【ISO45001入門】規格の詳細から要求事項・取得のノウハウまで徹底解説

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ISO45001とは、2018年3月21日に国際標準化機構(ISO)によって発行された労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。規格は国際コンソーシアムによって策定されたOHSASや国際労働機関(ILO)が発行したILO-OGH2001を基にしています。

ISO45001は組織のために働くすべての人々の身体的、精神的な健康を保護するという組織の責任を全うするための労働安全衛生マネジメントシステムを構築することを支援する目的で開発されました。

日本では昨今の労働問題からも、労働安全衛生に対する関心は高まっており、経営者は労働安全に対して労働安全衛生に関する法規制等の順守及び自主的な取り組みを行うことを労働者や求職者から求められています。こうした観点からも、ISO45001を取得することは長期的に安定した事業継続のために、人材確保やリスク低減の他にも様々なメリットにつながります。

労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)とは?

OSHMSとは、Occupational Safety and Health Management Systemの略です。
それぞれの単語は

  • Occupational => 職業の
  • Safety =>安全性
  • Health =>健康
  • Management=>管理
  • System =>仕組み

という意味を持つ英単語で、日本語では「労働安全衛生マネジメントシステム」と呼ばれています。
OSHMSを簡潔に言い表すと、以下のようになります。

継続的に安全衛生管理を推進することによって、
労働災害の防止や労働者の健康リスク低減し、
事業場の安全衛生水準の向上を図る企業組織の仕組み

ISO45001は、OSHMSに対する規格で、有効的かつ運用可能なマネジメントシステムを構築する上で一助となるものです。

マネジメントシステムとは?
マネジメントシステムとは、簡単に言ってしまえば会社や組織におけるルールのようなものです。その厳格さや緻密さに差はあれど、トップマネジメントと呼ばれる経営層が打ち立てた方針、目標を達成するための管理の仕組みです。

例えば、「経費が高いから、使っていない会議室の電気は最後に使った人が消す」というルールもある種のマネジメントシステムです。そんな数あるマネジメントシステムの中でも、労働安全衛生…つまり働く人々や事業所の訪問者の安全衛生を改善するためにあるものがOSHMSというわけです。

ISO45001の効果

平成22年の厚生労働省の統計(労働安全衛生基本調査)によると、労働安全衛生マネジメントシステムの導入によって、労働災害やヒヤリハット体験が「減少した」と回答した事業所は、39.5%、「ある程度減少した」と回答した事業所は54.5%となっており、合わせて94%の事業所が効果を実感していることがわかります。

労働安全衛生マネジメントシステムを導入することは、マネジメントシステムの本来の目的である「労働安全衛生上のリスクの低減」の他にも、様々なメリットが考えられます。

人材の確保
昨今の労働問題もあり、「安全な職場で働きたい」と考える労働者は増加しつつあります。ISO45001を取得し、労働安全衛生に対して自主的な取り組みを行うことは、労働者に対して「職場の安全性」をアピールする有効的な手段です。このような取り組みは働く人々の満足にも繋がりますし、これから新たに採用活動を行う際にもメリットとなるでしょう。
安定した経営の実現
安定した経営を行う上で、働く人々に長く働いてもらうことはとても重要なことです。労働者を雇用する以上、労働者が怪我をすることで急な人材確保が必要になったり、事故による世間からのバッシングを受けるリスクとは常に隣り合わせであると考えたほうが良いでしょう。このようなリスクを低減することは、長期的に安定した経営の実現につながります。
作業効率の向上
マネジメントシステムを導入せずに、労働者一人ひとりの能力に依存するリスク管理は、作業効率を低下させます。抜本的な部分から安全・安心に作業をできる環境を提供することで、作業効率の向上、ひいては生産性向上を図ることができます。

ISO45001による、OSHMS構築の手順

推進チームメンバーと現場、現物の確認

STEP1推進チームメンバーと現場、現物の確認

推進するチームメンバー、及び適合範囲を確認します。対象となる製造の現場と製品の現物も確認します。

OH&Sの現状と課題点の抽出及び目標の設定

STEP2OH&Sの現状と課題点の抽出及び目標の設定

チェックリストを用いてOH&S(労働安全・衛生の規格)の現状の課題を抽出します。
製造工程をいくつかのプロセスに分けて、製造工程のすべての情報を網羅し、現状のOH&S規定と他の規定を確認します。

