2020年にHACCPが義務化され、食品安全に対する世の中の関心も高まってきました。これまで食品安全にそれほど積極的に取り組んできていなかった事業者も、自主的な取り組みをはじめることが社会的責任として求められています。

また、最近では食品テロ(フードテロ)がSNS上に公開されるケースも増えているため、意図的な異物混入から食品を守る対策を取ることが大切です。

そこで、この記事では食品安全の中でもフードディフェンスの概要やフードセーフティとの違い、具体的な取り組みについて解説します。

フードディフェンスとは

フードディフェンス(食品防御)とは、「食品への意図的な汚染や破壊行為を防止するアプローチ」のことです。
「意図的な汚染や破壊行為」とは、例えば調理中に髪の毛が混入してしまったという事故のことではなく、第三者によって故意に異物や毒物などを混入させられる事件のことを意味します。

こうしたいわゆる食品テロを防ぐために、フードディフェンスは食品を取り扱う業種において、必要不可欠な対策です。

フードセーフティとの違い

フードセーフティとは、食品を製造・加工するために必要な工程を管理することによって食品の安全を保とうというアプローチ手法です。フードディフェンスと同様に、食品の安全性を維持することを目指しています。

フードセーフティの代表的な管理手法には、HACCPがあります。
HACCPでは、食品を製造する工程からハザード(危害要因)を洗い出し、そのリスクを低減するために必要な重要管理点を設定し、その工程を定量的かつ科学的に管理するための管理基準を設けるというものです。
このように食品安全水準を維持・向上させていく考え方をフードセーフティといいます。

そのため、フードディフェンスは「意図的な汚染や妨害行為への防御策」、フードセーフティは「自然発生する危害要因に対する対策」と理解しましょう。

フードディフェンスの必要性

フードセーフティによる食品安全アプローチは、工程を重視した管理であるため、「人為的なリスク要因」を排除しきれません。なぜなら、HACCPやISO22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)に則って構築された食品安全マネジメントシステムは、「従業員がマニュアル通りに動くこと」が前提としてあるためです。

いかに厳格に工程を管理したとしても、「むしゃくしゃしてバレないように毒物を食品に混入させた」「会社が潰れたらいいと思い、刃物を食品に入れた」といったアクシデントの可能性を完全には排除できません。

また最近では企業の部外者における食品テロも増えています。2023年に発生した回転寿司チェーン店における迷惑行為事件では、SNS上に「醤油差しの注ぎ口に口をつけた」動画を投稿したことで、当該チェーン店の信頼が損なわれたという事件も発生しました。

こうした事件から分かるように、自社の食品安全性を確保するために、フードディフェンスは欠かせないアプローチとなっています。

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異物混入により企業が受ける影響

ここでは、意図的な異物混入が発覚することにより企業が受ける可能性のある影響を以下にまとめました。

  • 商品の自主回収
  • 風評による売上低下
  • 企業イメージの低下
  • 取引先からの取引の停止

また異物混入した食品を食べてしまった消費者も、食中毒やケガなどの症状が出る場合があります。こうした影響により、企業は多大な損失が発生する可能性があります。最悪の場合には、廃業してしまうことも考えられるでしょう。

そのため、特に以下のような食品を取り扱う業種は、フードディフェンスに取り組むことが大切です。

  • 食品製造業
  • 飲食業
  • 小売業
  • 食品輸出業
  • 農業

フードディフェンスの具体的な方法

それでは、フードディフェンスはどのような対策が効果的なのでしょうか。ここでは、フードディフェンス具体例を紹介します。

適切な従業員監視

異物混入の原因となる最も大きな要因は、しっかりとフードセーフティ的なアプローチが実施されている現場では、従業員です。一緒に働く仲間を監視するということは、私達日本人の社会的な風土の中では難しいですが、お互いが納得のいく範囲で監視をすることは重要です。

例えば作業服のポケットに私物を忍ばせていないかどうかを従業員同士でチェックさせるなどの対策はとっておくと良いでしょう。また、事故が発生したときに原因を特定することができるように、作業場には監視カメラを設置するなどの対策をとっておくことも有効です。

「監視されている」と従業員に印象を与えておくことでも、事故を未然に防げる可能性があります。また、カメラの映像を残しておくことで、従業員の潔白を証明することも可能です。

従業員の健康管理

昨今の働き方改革の進展によって、従業員の健康管理はもはや使役する企業の重要な役割の一つとなりつつあります。従業員の心身の健康管理は当たり前のように実施しましょう。

そのためには、具体的に健康問診管理システムや働きやすい職場づくりなどの取り組みが考えられます。

もし悩みや不満を抱える従業員がいる場合は、早めに対策を打っておくことで大きな事故を防げる可能性もあります。

施設への出入り者管理

食品を製造する施設に誰が出入りしたのかという入退室管理は、徹底的に実施しておく必要があります。狙われる可能性が少ないとはいえ、不審者が簡単に侵入できないような対策をとっておくことはとても重要です。

具体的には、防犯カメラの設置や入退室管理システムなどの導入、鍵の管理、訪問者の身元確認などの取り組みが考えられます。

適切な組織マネジメントの構築

従業員が働きやすい職場をつくり、かつ従業員や部外者を適切に管理できるようにするには、組織マネジメントを構築することが重要です。

従業員への教育やコミュニケーションの促進、勤務状況の管理などの対策をそれぞれ個別で行うのではなく、1つのマネジメントシステムの中に組み込むことで、一貫した管理体制につながります。

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フードディフェンスを徹底するならFSSC22000の取得を

フードディフェンスを徹底するならFSSC22000の取得がおすすめです。ここでは、FSSC22000の概要やフードディフェンスにおすすめである理由を解説します。

FSSC22000とは

FSSC22000とは、食品安全認証財団(FSSC)が開発した食品安全認証システムに関する国際規格です。また国際食品安全イニシアチブ(GFSI)という世界的な食品企業が集まる非営利団体によって承認された、GFSI承認スキーム(GFSIが定める食品安全に関する要求事項との同等性が認められたスキーム)の一つでもあります。

食品の安全に関する国際規格といえば、ISO22000を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、FSSC22000はISO22000よりも認定条件が厳しく設定されています。

日本ではキッコーマングループやキユーピー株式会社、森永乳業株式会社などの大手企業も取得している規格です。取得することで、食品の安全性を高めるとともに自社の食品における信頼性の向上につながります。

関連記事:FSSC22000とは?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!
関連記事:【図解】GFSI承認スキームとは?概要を簡潔に解説

FSSC22000とフードディフェンスの関係

FSSC22000とフードディフェンスは、切っても切れない関係性にあります。
というのも、FSSC22000を取得するための要求事項の中に、フードディフェンスに関する項目が盛り込まれているためです。

そのためFSSC22000を取得する過程で、フードディフェンスに取り組む必要があります。また、FSSC22000を取得できれば対外的にもフードディフェンスに取り組んでいることをアピールできるのです。

ISO22000にフードディフェンスに関する要求事項がないことからも、フードディフェンスを強化したい場合にはFSSC22000の取得がおすすめです。

まとめ

今回は、フードディフェンスとフードセーフティについて解説しました。これらは属性が違うものですから、「どちらの考え方が大事」ということはありません。それぞれの特徴を理解し、適切に組み合わせて管理することでより高い食品安全水準を目指しましょう。

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