【チェックリスト】ISO22000・FSSC22000の内部監査を解説
- 内部監査は有効性・適合性を確認するために行う
- 内部監査を適切に行えば、是正個所の発見やマネジメントシステムの改善につながる
食品安全マネジメントシステムの認証 規格 であるISO 22000を取得するためには、内部監査を実施する必要があります。この内部監査では、組織の内部の人間やコンサルタントによって組織が構築した食品安全マネジメントシステムの有効性と規格適合性をチェックします。しかし、初めて内部監査を行う組織にとっては、「何をチェックすれば良いのか」わからないでしょう。
ということで、今回は、ISO22000における内部監査ではどのようなポイントをチェックすれば良いのかを解説していきたいと思います。
目次
ISO22000・FSSC22000内部監査とは
内部監査(第一者審査)とは、「社内の担当者や依頼したコンサルタントなどが行う監査」のことです。組織が構築したマネジメントシステムの有効性や適合性を確認するために行います。
有効性 | 継続的な改善を行えて、方針・目標が達成できる状態にあるかどうか |
---|---|
適合性 | ISO22000の要求事項に適合しているかどうか |
内部監査は認証取得の本審査の前に必ず実施しますが、その後にも定期的に実施し、常にマネジメントシステムが適合性と有効性を満たしている状態にあるかをチェックすることが必要です。
内部監査が重要な理由
内部監査は、ISO22000・FSSC22000の要求事項「9.2内部監査」で要求されているため、必ず実施することが必要です。
なぜ内部監査が重要なのかというと、マネジメントシステムのPDCAサイクルのCheck(評価・確認)にあたる部分であるためです。ISO22000・FSSC22000ではマネジメントシステムの継続的改善を目指しているため、運用しているマネジメントシステムを定期的にチェックすることは欠かせません。
特に有効性については、取得審査などの外部審査では確認されない部分です。構築した食品安全マネジメントシステム(FSMS)が有効に機能しているかどうかは、内部監査で確認することが求められます。
例えば、長く運用を続ける中で、徐々に定められたルールを守らなくなる従業員が出てくるかもしれません。しっかりと管理し続けることで、従業員の食品安全に関する意識を維持・向上できるでしょう。
ISO22000・FSSC22000内部監査を実施するメリット
内部監査を行うと、どのようなメリットが得られるのでしょうか。メリットを理解して、自社の食品安全マネジメントシステムをより改善していく足がかりにしましょう。
内部監査を実施する主なメリットを以下にまとめました。
第三者的な目線で、問題点のチェックが可能
外部監査に依頼するわけではないため、費用や対応する社員の負担も低減できます。そのうえで、第三者的な目線で問題を確認できるのも、内部監査ならではのメリットです。
自社のため、適合性を確認しやすい
内部監査は自社の社員が行うため、事業活動や体制に理解がある状態で実施可能です。そのため、適合性や有効性の確認がしやすいといえるでしょう。
是正箇所を発見した際に対処しやすい
自社の社員が行うため、事業活動に深い理解があります。そのため、不適合箇所や改善点が発見された際にも、すぐに対処が可能です。
内部監査は、マネジメントシステムの粗を探すために行うわけではありません。自社のマネジメントシステムをより良いものに改善していくために行う評価制度であると押さえておきましょう。
ISO22000・FSSC22000内部監査のチェックリスト
それでは、具体的にどのような点を確認すれば良いのでしょうか。ここでは、ISO22000・FSSC22000内部監査でチェックしたいポイントを解説します。
適合性を確認するチェックリスト
適合性とは、「規格の要求事項を満たしているかどうか」を確認することです。
ISO22000・FSSC22000は食品安全マネジメントシステムを構築するためのガイドラインのような役割をもちます。そのため、ISO22000・FSSC22000の要求事項を満たしているかどうかは、食品安全を強化できるマネジメントシステムになっているかどうかを知るうえで重要なポイントです。
要求事項を満たしているかどうかを確認するには、以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 法的要求事項を満たしているか
- 国外と取引を行っている場合は、その国の法令を順守しているか
- 食品安全方針とマネジメントシステムの目標を定め、適切にレビューを行っているか
- リスク及び機会を特定したうえで、取り組みの計画を決定しているか
- 食品の安全を脅かすリスクを漏れなく洗い出しているか
- 食品安全方針やマネジメントシステムの目標を組織の構成員に伝達したうえで、目標達成計画を実施しているか
- 前提条件プログラムは実施しており、HACCPシステムの監視記録はできているか
- 法的要求事項を満たしているか
有効性を確認するチェックリスト
有効性とは、「マネジメントシステムが目標を達成する状態にあるかどうか」を確認することです。つまり、マネジメントシステムが意図した結果を達成できる状態で運用できているかをチェックします。
例えば「お客様が安心して口に入れられる食品を提供する」などだけでなく、マネジメントシステムの目標を達成して組織の目的を成就させることです。この意図した結果を達成するためには、規格の要求事項を満たすだけでは足りません。事業と統合したマネジメントシステムの運用に真摯に取り組む必要があります。
マネジメントシステムの有効性を確かめるためには、以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 仕事のプロセスは見える化されているか
- 食品安全計画は円滑に実行されているか
- 組織の構成員に対して適切な教育は行われているか
- マネジメントシステムの目標は食品安全方針と整合性が取れているか
- マネジメントシステムの目標は測定(判定)可能で、進捗状況は正しく評価を行えるか
