ISO 9001を取得するにあたっては他のISO同様に、マネジメントシステムを構築し認証 機関からの審査を受けなければなりません。マネジメントシステムを構築するにあたり、マニュアル等の文書を作成し、ルールを浸透させる必要があります。つまり、このマニュアル等の文書がとても大切であるということです。

しかし、それはやみくもに分厚いものを作れば良いということではありません。認証後に社内で役立てようと思うならばなおさらスリム化に注意しなくてはいけません。ISO9001取得のためのマニュアルをスリム化する重要性について解説します。

実態にあっていないマニュアル

ISO9001 は製品やサービスの品質 保証に関する国際規格 です。顧客満足度を向上させるために行う品質マネジメントシステム であり、これからの時代の製造業者は取得しておくべきともいわれています。ISO9001を取得するには規格要求事項 を満たしたマネジメントシステムを構築しなければなりません。

しかし、ここで問題なのがつい力が入り過ぎてしまう企業が多いという点です。あれもこれもと必要以上にルールを書き連ね、書類様式にもこだわり過ぎていたずらに時間と費用をかけてしまうのです。

このマネジメントシステムは審査を通過すればそれで終わりというものではありません。その後も運用し、たえず改善を繰り返していく必要があります。そうしなければISO9001の主な目的である顧客満足を向上させ続けることはできませんし、定期的な審査で認証を継続することができなくなってしまいます。

日々使い続けて新しくしていくためにも、マニュアルから無駄をなくしてスリム化しておくことは非常に重要です。

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無駄な時間や工数を費やしてしまう

実態にあっていないマニュアルを作ってしまうと、通常業務にも差し障りが発生する可能性があります。無駄な時間や工数を記入したことで、それに縛られてしまうこともあるのです。

たとえば、以下のようなマネジメントシステムを作ろうとしていませんか?

  • 無意味なルールで業務の工程が複雑化している
  • 担当者が記録作成するのにやたらと時間がかかっている
  • 改定に時間をかけ過ぎている
  • 何が書いてあるのかわからない

たとえば、家電製品を購入した時に、分厚いばかりでどこから読んだら良いのかわからないマニュアルに辟易とした経験はありませんか?これまで問題なく運用されていた工程を、ISO9001の取得のためにといっていたずらに複雑化するのはやめましょう。

マニュアル作成のために社内に混乱を引き起こし、かえって認証までに時間がかかってしまうことにもなりかねません。運良く取得できたとしても、不用なマニュアルに縛られて提供する製品やサービスの質が低下してしまうことも多々あり、これでは本末転倒といえるでしょう。

また、必要以上に複雑なルールを構築してしまうと、ISO担当者が審査前に膨大な時間の残業をし、審査のための書類を大量に作成しなければいけないことになってしまいます。まさに、ISOのためのISOとなってしまい、何かしらの目的がありISOを取得するという手段を選択したはずが、いつの間にかISOを取得することが目的となってしまい、意味のない仕組みとなってしまいます。

もちろん、ISO9001が文書化 を求めている項目はしっかりと満たさなくてはいけません。内部監査マネジメントレビューの記録等も必要です。しかし、その他の部分はできるだけスリム化することで様々なメリットがあります。次にスリム化に成功した例を紹介しましょう。

スリム化のビフォーアフター

A社のケース

A社は従業員約30名、創業40年という部品製造を行う企業です。ISO9001取得にあたってマニュアル1冊、その他の手順を記載した文書が15本、運用のために使用する書類様式50本と、もし記載の通りのルールで作業をするならばかなり複雑な運用ルールを保持しているという状況でした。

ISO9001のスリム化を依頼されたコンサルティング会社が経営者や現場スタッフにヒアリングを行ったところ、実際には使用されていない文書、業務の実態に合致しないルールなどが次々と明るみになりました。

たとえば、ISO9001取得の際に用意した書類があまりに記入事項が多く、それを簡略化した書類をわざわざ別に作成して普段の仕事の中で使っているというようなことが行われていたのです。このような書類の重複は一つや二つではなくあらゆる部署で見られ、大変な無駄が生じていました。

スリム化の結果、マニュアル1本、書類様式30本まで絞ることに成功し、その後の更新をかえってスムーズにすることもできたそうです。最初からスリム化した文書で申請を行っていれば、非常に時間がかかったISO9001取得事態もよりスピーディーにすませることができたことは間違いありません。

B社のケース

創業30年、従業員30名の製造業Bの社では、従業員の力量を記録するファイルを一人一人に作成していました。しかし、年々ファイルの厚さも増す一方で管理に困っていました。

そこで、全員の力量を一つの表にして管理するという方法にスリム化したところ、各スタッフの力量を比較することも可能になり、適材適所に人員を配置できるようになりました。それにより、ISO9001の目標である顧客満足度をアップさせることにも成功したということです。

ISO9001取得に向けての文書作成はつい力が入りすぎてしまいがちです。しかし、顧客満足度を向上させるという目的をつねに忘れず、不必要なものは切り捨てる選択眼も大切です。さらに業績を伸ばしたい製造業こそ、スマートな申請を心がけてはいかがでしょうか。

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