• OHSMSとは、組織における職場の労働安全衛生水準を向上させるための仕組み
  • OHSMSの実施により、労働災害発生率の低下が期待できる

近年の日本は様々な労働問題が顕在化しており、企業が気を配らなければならない労働者の健康の範囲はますます大きくなってきています。しかし、ただ単純に日本の法律を守るだけでは、その労働安全衛生水準は「最低限」のものにしかなりません。そんな中注目が集まっているのが、労働安全衛生マネジメントシステムOHSMS)です。

今回は、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)とは一体どのようなものなのかということについて解説していきます。

OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)とは

OHSMSとは、企業や組織が職場の労働安全衛生水準を向上させるために活用することができるマネジメントシステムです。特に建築業や製造業において求められている仕組みです。

OHSMSは「Occupational Health and Safety Management System」の頭文字を取った言葉で、これらはそれぞれ以下のような意味を持つ単語です。

  • Occupational:職業の
  • Safety:安全
  • Health:健康
  • Management:管理
  • System:仕組み

そのままつなげると、「職業の健康と安全を管理する仕組み」ということになりますね。——この直訳を目にして、ピンと来ない方も多いと思います。ということで、以下ではもう少し噛み砕いてOHSMSについて解説していきたいと思います。

OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)の目的

OHSMSは、企業が自主的に働く人たちの心身の健康管理を自主的に進め、労働災害の防止、健康増進の体制を継続的に改善していくことで、労働安全衛生水準の高い職場を形成していくための組織の仕組みです。

OHSMSとOSHMS、OHSASとの違い

OHSMSとOSHMS、OHSASの違いを知るためには、OHSMSが生まれた経緯を解説します。

労働安全衛生マネジメントシステムは「OHSMS*2」と呼ばれ、労働省(現厚生労働省)が1999年4月に労働安全衛生マネジメントシステムの指針(旧表記OSHMS*3)を定め、OSHMSの導入・定着への取り組みを推進してきました。その後、2013年6月に開発委員会(ISO /PC283)が設置され、準国際 規格 である OHSAS18001のISO規格化を目指しOSHMSのISO化が決定、「OHSMS」の表記が採用されました。OHSAS18001:2007年版やILO*4が発行したILO-OGH 2001に基づいて開発が進められ、2018年3月12日に「ISO45001」が発行されました。

【留意事項】OHSAS 18001:2007からISO45001への移行期間
ISO 45001:2018の発行に伴い、OHSAS 18001:2007の移行期間はISO 45001:2018の発行日から3年間。2021年3月11に廃止されました。現在OHSAS18001の認証を取得しており維持されたい企業については、移行期間中に移行を完了する必要がありました。

*2 OHSMS:Occupational Hearth and Safety Management Systemの略称、労働安全衛生マネジメントシステム
*3 OSHMS:Occupational Safety and Health Management Systemの略称、労働安全衛生マネジメントシステム
*4 ILO:International Labour Organizationの略称、国際労働事務局

そのため、OHSMSは現在のISO45001におけるマネジメントシステムであり、OHSASはその前身となる規格です。また、OHSMSとOSHMSについては、呼び方が異なるだけで同じ意味をもっています。

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そもそもマネジメントシステムとは?

OHSMSを理解する上で、最も私達にとってそれをわかりにくくさせるのは、「マネジメントシステム」という単語があるからでしょう。マネジメントシステムとは、簡単に言えば「管理の仕組み」のことなのです。もう少し体系的にマネジメントシステムを言い表すとすれば、「組織がある目的を達成するための組織のマニュアル、ルール、方針といった組織活動全般」がマネジメントシステムです。

例えば、皆さんの務めている会社には、営業ノルマといったものはありますでしょうか。——この営業ノルマもマネジメントシステムだと言えます。会社は「売上見込」というものを立てて、その売上見込から各営業マンに対してノルマを課します。そうすると、営業マンが与えられたノルマを達成することで、組織は営業見込み(目標)を達成することができるのです。——ノルマ制度がマネジメントシステムとして有効かどうかはさておき、営業ノルマも組織が目標を達成するための仕組みであると言えます。