ISO45001のフローダイアグラムの作成

STEP3ISO45001のフローダイアグラムの作成

フローダイアグラム(製造の作業工程の流れを記したもの)を作成します。このフローダイアグラムから現状行われているOH&Sの管理手段を確認します。

OH&Sハザードの抽出と管理策及び不適合の取り扱い手順の確立

STEP4OH&Sハザードの抽出と管理策及び不適合の取り扱い手順の確立

OH&Sハザードの抽出を漏れのない方法で実施。抽出したハザードについて可能性、影響度などを評価、それに対する管理策を確立します。
発生した不適合状況の修正についての規定を確立し、安全ではない可能性のある現場の取扱いについての規定も定めます。

方針と目標の設定、文書の作成

STEP5方針と目標の設定、文書の作成

組織の事業シナリオを作成、意図した結果とその達成のための内外の課題を明確にします。利害関係者のニーズ及び期待を明らかにし、内外課題も考慮してOH&S方針を策定、リスク及び機会を特定して目標設定をします。
方針書、目標管理文書、及び組織が必要としている規定書等を作成します。手順書、要領書、仕様書を確認し、基本的マニュアルを完成します。

運用開始と内部監査

STEP6運用開始と内部監査

文書化した内容で運用を開始します。各部門で管理策の検証を実施しながら、最低3カ月間の運用を行ったあと、事前に日程調整をして内部監査をおこないます。

マネジメントレビュー

STEP7マネジメントレビュー

内部監査から得た情報をはじめ、必要な情報をインプットしてマネジメントレビューを行います。このマネジメントレビューで重要なのがリーダーシップであり、2015年改定版で経営者の責任に変わって新しく設定されました。
リーダーシップは経営戦略的な方向性と課題を明確にし、マネジメントレビューを行うことで、事故ゼロを目指します。

