今回のテーマは「ISO 内部監査員による有効性の確認」ということで、内部監査におけるマネジメントシステムの有効性の確認ポイントについて説明します。

内部監査の成果を発揮する企業では、ISO規格に準拠したマネジメントシステム(仕組み)が有効に機能しています。内部監査員は、ISO要求事項に適合する品質マニュアル(あるいはそれに代わるもの)や社内規定・手順書等が被監査部門で確実に遵守されているか、実際に現場業務で要員の業務理解度や製品・監査対象物の運用管理状況を確認しながら評価する必要があります。

【内部監査による有効性の確認ポイント】

組織全体

1) 業務の流れを把握

実際の業務では、文書化の不備、顧客仕様や手順の変更等により、運用ルールとして文書化されていない手順が必ずあります。まずは、監査資料より業務全体や各プロセスの業務内容について知識を持ち、プロセスフロー図を用いて各プロセスの全体像の流れを把握します。各プロセスの相互関係はタートル図を用いて理解します。

2) 作業現場で運用状況や活動の観察

内部監査員は作業現場に赴き、文書化された社内ルール(標準作業)に従って作業が確実に実施されているか、運用状況・作業状況など観察します。場合によっては作業要員に直接質問して作業の理解度・習熟度や文書の設置場所、工程印の管理方法、イレギュラーなケースの対応など諸々確認することも必要です。ただし、監査では被監査部門で事前に監査員に対する受け答え内容を決めているケースもありますので、意表を突くなどひと工夫して確認されると良いでしょう。

製造プロセス

製造プロセスは特に直接製品品質に影響があるため、品質マネジメントシステムが有効に機能しているか入念に検証します。製造の作業工程や工程管理基準、設備機械・工具類などの定期的点検・修理などメンテナンス状況や、設備機械の稼働データ・作業記録など記録データが社内規定どおりに保持(保管・管理)されているか確認します。

検査プロセス

1) 完成品検査

完成品の検査プロセスは不適合品を社外に流出させないことが最大の目的ですが、完成品の適合性評価で不適合品が発見された場合は、その検査結果を全ての関係部署にフィードバックします。前工程だけでなく、関係部署全体で不適合情報をシェアし、現場作業改善に活かすことが重要です。

2) 不適合品管理

内部監査員は、顧客要求および不適合管理規定(仮名)に基づいて不適合品管理が適切に行われているか確認します。

≪確認事項≫

  • ・検査方法や判定基準(規格値)が明確であり、不適合品判定が適切に行える状況にあるか。
  • ・不適合が発生した場合、根底原因を調査し、是正処置(暫定・恒久対策)・効果を確認し、適切な不適合再発防止/類似不適合予防対策を講じているか。
  • ・過去に発生した不適合の是正処置が継続しているか、風化していないか。
  • ・不適合が発生した場合は直ちに作業を停止し、管理責任者や顧客に速やかに報告しているか。(不適合発生時のワークフローの確認)
  • ・不適合品は適合品と混在しないよう”不適合品”の識別が表示され、適合品と分離されて保管されているか。
  • ・保管場所からの不適合品出し入れで、日時・利用者・理由・管理者の承認など記録をつけているか。
  • ・不適合処置報告では記録が文書化され、適切な承認行為が行われているか。
    例えば、承認印を部下に預けてあり承認印は形だけ、トップマネジメントや不適合管理部門長は報告内容を殆ど理解しておらず、的確な指示を出さずに不適合処理を済ませているなど。
  • ・損失費用を計上している場合、適切に費用が算出され、トップマネジメントの承認を得ているか。

3) 検査測定器の管理

検査結果は妥当で信頼できることが重要であるため、検査で使用する測定器はその精度が要求されます。測定器は計測器管理規定(仮名)に基づいて、日常の点検とは別に適切な校正が定期的に実施されているか、校正結果の記録が保持(保管・管理)されているか確認します。

【参考コンテンツ】 内部監査における設備機器・工具管理(構成機器)のポイント

4) 受入検査

検査には、出荷検査(完成品検査)の他に受入検査や中間検査、工程内検査などもあります。検査の種類や呼び方・検査内容などは、企業によって異なりますので社内規定で確認します。

受入検査では、不具合品の受領を防止するため、製品の品質に影響を与える主材料・副資材、部品など購入品についての受入検査を実施して購入品の妥当性を確認します。
また、購入品受入検査規定(仮名)どおりに検査手順が遵守され、検査記録が保管管理されているか確認します。

5) 検査員の力量管理

製品品質に対する顧客要求事項や製品要求事項に適合するためには、教育訓練計画に基づいた検査員の力量管理がとても重要になります。製品によって顧客認定検査員の資格が必要になる場合もありますので、まずは顧客要求事項の確認が必要です。また、検査員の力量評価において適切な評価基準が策定されているか、評価が上司の感情的・感覚的な判断によるものでないことなど確認する必要があります。特に中小企業では、品管理責任者(部課長)が製造部門長を兼任しているケースもあります。検査と製造が作業エリア、管理責任者が分離されていることも確認しましょう。

購買プロセス

購買プロセスでは、購入品の入手方法によって管理方法が異なる場合があります。
購買管理規定(仮名)を確認し、購入品の価格や納期・入手リスク等どのように管理しているか確認します。
なお下請負先に外注して製品製造している場合は、下請負先の選定方法や発注方法等についても品質マニュアル(品質マニュアルが存在しない場合はそれに代わるもの)と合わせて確認が必要です。

その他のプロセス

企業には複数の業務プロセスが存在します。品質マニュアルには必ずプロセス体系図が掲載されていますので、各業務プロセスについて品質マニュアルに紐づいた社内規定等確認し、各規定の要求事項通りに運用されているか、その有効性について確認します。

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