マネジメントシステムの詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:マネジメントシステムとは?わかりやすく解説

OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)と国際規格ISO45001の関係性


ここでは、OHSMSとセットで紹介されることが多い国際規格ISO45001について、概要やOHSMSとの関係性について解説します。

国際規格ISO45001とは

スイスに本部を置く国際標準化機構(ISO)が、世界中の貿易をスムーズに行う目的で、各国の商品・サービスにおける国際的な基準として国際規格ISOを発行しています。そのうち、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格がISO45001となっています。

ISO45001の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:【初心者向け】ISO45001とは?取得企業数や要求事項をわかりやすく解説

OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)とISO45001の関係性

労働安全衛生マネジメントシステムとISO45001の関係性は、労働安全衛生マネジメントシステムは、「仕組み」であり、ISO45001は労働安全衛生マネジメントシステムに関する「国際規格」です。労働安全衛生マネジメントシステムの認証規格として、ISO45001があります。

ISO45001は、自社において労働安全衛生マネジメントシステムをどのように構築・運用すれば、目的を達成できるかについて示したガイドラインといえるでしょう。ISO45001を取得するには、認証機関の審査員による審査を受けることが必要です。

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OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)の特徴

さて、今一度OHSMSに話を戻しましょう。OHSMSは、「職場の安全と健康を管理する仕組み」という意味でしたよね?——つまり、「職場の安全と健康」という組織の目標を達成するための様々な活動や方針などのことをOHSMSと言うのです。

では、具体的にどのようなマネジメントシステムのことを指すのでしょうか?以下では、OHSMSの特徴をご紹介していきましょう。

PDCAサイクル

マネジメントシステムの多くは、PDCAサイクルという目的を達成するための継続的な活動やアプローチを改善していく仕組みを構築することが重要であるとされています。——例えば、先程の営業ノルマの話だと、Aさんが3ヶ月間ノルマ未達だったとして、その後も同じノルマを課し続けるのは最適な選択であるとは言えませんよね?個人の能力に基づいて、ノルマを決定していかなければなりません。

それと同じで、労働安全衛生水準の向上という目標を達成するためにも、何らかの施策を打つだけでなく、その施策が有効なのかどうかということを検証し、その結果をもとに、経営者や管理職へマネジメントレビューを行い、改善を図っていく必要があるのです。

手順化、明文化、記録化

マネジメントシステムは個人の力量のような不確かなものに依存しないものであることが理想的です。そのためには、仕組み化を行い、手順を明確にし、データを記録してく必要があります。「誰がやっても安全」な職場を実現するためには、手順化、明文化、記録化は重要なポイントの一つです。

特に、どのように計画した労働安全衛生マネジメントシステムを実践していくのかについて、作業手順書を準備しますが、現場において機能する形にすることが大切です。例えば、フローチャートを用いることで感覚的に従業員が理解できるほうが利用しやすい場合には、文書よりも有効性が高いといえるでしょう。
このように、自社の特徴を理解したうえで、マネジメントシステムを構築しましょう。

リスクアセスメントの実施

労働安全衛生リスクというのは、職場環境に応じて異なりますし、すぐに発見できないものもあるでしょう。OHSMSでは、定期的に職場にはどのようなリスクが内包されているか、適切にリスクアセスメントを行っていく必要があるのです。

業務の流れに沿って、安全衛生管理が必要なリスクが存在しているのか洗い出し、そのリスクがどの程度、組織に影響するかを適切に把握し、対策を打つことが必要となります。

関連記事:ISO45001におけるリスクアセスメントの流れについて理解しよう

OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)の有効活用

組織において、労働災害の防止および減少を効果的に実現させるためには、リスクアセスメントによる事業場のリスク低減が不可欠で、計画的にトップマネジメントだけでなく組織全体での取り組みが必要になります。
ヒヤリ・ハット活動や危険予知活動、従業員の安全衛生教育を定期的に実施し、全従業員が労働災害防止に対して高い意識を持ち続けることが大切です。労働安全衛生マネジメントシステムを活用することで、組織全体で労働災害防止・災害低減させるための取り組む体制を構築することができ、運用・改善活動の継続がしやすくなります。