- マネジメントレビューを実施しているか
- データ収集の方法は適切か
- 何らかの測定機器によってCCP監視のデータを収集している場合、測定機器の検証はできているか
ISO22000・FSSC22000内部監査でよくある質問例
内部監査を行う際には、5W1Hを意識して、ポイントに沿って質問することが大切です。いくつかの例をご紹介します。
適合性を確認する質問例
「食品安全リスクを洗い出し、それへの対応の方法を決定しているか」についての質問例
Q | 「(食品の製造過程におけるリスクの管理方法について)食品の交差汚染を予防し製品を安全に提供するために、どのようにしているか教えてください。」 |
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A | 「現場において、ルールの見える化を実施しています。ひと目で判別できるように、床に印を付けたり、色の異なる帽子の導入を行っています。」 |
有効性を確認する質問例
「組織の構成員に対して適切な教育は行われているか」についての質問例
Q | 「いつ、どのように構成員に教育が行われていますか?」 |
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A | 「毎月一度、テキストを選んで配布して勉強会を実施しています。」 |
「マネジメントレビューを実施しているか」についての質問例
Q | 「どのように、マネジメントレビューを実施していますか?」 |
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A | 「経営者主導で、食品安全のチームからレビュー項目の報告をして実施しています。」 |
注意点としては、「Yes」「No」で答えられる質問はしないようにし、5W1H特にhow=「どのように」という質問をしましょう。従業員の食品安全への理解度を確認する必要があるため、具体的に回答できる形式で質問することが大切です。
ISO22000・FSSC22000内部監査後の対応
ISO22000・FSSC22000内部監査後の対応はどのように行えば良いのでしょうか。ここでは、内部監査後の対応として、マネジメントレビューとフォロー活動の実施について解説します。
マネジメントレビューの実施
マネジメントレビューとは、「内部監査の結果やこれまでの活動報告をもとに、現状の課題や問題点を整理し、体制やシステムの見直しをする活動」のことです。基本的に経営者や取締役などのトップマネジメントが実施します。
マネジメントレビューの一環として内部監査報告を行うことで、経営陣は限りなく正解に近い経営判断を下せるようになります。
そのため、内部監査員は内部監査後に、内容をまとめて報告を行います。
マネジメントシステム構築段階では発見できなかったリスクが内部監査によって発見されたり、未来のリスクに気づいたりすることもあるでしょう。経営判断に関わっている意識をもち、内部監査や内部監査報告を行うことが大切です。
フォロー活動の実施
内部監査後、被監査部門は何らかの是正処置に取り組む必要が出てくることがあります。その場合に、内部監査員も被監査部門の取り組みをフォローすることが大切です。特に被監査部門長が責任者としての経験が浅い場合には、フォローを実施しましょう。
また、正処置報告を受けてから基本的に3か月以内にフォローアップを実施します。是正処置が適切に行えたかどうかを確認するものです。
ISOのマネジメントシステムでは、「現在対応できているか」とともに、「継続的に改善できているか」が重視されます。どこまで是正させるか迷ったら、適合性を損なっていないかどうかや継続的改善に不可欠かどうかという点から検討しましょう。
ISO22000・FSSC22000内部監査の質を高める方法
ここまで、内部監査は食品安全マネジメントシステムを継続的に改善するうえで重要な工程であると解説してきました。そのため、内部監査の質を高めることで、さらに質の高い食品安全マネジメントシステムの運用につながります。
ISO22000・FSSC22000内部監査の質を高める方法の一つに、「内部監査員の力量を高めること」が挙げられます。内部監査員とは、内部監査を実施する人のことです。
内部監査員には、以下のような力量が求められます。不足していると感じる場合には、まず力量を高めたうえで内部監査を実施することが大切です。
- ISO規格への理解
- ヒアリング・コミュニケーション能力
- 問題発見力・課題形成力
- 監査所見・報告書作成力
こうした知識やスキルを高める方法として、以下の2つが挙げられます。
内部監査員の養成講座・セミナーを受ける
1日もしくは2日かけて、内部監査員が備えるべき知識やスキルを習得する養成講座・セミナーを受けることで、力量を高められます。最近では、オンラインコースを用意している講座もあるため、受講しやすくなっています。
内部監査員の資格を取得する
「一般財団法人日本要員認証協会マネジメントシステム審査員評価登録センター」などでは、内部監査員の力量を証明する資格を設けています。こうした資格を取得する過程で知識やスキル、経験を得られます。
内部監査員の概要や資格の取得方法などは、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、ISO22000とFSSC22000の内部監査の概要やメリット、行ううえでの注意点を解説。また、チェックリストや具体的な質問例についても紹介しました。
内部監査を実施すると、新たなリスクが発見されることもあります。是正していくことで、マネジメントシステムをより良い仕組みに改善していくことが可能です。そのためにも、内部監査は有効性と適合性を確認できるような、有意義な監査であることが求められます。
実施の際にはチェックリストを用いたり、内部監査員を教育したりするなどして、効果的な内部監査の実施を目指しましょう。
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