労働安全衛生目標の立て方・具体例20選!ISO45001完全対応

FAQ労働安全衛生目標に関するよくある質問
ISO45001に基づいたマネジメントシステムを構築する際、多くの担当者が頭を悩ませるのが「労働安全衛生目標」の策定です。方針は決まっても、どのように目標へ落とし込み、運用すればよいのか戸惑うケースは少なくありません。
実効性のあるシステムを作り上げるためには、形だけの目標設定を脱し、適切な評価ができる計画を立てる必要があります。
そこで、この記事では労働安全衛生目標の概要や設定方法を解説したのち、現場で役立つ20の具体例を紹介します。担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
労働安全衛生目標とは?
労働安全衛生目標とは、従業員の安全と健康を守るために安全衛生全般で達成したい目標のことです。職場にあるリスクを事前に調べ、その結果をふまえて「いつ、何を、どこまで達成するか」を明確にした数値指標として設定します。
ここではまず、労働安全衛生目標の基本的な知識について解説します。
設定目的と必要性
目標を設定する最大の目的は、労働災害や健康障害を未然に防ぐ活動を、「計画的」「合理的」に進めるためです。
厚生労働省が平成16年に行った調査「大規模事業場における安全管理体制等に係る自主点検結果」では、この仕組みを取り入れている事業所は、そうでない事業所に比べて災害発生率が約30%以上も低いという結果が出ています。
具体的な目標を立てて対策を行うことは、従業員の命を守るための最も効果的な手段なのです。
労働安全衛生方針との違い
労働安全衛生方針とは、安全管理についての組織の方向性を決める概念のことです。方針が抽象的な「スローガン」であるのに対し、目標はその方針を現実にするための「具体的なステップ」です。
例えば、労働安全衛生方針が「事故のない快適な職場を目指す」という理想を掲げているとします。その場合、目標は「そのために、今期中に機械の点検実施率を100%にする」といった具体的な行動基準として設定します。
ISO45001で求められる基準
国際規格であるISO45001では、労働安全衛生目標を立てる際、有効に機能するための基準が定められています。主なポイントを以下にまとめました。
- 安全衛生方針と整合性があること
- 測定可能であること
- 法的要求事項やリスクを考慮すること
- 目標の進捗状況を定期的にチェックすること
- 定期的に適切な内容に更新し、従業員に周知すること
また、労働安全衛生目標に関する取り組みは、文書化して管理する必要があります。つまり、決めた目標やその達成に向けた計画、進捗の結果などは、いつでも確認・証明できるように記録に残しておくことが不可欠です。
【テーマ別】労働安全衛生目標の具体例20選

労働安全衛生目標を立てる際は、自社の課題に合わせて「何を」「いつまでに」「どの数値まで」達成するかを明確にすることがポイントです。ここでは、20個の具体例をテーマ別に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
安全:労働災害の防止
事故や怪我を未然に防ぎ、現場の安全性を高めるための目標をまとめました。
| 項目 | 具体的な目標数値 | |
|---|---|---|
| 1 | 労働災害発生率の削減 | 作業手順の不履行による労働災害をゼロにする |
| 2 | ヒヤリハット報告の促進 | 全従業員から月間合計「◯件以上のヒヤリハット報告」を収集する |
| 3 | 設備点検の徹底 | 主要機械の定期点検実施率100%を維持する |
| 4 | 保護具の着用徹底 | ヘルメットの不適切着用への指摘件数を前年比50%削減する |
| 5 | フォークリフト事故の防止 | 構内制限速度の遵守を徹底し、接触事故件数ゼロを継続する |
健康:メンタルヘルス・疾病予防
従業員の心身の健康を維持し、活力ある職場を作るための目標をまとめました。
| 項目 | 具体的な目標数値 | |
|---|---|---|
| 1 | ストレスチェックの活用 | 全従業員の受検率100%にする、また高ストレス者への面談実施率100%にする |
