサルに取得サポートを依頼する場合のメリット・デメリットを以下にまとめました。

取得方法メリットデメリット
自社取得
  • コンサル料を削減できる
  • ISOに関する知識を深められる
  • 社員の負担が大きくなる
  • 審査に通過できないケースもある
  • ムダなルール・マニュアル、文書が増え、運用しにくいマネジメントシステムを構築してしまう可能性が高い
コンサル依頼
  • 社員の工数を大幅に削減できる
  • 審査の確実な通過が見込める
  • ISO規格の取得までの期間を短縮できる場合が多い
  • 自社に適したマネジメントシステムを構築できる場合が多い
  • コンサル料がかかる
  • 自社に合わないコンサルを選ぶと、期待したサポートが受けられない可能性がある

ISO規格を自社取得した企業の経営者・経営幹部約200人に行ったアンケート調査結果では、「取得に至るまでや、実際に運用していて課題と感じることは何ですか?(複数回答可)」と質問したところ、「思っていた以上に時間がかかった(31.7%)」「ISOのためだけの業務・ルールが増えた(23.9%)」「継続的な審査対策が大変(22.9%)』と、デメリットを感じた方が多くいました。

こうした結果から、自社取得は「社内にISO規格に精通した人材がおり、取得にかかる費用を節約したい」という場合に適していますが、それ以外の場合にはコンサルに依頼することがおすすめです。

関連記事:【ISO認証取得企業の実態調査】自力でISO取得した企業の4割以上が”コンサルタントへの依頼を考えている”と回答。自社完結の課題とは?(外部リンク)

自社取得・コンサル依頼のコスト比較

自社取得とコンサルにサポートを依頼して取得した場合では、かかる費用のうち「人件費」と「コンサル依頼料」に違いが出ます。

そこで、ここでは「人件費」と「コンサル依頼料」の観点から自社取得とコンサルに取得サポートを依頼した場合に、どちらがお得かについて解説します。

自社取得でかかる費用

自社取得する場合には、「コンサル依頼料」はないため、「人件費」のみについて考えます。
およその人件費は、「ISO担当者の人数×ISO担当者の給与×取得までにかかる期間」で計算します。
自社取得の場合、1年以上の期間がかかることが一般的です。この条件で、自社でISO担当者に任命する人数や給与を当てはめて計算してみましょう。

月収40万円の1人のISO担当者が、月に80%の工数でISO業務を行った場合の費用例は下記です。

人件費「1人×(月40万円×80%)×12か月」=384万円
コンサル依頼料0円
合計384万円

ISOコンサル依頼でかかる費用

ISOのコンサル会社やコンサルタントに依頼する場合、「コンサル依頼料」と「人件費」がかかります。

コンサル依頼料の費用相場は、約50万~200万円/年間です。
コンサルに依頼した場合、約6か月で取得できることが一般的です。また自社社員のISO業務にかかる工数を80%程度削減できます。この条件を、先ほどの自社取得の例に当てはめて費用を考えてみましょう。

ISOコンサルが80%の工数を請け負い、月収40万円の1人のISO担当者が月に20%の工数でISO業務を行った場合の費用例は下記です。

人件費「1人×(月40万円×20%)×6か月」=48万円
コンサル依頼料50~200万円
合計98万~248万円

このように、ほとんどの場合ではコンサルに依頼した方がお得にISO認証を取得できます。
以下の記事で、自社取得とコンサルに依頼した場合の比較をしています。ぜひ参考にしてください。

関連記事:ISO取得の流れを「自社取得」と「コンサル取得」を徹底比較
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ISO認証取得後にかかるランニングコストとは

ISO認証は取得したら終わりではありません。取得したISOのマネジメントシステムを持続的に動かしていくために「運用」していく必要があるのです。ここでは、運用にかかる費用についてご紹介します。

ISO認証取得後の審査費用

ISOの取得等にかかる費用

ISO認証には3年間の有効期限があり、取得してから1年目と2年目に持続的に運用しているかをチェックする「定期審査(維持審査)」と3年目に「更新審査」が行われます。

定期審査の費用の目安は、取得審査の1/3ほどの金額です。
更新審査はISO認証の更新に必要な審査費用です。費用の目安としては取得審査の2/3ほどの金額になります。

ただし、各種審査費用は組織の規模、業種によって金額は大幅に変わるため、複数の審査機関から見積もりを取得してください。

ISOは基本的にこの3年間を1サイクルとし、この1サイクルを繰り返しながらISOを持続させていくため、毎年、審査費用がかかってきます。その他にも、自社で行う内部監査、検査機のメンテナンスに監査時に修正すべき是正処置予防処置などの対応も必要になってきます。