まずは、労働安全衛生マネジメントシステム(仕組みづくり)に取り組むことから始めましょう。導入・定着後、その取り組みの結果、認証取得(外部評価)して労働安全衛生マネジメントシステムの取り組みをさらに一段向上させることも可能です。 
【補足資料】OHSMS/ISO 45001:2018の要求事項「PDCAサイクル」とは?
  ISO45001認証を取得する場合、当規格の要求事項に基づき、組織の労働安全衛生上、対策の必要なリスクに対しマネジメント計画(P)を立て、運用(D)・評価(C)・見直し(A)というサイクル
(図解1)で継続的な改善活動を実施します。
OHSMSの適用範囲

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OHSMSの実施効果とは


OHSMSを実施することにより期待される効果としては、以下の点が挙げられます。

従業員の安全衛生への意識向上

安全や健康におけるポリシーが全社的に明確になり、従業員が積極的に安全衛生活動に参画することが期待できます。システム化されることで、従業員は問題意識をもって日常業務に取り組めるようになります。
さらに、実施した結果が適切に評価、改善されることで、PDCAサイクルでの運用がさらに促進されるでしょう。

合理的なリスク管理が可能に

合理的なリスク管理ができることで、組織的な運用が可能になります。
安全や健康に対する取り組みが属人化すると、リスク管理は主観的になり、ルールが形骸化するリスクが高まります。リスクを洗い出し、優先順位や対策を定めておくことで、誰であってもリスクに対応できるようになります。

実際に、2004年に行われた厚生労働省の調査によると、OHSMSを運用している事業場は、そうでない事業場に比べて、労働災害発生率(年千人率)が低いという結果が出ています。

OHSMSの実施状況 OHSMS運用中 リスク評価実施 OHSMS構築中 関連する活動の記録なし
平均災害発生率 3.91 4.00 4.21 6.15
参考:厚生労働省「大規模製造業事業場における安全管理に係る自主点検結果について」

労働安全衛生マネジメントシステムに関する認証規格とは

労働安全衛生マネジメントシステムには、そのマネジメントシステムを評価する規格というものがあります。規格とは、簡単に言えばガイドラインのようなもので、規格に沿ってマネジメントシステムを構築していくことで第三者認証を取得することができるのです。

第三者認証を受けた企業は、世間から「この機関に認められた労働安全衛生マネジメントシステムが導入されている」とみなされることになります。これにはどういった意味があるかというと、例えばAくんという人がいて、Aくんが自分で「私は頭が良いです。」というよりも、Bくんが「Aくんは頭が良いです。」と聞いたほうが、「信憑性がある」と考えることができますよね? それと同じで、「弊社は安全な労働環境です。」と自社発信でアピールするよりも、第三者機関(認証機関)に「この会社は安全な労働環境です。」と言ってもらったほうが、信用力を勝ち取ることができるのです。

つまり規格を取得することで、「労働安全衛生」という分野において、人材の獲得や取引先からの信用獲得、従業員満足の向上など様々なメリットを受けることができるのです。

そんな労働安全衛生マネジメントシステム規格には、どのようなものがあるのでしょうか?

ISO45001

ISO45001は、国際標準化機構(ISO)による労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。2021年までにこれまでOHSMSのスタンダードであったOHSAS18001を代替することを目標としている新しい規格でありますが、今後のスタンダードとなっていく規格となるでしょう。

関連記事:【初心者向け】ISO45001とは?取得企業数や要求事項をわかりやすく解説

OHSAS18001

OHSAS18001は、これまで労働安全衛生マネジメントシステムのスタンダードであった規格ですが、2021年3月に廃止されました。

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まとめ

今回は、労働安全衛生マネジメントシステムとはどのようなものかということについてご紹介してきました。今回の記事ではお伝えできなかった部分に関しても、他の記事で解説しておりますので、是非参考にしてみてください。

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