| 2 | 長時間労働の是正 | 月45時間を超える時間外労働者数を前年比30%削減する |
| 3 | 健康診断後のフォロー | 再検査・精密検査対象者の受診率100%を達成する |
| 4 | メンタルヘルス後のフォロー | メンタルヘルス不調者への相談窓口を100%周知する |
| 5 | 運動習慣の定着 | 腰痛予防ストレッチを毎日実施し、実施率100%を維持する |
環境:作業環境の改善
作業場所の物理的な環境を整え、健康障害や疲労の蓄積を軽減するための目標をまとめました。
| 項目 | 具体的な目標数値・指標 | |
|---|---|---|
| 1 | 5S活動の推進 | 巡回点検において、平均評価点「4.0以上(5点満点)」を維持する |
| 2 | 騒音・換気の改善 |
|
| 3 | 熱中症対策 | 暑さ指数を毎日測定し、基準値(例:28℃)を超えた際に100%休憩を付与する |
| 4 | 体に負担をかけない環境づくり | 重筋作業へのアシストスーツ導入や設備改善を◯カ所以上実施する |
| 5 | 化学物質の管理 | リスクアセスメントを全対象物質で実施し、代替品検討を◯件行う |
文化:ハラスメント防止・教育強化
組織全体の意識を底上げし、働きやすい風土を作るための目標をまとめました。
| 項目 | 具体的な目標数値・指標 | |
|---|---|---|
| 1 | ハラスメントの早期発見 | 相談窓口への相談に対し、「1週間以内に100%対応を開始」し、放置ゼロを徹底する |
| 2 | 相談窓口の周知 | 相談窓口の利用方法について、全従業員に周知カードを配布する |
| 3 | 意識の向上 | 従業員向けのハラスメント防止講習を年〇回実施する |
| 4 | 安全意識の教育 | 全従業員向け安全講習を実施し、「テスト平均80点以上」を得る |
| 5 | 専門的な人材の育成 | 衛生管理者や安全衛生責任者の資格取得者を今期中に「新たに◯名」養成する |
失敗しない労働安全衛生目標の立て方

ここでは、現場に浸透し、実際に効果が出る労働安全衛生目標の立て方を解説します。
1.現状の問題点・リスクの把握
まずは職場の「どこに、どのような危険が潜んでいるか」を洗い出します。
過去に起きた労働災害のデータや、従業員から集めたヒヤリハット報告などを分析し、自社の問題点・リスクを客観的に把握します。
2.リスクアセスメントの実施
洗い出したリスクに対して、「起こる可能性の高さ(発生率)」と「起きた時の重大さ(重要度)」を掛け合わせて優先順位をつけます。
すべてのリスクを一度に解決するのは難しいため、特に「命に関わるもの」や「頻繁に起きるもの」から重点的に対策を検討します。
3.労働安全衛生目標の設定
把握したリスクに基づき、具体的な目標を立てます。この際、測定可能な数値を目標にすることが重要です。
上位概念である安全衛生方針とズレがないかを確認しながら、現実的に目指せる数値を設定しましょう。
4.目標達成のための計画策定
目標を決めたら、「誰が」「いつまでに」「何を」「どうやって」達成するかという具体的なスケジュール(実施計画書)を作成します。
また、必要な予算や人員などのリソース(資源)を確保しましょう。トップマネジメントが適切なリソースを配分することで、計画倒れになるのを防げます。
5.全従業員への周知と教育
決定した目標と計画を、全従業員に共有します。
掲示板への貼り出しやミーティングでの説明を通じて、「なぜこの目標が必要なのか」を一人ひとりが理解し、自分の行動に落とし込めるよう教育を徹底します。
労働安全衛生目標を形骸化させない運用のコツ

労働安全衛生目標を形骸化させない運用のコツとして、以下の3項目が挙げられます。
- 数値を入れた目標を設定する
- 点ではなく線を意識する
- 定期的に見直す
以下では、具体的な運用の方法や、このようなコツを意識するメリット・効果について解説します。
数値を入れた目標を設定する
労働安全衛生目標を形骸化させないコツとして、数値を入れた目標を設定する方法が挙げられます。労働安全衛生目標を、具体的な数値で設定する理由は、客観的に達成したかどうかを判別することです。