審査

STEP8審査

審査は第一次審査、第二次審査の2段階で行われ、指摘事項への対応をします。

認証登録

STEP9認証登録

審査をクリアすれば、認証登録が行われます。

ISO45001の要求事項の解説

組織の状況
  • 4.1組織及びその状況の理解
    組織は労働安全衛生マネジメントシステムを確立するために、内部・外部の課題を特定します。「意図した成果」とは労働に関する怪我や病気を防止して安全で健康的な職場を働く人に提供することです。
  • 4.2働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待の理解
    組織で働く人(代表も含めます)と利害関係者を特定します。特定されたニーズと期待の中で組織として順守すべき法令や顧客の要求事項を正しく理解することを求めています。
  • 4.3労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定
    4.1項の「内部・外部の課題」、4.2項の「利害関係者」、さらに労働安全衛生マネジメントシステムに影響する活動を考慮して「適用範囲」を決定し、文書化します。
  • 4.4労働安全衛生マネジメントシステム
    組織の特性に応じて労働安全衛生マネジメントシステムの要求事項に適合したPDCAサイクルを運用することを要求しています。
リーダーシップ及び働く人の参加
  • 5.1リーダーシップ及びコミットメント
    労働安全衛生マネジメントシステムにトップマネジメント自身が関与して、リーダーシップのもと13(規格のa~m)のコミットメントを実施することを求めています。
  • 5.2労働安全衛生方針
    労働安全衛生方針は組織の労働安全衛生マネジメントシステムの目的や方向性を示す活動の枠組みを文書化します。この方針は組織内に伝達し、また利害関係者が入手できるようにします。
  • 5.3組織の役割、責任及び権限
    労働安全衛生マネジメントシステムを運用するために各階層で必要な役割を定めて、責任及び権限を割り当てます。トップマネジメントはマネジメントシステムの機能について責任を持ちます。
  • 5.4働く人の協議及び参加
    労働安全衛生マネジメントシステムにおける開発、計画、実施、パフォーマンス評価及び改善のための処置は、働く人による協議(意見を出し合うこと)及び参加(意思決定に関与すること)するプロセスを確立することを求めています。
計画
  • 6.1リスク及び機会への取組み
  • 6.1.1一般
    「4.1組織及びその状況の理解」、「4.2働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待の理解」「4.3労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定」を考慮し、リスク及び機会を決定します。
  • 6.1.2危険源の特定並びにリスク及び機会の評価
  • 6.1.2.1危険源の特定
    危険源(ケガや病気の原因)は継続的に先取りして特定し、インシデント(労働によるケガや病気)を未然に防止します。
  • 6.1.2.2労働安全衛生リスク及び労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他のリスク評価
    危険源から生じるリスクやマネジメントシステムに関するリスクを評価する手法を確立します。
  • 6.1.2.3労働安全衛生機会及び労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他の機会の評価
    労働安全衛生機会(パフォーマンスを向上させたり、作業環境を良くしたり、改善など)を評価するプロセスを求めています。
  • 6.1.3法的要求事項及びその他の要求事項の決定
    労働安全衛生マネジメントシステムに適用される法的及びその他の要求事項を決定します。決定に際してその法令の入手方法や適用方法、対象などを決めて文書化し、最新版にしておきます。
  • 6.1.4取組みの計画策定
    リスク及び機会、法的要求事項等、緊急事態について活動計画を策定します。
  • 6.2労働安全衛生目標及びそれを達成するための計画策定
  • 6.2.1労働安全衛生目標
    関連する部門と階層で目標を設定します。
  • 6.2.2労働安全衛生目標を達成するための取組みの計画策定
    目標を達成するための活動内容、必要な資源、責任者や達成期限を定めます。また結果の評価方法も決めて文書化します。
支援
  • 7.1資源
    組織の経営資源に関する事項で、人的・インフラストラクチャ・技術及び資金など必要な資源を決定し、提供することが求められます。インフラストラクチャの例では建物、設備、情報システムなどが含まれます。
  • 7.2力量
    「5.3組織の役割、責任及び権限」で規定された内容が十分な機能を果たせるように必要な力量を定めてその力量を持った人が当該業務を実施することを要求しています。一般に教育訓練の計画、実施、評価、改善といったPDCAを組み込むことが大切です。
  • 7.3認識
    働く人に対し、労働安全衛生に関する方針・目標、有効性に対する自己の貢献などの認識を持たせることを要求しています。
  • 7.4コミュニケーション
    「7.4.1一般」はコミュニケーションに必要なプロセス(内容・実施時期・対象者・方法)を確立させ、「7.4.2内部コミュニケーション」は組織内(従事者・委託)でのコミュニケーションの設定し継続的改善に寄与できること。「7.4.3外部コミュニケーション」は顧客や法的な要求事項も合わせて労働安全衛生マネジメントに関する情報についてコミュニケーションを行います。
  • 7.5文書化した情報
    「7.5.1一般」は労働安全衛生マネジメントで要求される管理対象の【文書化した情報】を定めています。【文書化した情報】はマニュアルや手順書などの「文書」と報告書などの「記録」があります。
    「7.5.2作成及び更新」および「7.5.3文書化した情報の管理」では業務を行う上でどの程度の文書化が必要か、どこまでの詳細な記録が必要かを決めて、組織に見合った文書管理を行います。一般に組織が大きくなるほど規定類や作業手順書などが細分化され、公式化していきます。
運用
  • 8.1運用の計画及び管理
  • 8.1.1一般
    「6計画」で定めた事項のプロセスを計画、実施により運用を確実にすることを要求しています。
  • 8.1.2危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減
    危険源の除去及びそのリスクに対する対応の優先順位について要求しています。管理策の優先順位とは①除去(危険源を取り除く)、②代替(より安全なものに置換える)、③工学的対策(危険源から分離する)、④管理的対策(教育訓練)、⑤個人用保護具(マスクなど)の順位で検討します。
  • 8.1.3変更の管理
    プロセス等に変更が生じた場合、労働安全衛生パフォーマンスに悪影響を与えないよう処置することを求めています。
  • 8.1.4調達
    製品及びサービスを調達するプロセスの管理を要求しており、調達を「8.1.4.2請負者」と「8.1.4.3外部委託」に分けて規定しています。
  • 8.2緊急事態への準備及び対応
    「6.1.2.1危険源の特定」で定めた起こりうる緊急事態の対応手順を策定し、その手順が有効に機能するかテストの実施を求めています。
パフォーマンス評価
  • 9.1モニタリング、測定、分析及びパフォーマンス評価
  • 9.1.1一般
    労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果が達成されたかを評価します。
  • 9.1.2順守評価
    「6.1.3法的要求事項及びその他の要求事項の決定」した事項について評価をするために必要なプロセス(評価頻度、評価方法、順守状況など)を確立します。
  • 9.2内部監査
    「9.2.1一般」及び「9.2.2内部監査プログラム」では組織の労働安全衛生マネジメントが規格に適合しているか、運用状況が有効性のあるものかを自社内でチェックします。
  • 9.3マネジメントレビュー
    トップによって実施されるレビューで労働安全衛生マネジメントの運用やパフォーマンスを確認・評価して次の改善につなげる要求事項です。
改善
  • 10.1一般
    労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を達成するために改善の機会を定めて必要な取組みを行うことを要求しています
  • 10.2インシデント、不適合及び是正処置
    インシデント及び不適合を定めて管理するプロセスを確立し、是正処置を行います。また、是正処置を実施する前に、危険源に関連するリスク評価も行います。
  • 10.3継続的改善
    労働安全衛生マネジメントの適切性、妥当性、有効性を継続的に改善することを求めています。継続的改善はPDCAをスパイラル的に回してパフォーマンスを向上させていきます。
附属書A
  • 付属書Aはこの規格に規定する要求事項の誤った解釈を防ぐために設けられました。この規格の要求事項に対して、ある箇条の要求事項と他の箇条の要求事項との間に相互関係を示している部分もあり、他と切り離して解釈しないよう包括的な観点で参照することを意図しています。
    「A5.1リーダーシップ及びコミットメント」では以下のことが記述されています。
    労働安全衛生マネジメントシステムが成功するため,及びその意図した成果を達成するためには,組織のトップマネジメントの認識、対応、積極的なサポート及びフィードバックを含めたリーダーシップとコミットメントが不可欠である。したがって、トップマネジメントは、自身が個人的に関与又は指揮することが必要な特定の責任がある。
    組織の労働安全衛生マネジメントシステムを支える文化は、トップマネジメントによって概ね決定されるものであり、労働安全衛生マネジメントシステムに対するコミットメント、並びに労働安全衛生マネジメントシステムのスタイル及び習熟度を決定する個人及びグループの価値観、姿勢、管理の慣習、認識、力量及び活動パターンの産物である。その文化は、これらに限定されないが、働く人の活発な参加、相互の信頼に基づく協力とコミュニケーション、労働安全衛生機会の発見への積極的な関与による労働安全衛生マネジメントシステムの重要性に対する共通の認識、及び予防・保護処置の有効性への信を特徴とする。トップマネジメントがリーダーシップを実証する重要な方法は、インシデント、危険源、リスクと機会の報告を働く人に奨励すること、及び報告したときに解雇の脅迫又は懲戒処分等の報復から働く人を保護することである。】
    組織の経営計画の中に他の経営と両立して労働安全衛生マネジメントシステムに関わる活動が組込まれています。トップマネジメントの強いリーダーシップのもと、全員が自ら活動の主体として取組むことが労働安全衛生マネジメントシステムの構築の鍵といえます。