ISO認証取得後のISOコンサルにかかる費用

認証取得コンサルタントのサポートが完了しても、引き続き継続して運用に関する支援をしてもらうことが可能です。

運用改善を支援してもらうことで、自社のマネジメントシステムをより効果的な仕組みに発展させられるでしょう。また、定期審査や更新審査のサポートだけでなく、文書のスリム化や経営コンサルティングなどのオプションが可能な場合もあります。

費用は企業規模やサポート内容にもよりますが、月額で約5万円を目安にすると良いでしょう。

ISO取得費用を抑えるために考慮すべきポイント

ここでは、ISO取得費用を抑えるために考慮すべきポイントについて解説します。

自社に適した審査機関やコンサルを選ぶ

ISO認証取得にかかる費用の中でも大きな割合を占めるのが、審査機関に支払う「審査費用」と「コンサル依頼料」です。

審査機関は国内に約50社存在しており、それぞれ料金体系や審査方法、業種ごとの実績が異なります。価格だけで選定するのではなく、自社の業種や規模に適した審査機関を選ぶことが重要です。

また、基本的にコンサルタントへのサポート依頼はおすすめですが、サポート内容や料金プランはコンサルティング会社によって大きく異なります。そのため、契約前に見積もりの明細やサポート範囲を確認することが大切です。必要なサービスを選択することで、費用対効果の高い依頼が可能となります。

自社に適したコンサルの選び方は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISOコンサルタントの選び方と押さえるべき3つのポイント

複数規格を取得する場合には、統合する

ISO9001(品質マネジメントシステム)、ISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)など、複数のISO規格を同時または段階的に取得したいと考えている企業は少なくありません。
その場合、それぞれ別々に対応するよりも、統合マネジメントシステムとして規定や手順などを統一化することで、運用にかかる手間や労力、審査費用を削減することが可能です。

また統合マネジメントシステムを構築することで、審査についても同様に統合審査を受けられるため、審査日数・工数・コストを削減できます。

今後、複数規格の取得を予定している場合には、統合の可能性も視野に入れて計画を立てると良いでしょう。

関連記事:【基本】統合マネジメントシステムとは?メリットや進め方を解説

費用だけでなく「パフォーマンス」を指標とする

費用を抑えること自体は重要ですが、それが目的化してしまうと、本来の認証取得の意義を満たせない可能性があります。

例えば、必要最低限のマニュアル整備で取得した場合、実務において無意味なものになってしまい、かえって運用効率が悪化するといったケースがあります。

そのため、取得後の「運用負荷の軽減」「内部統制の強化」「取引先評価の向上」といったパフォーマンスを、費用と併せて総合的に判断することが大切です。
初期投資を惜しんだ結果、「マネジメントシステムの効果が得られない」「運用に負担がかかりすぎる」といった事態を避けるためにも、費用対効果の観点を持った判断が求められます。

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ISO費用の税務上の扱いと経費処理方法

ISO取得や審査における費用は、どのような処理が必要なのでしょうか。最後に、税務上の扱いや経費処理方法について解説します。

ISOにかかる費用の税務上の扱い

ISOにかかる費用の税務上の扱い

ISO認証取得や取得後にかかる審査費用における税務上の扱いは、支出時の損金として処理するとされています。

国税庁では、ISO9001取得にあたり、以下のように見解がなされています。

  • 法的な権利はないため、工業所有権に該当しない
  • 譲渡負荷であることや、超過収益力を生じるものではないことから、営業権に該当しない
  • 不特定多数に対して広告宣伝効果があるため、損金性が認められる
  • 損金算入時期は、その支出の日が属する事業年度とすることが相応とされている

ISO費用の勘定科目

ISOにかかる費用の勘定科目について紹介します。ISO費用における勘定科目は定められていないため、「ISO費用」「ISO関連費用」など、わかるように処理している企業もあります。

登録審査前のコンサルティング費用研修費、支払手数料、支払報酬、雑費など
審査登録費用支払手数料、会費、雑費など
登録後の維持更新費用支払手数料、会費、雑費など

まとめ

ISO認証取得を費用コストで考えたとき、「コンサルタントを利用しての取得」よりも「自社取得」の方が安いと考えてしまいがちです。ISOに詳しい人間が自社取得を担当すれば問題はないですが、ISOに詳しくない人間が自社取得をした場合、勉強しながらISO業務を行うので、取得スケジュールが長くなってしまったり、素人がマネジメントシステムを構築すると無駄な工程が多くなってしまったりと逆にコストが高くなってしまう場合があります。

特に人件費は長期的になればなるほど膨大な金額になってしまうので、最も注意しておきたい存在ではないでしょうか。

ISOを取得するためにどれくらいの金額をかけるのか、どれくらいの価値があるのかについては、皆さんの社内を見渡してみて試算しましょう。

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