例えば、「労働災害をできるだけ減らす」という目標を掲げたとします。この場合、「減らすためにどういった対策が必要か」「目標を達成したか」を客観的に判断することができないのです。
一方、「ハラスメントの件数をゼロにする」「飛来・落下災害をゼロにする」という数値目標があれば、その目標が達成されたかを明確に判断できます。
目標未達だった場合でも、達成率からどのような改善を加えれば良いかを把握しやすくなります。つまり、「その対策に効果があったか、効果がなかったのか」を一目で判断することができるのです。
このため、労働安全衛生目標は可能な限り数値的な目標を掲げておくことが求められるのです。
点ではなく線を意識する
労働安全衛生マネジメントシステムの形骸化を防ぐための労働安全衛生目標を設定するには、個々の施策を独立した「点」として終わらせないことが大切です。例えば、「安全教育を実施した」「保護具を購入した」という一つひとつの行動は「点」に過ぎません。
こうした一つひとつの施策を、現状の課題から目標を立て、施策を実行し、その結果を評価して次の改善につなげるという「一連の線」としてつなげることが不可欠です。
ISO45001の監査において、「現時点でどれくらいの水準にあるか」ということよりも、「課題に対して継続的に改善できているか」というプロセスが重視されるのはそのためです。一つひとつの施策が、全体の目標達成に向けてどのように機能しているのか、というつながりを意識した運用が求められます。
定期的に見直す
定期的に見直すことも、労働安全衛生目標を形骸化させない運用のコツです。労働安全衛生目標は「立てて終わり」ではなく、その進捗を確実に把握し、必要に応じて見直しを行うことで継続的な改善につながります。
そのためには、以下の3つのポイントを運用に組み込む必要があります。
- 実行責任者の明確化:責任の所在を明確にする
- モニタリング時期の決定:施策の進捗をいつ確認するかを事前に決めておく
- 評価・改善方法の明確化:施策の評価方法や改善が必要な場合の手順を事前に決めておく
労働安全衛生目標に関するよくある質問
労働安全衛生目標に関するよくある質問をQ&A方式でまとめました。
Q:未達成時のペナルティはある?
いいえ。目標が未達成の場合に、法的な罰則やISO認証の取り消しはありません。
労働安全衛生マネジメントシステムにおいて重要なのは、結果そのものよりも、未達成だった原因を分析し、次の改善につなげることです。
ただし、未達成の原因を放置し、改善に向けた取り組みが見られない場合は、監査で不適合とされる可能性があります。
Q:労働安全衛生目標の更新頻度は?
労働安全衛生目標の更新頻度は、年に1回が一般的です。
多くの企業が年度計画に合わせて更新しますが、重大な労働災害が発生したときや新しい設備を導入したときなど、職場のリスクが大きく変わったタイミングで随時見直し・更新を行うことが推奨されます。
Q:労働安全衛生目標と個人評価は、連動させるべき?
労働安全衛生目標と個人評価を安易に連動させることは避けるべきです。
個人の査定に強く反映させてしまうと、評価を下げないために労働災害やヒヤリハットの隠蔽につながる恐れがあるからです。
評価と連動させる場合は、「災害ゼロ」という結果ではなく、「安全活動への積極的な参加」や「改善提案の提出数」など、前向きな行動指標を評価対象にすることをお勧めします。
まとめ
今回は、労働安全目標が具体的にどのようなものなのかということについてご紹介してきました。まとめると、労働安全衛生目標はリスクアセスメントを実施し、重大リスクが潜んでいると判断したものに対しての対策を実行するものです。職場の安全衛生のカギを握ることになる労働安全衛生の計画。その中でも特に重要な「目標の設定」については、組織全体を動かす重要なものですから、現場に提示されることもあります。
労働安全衛生目標は無理のない範囲でしっかりと設定するように心がけましょう。
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