• 労働安全衛生目標とは、安全衛生全般で達成したい目標のこと
  • 労働安全衛生目標は可能な限り数値的な目標であったほうが望ましい
  • 数値目標を掲げて施策の評価ができる体制を構築していく必要がある

ISO 45001に基づいた労働安全衛生マネジメントシステムと構築する上で必須となる労働安全衛生の計画ですが、その中で「労働安全衛生目標 」を作成する必要が出てきます。

労働安全衛生目標とは、労働安全衛生方針に整合する特定の結果を達成するために組織が自ら定める労働安全衛生上の目標のことです。客観的に達成したかどうか判別するため、労働安全衛生目標はできるだけ数値的であるのが望ましいでしょう。

この記事では、労働安全衛生目標について分かりやすく解説していきます。

関連記事:労働安全衛生方針ってどんなもの?

労働安全衛生目標とは

労働安全衛生目標とは、安全衛生全般で達成したい目標のことを指します。この目標は可能な限り数値的な目標であったほうが望ましいです。

労働安全衛生目標は、その職場 にある特定の安全衛生上の危害(リスク)とそのリスクをどうするのかということについて記述を行います。——もちろん、この安全目標は職場の環境によって様々なものが考えられます。

具体的には以下のような内容を記述していきます。

  • 安全衛生の達成率を85%以上にする
  • ヘルメットや安全帯の不使用率をゼロにする
  • 職場内でのハラスメントをゼロにする
  • 労働時間管理を適切に行い、残業時間を20%削減する
  • 安全意識向上のため、労働者に安全衛生教育を年間5回行う
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なぜ数値的な目標を掲げるのか

さて、先程安全衛生目標は、数値的な目標であったほうが望ましいとしましたが、それはなぜでしょうか。——それは、客観的に達成したかどうかを判別するためです。

例えば、「労働災害をできるだけ減らす」という目標を掲げたとしましょう。この例では数値目標を掲げていないため、「何をすればできるだけ減らせるのか」ということもわかりませんし、何かしらの対策を講じたとしてもそれが達成できたかどうかを客観的に判断することができなくなってしまいます。

労働安全衛生マネジメントシステムでは、労働安全衛生水準の継続的な改善が求められます。——もちろん、「うちの職場では、そんなことをせずとも経験と勘による経営で全てうまく回るのだ」という場合は曖昧な目標を掲げても問題ないかもしれませんが、その場合は労働安全衛生マネジメントシステムそのものがいらなくなってしまいます。

一方、「ハラスメントの件数をゼロにする」「飛来・落下災害をゼロにする」という数値目標があれば、その目標が達成されたかを明確に判断することができますし、もし達成できなかった場合でも達成率からどのような改善を加えれば良いかということを明確にすることができます。——要するに、効果があったか、効果がなかったのかを一目で判断することができるというわけですね。

また、「ゼロにする」のか「90%で達成」とするのかによっても、行うべき施策や重点的に管理すべき施策は変わってくることになると思います。

このため、労働安全衛生目標は可能な限り数値的な目標を掲げておくことが求められるのです。

点ではなく線を意識する

労働安全衛生目標に限った話ではありませんが、労働安全衛生マネジメントシステムを構築する上では、点ではなく線で意識をすることが重要になってきます。

特にISO45001などの第三者認証 規格 を取得する場合は、ある施策を実行して終わりなのではなく、その施策を実行して、どのような結果が得られてどのように改善しいていくことができるのかという「プロセス」が評価されることになります。

よく言われることですが、マネジメントシステムの認証規格では、「現時点でどれくらいの水準にあるか」ということよりも、「継続的に改善をしていくことができるか」ということが監査の対象となるのです。——なぜなら、マネジメントシステムとは継続的な改善を促す仕組みであるためです。

このため、労働安全衛生マネジメントシステムにおいても、数値目標を掲げてその施策の評価ができる体制を構築していく必要があるのです。また、数値を掲げて終わりではなく、実行責任者やモニタリング時期など、目標の進捗を確実に把握できるように運用することも大切となってきます。

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安全衛生目標における重点実施事項


これまで、安全衛生目標をどのような視点で設定すべきか解説してきましたが、重要な実施事項として掲げられることの多い例をご紹介します。

チョコ停

チョコ停(チョコっと停止する)とは、工場などでの作業時、設備になんらかのトラブルが発生して数分~数十分間程度の生産を停止することです。
チョコ停が多く発生した場合、生産性が下がり、品質の低下や納期の遅延が発生する可能性が考えられます。

しかし、一度のチョコ停における影響は数分~数十分程度の停止であるため、きちんと記録をつけて管理することができていない場合があります。こうした企業では、チョコ停による影響を把握できておらず、改善することができないでしょう。

チョコ停を減らし、生産性を高めていくためには、現状を把握し、改善のための対策を実施していくことが重要です。そのため、安全衛生目標のひとつとして掲げて取り組んでいる企業が多くあるのです。

ヒヤリハットの推進

ヒヤリハットとは、重大な事故を引き起こす可能性があった出来事に気づくことです。事故の一歩手前の事態に遭遇し、「ヒヤリ」とした経験や、「ハッ」とした経験のことを言います。

ヒヤリハットに関しては、事故発生についての経験則としてハインリッヒの法則が有名です。「1件の重大な事故の背景には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットが隠れている」というものです。

ハインリッヒの法則にあるように、チョコ停と同様に対策を講じていくことが求められています。しかし、ヒヤリハットを発見しても報告されることなく、そのままになってしまっている可能性があります。
ヒヤリハットについてもチョコ停と同様に、安全衛生目標のひとつとして掲げて対策を講じていくことで、事故を防止する体制を築くことにつながるでしょう。

作業マニュアルの更新

一度作成した作業マニュアルは、それで完成ではありません。
属人的な体制から脱却し、継続的な改善をする管理体制をつくるためには、定期的に作業マニュアルを見直し、更新していく必要があります。
安全衛生目標の達成のために、作業マニュアルを更新していくことは欠かせないでしょう。

まとめ

今回は、労働安全目標が具体的にどのようなものなのかということについてご紹介してきました。まとめると、労働安全衛生目標はリスクアセスメントを実施し、重大リスクが潜んでいると判断したものに対しての対策を実行するものです。職場の安全衛生のカギを握ることになる労働安全衛生の計画。その中でも特に重要な「目標の設定」については、組織全体を動かす重要なものですから、現場に提示されることもあります。

労働安全衛生目標は無理のない範囲でしっかりと設定するように心がけましょう。

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