OHSAS18001とISO45001との違いとは

労働安全衛生マネジメントに関する規格は、OHSAS18001とISO45001の2つが存在します。
OHSAS18001は長い間、さまざまな企業や組織で運用してきた準国際規格です。準国際規格と言えど、事実上の国際標準として使われてきましたが、2018年3月に国際標準規格としてISO45001が登場したのです。大きな違いは、ISO45001にはISOの共通書式を使うことで、他のISO規格同様に構造や用語などが統一しました。

基本的にOHSAS18001とISO45001は、労働安全衛生に関するマネジメントシステムを構築するものであり、企業が顕在的かつ潜在的な危険性を洗い出し、改善していく仕組みを作ることに変わりはありません。

OHSAS18001は2021年3月で失効となり、ISO45001への移行をする必要があります。OHSAS18001とISO45001は若干の表現内容などが変更となっており、他のISO規格に準じた表現内容となるので、他のISO規格とシステムを共有することで取得が容易に進めることが可能です。

OHSAS 18001のISO45001移行

ISO45001は、これまでOSHMSのスタンダード規格であった、OHSAS 18001をベースとして構築された規格です。このOHSAS 18001は、2019年10月に新規認証取得の申し込み受け付けを終了し、2021年3月からは登録失効する予定となっており、OHSAS取得企業はISO45001への移行が求められています。

OHSAS 18001からISO45001への移行スケジュール

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