ISO45001の規格要求事項には、「危険源」と「リスク」というキーワードが出てきます。この危険源とリスクはどういった使い分けがされているのでしょうか? 今回は、危険源とリスクの違いについて具体例を挙げながら分かりやすく解説していきたいと思います。

危険源とは

危険源
危険源とは、組織内の働く人ステークホルダーの負傷や疾病の原因になり得るもののことを指します。ISO45001ではHazardという表現がされています。

JIS Q 45001では、「負傷及び疾病(3.18)を引き起こす可能性のある原因。」という定義がされています。

これは例えば、ナイフであることもありますし、粉じんである可能性もありますし、何らかの化学物質である可能性もあります。

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リスクとは

リスクはJIS Q 45001で、「不確かさの影響。」という定義がされています。これだけでは分かりにくいかもしれませんが、先程解説した危険源によって引き起こされる要するに怪我や疾病などそのもののことを指します。

リスクと危険源の違いとは

さて、それでは危険源とリスクの違いについて具体例を挙げながら解説していきましょう。まず、リスクとは要するに怪我や疾病そのもののことであり、もう少し細かく定義するなら「労働を通じて発生する可能性のある負傷や疾病」のことを指します。そして、それを引き起こすのが危険源です。

例えばまな板の上に包丁がおいてあったとしましょう。まな板の上の包丁は、誰が見ても「使い方を誤れば怪我をする刃物」でありますから、これは危険源であるといえます。——しかし、まな板の上に包丁があるだけではリスクにはなり得ません。

なぜなら、リスクとは危険源に何らかの作用が加わることで発生する負傷や疾病であるためです。包丁が人に扱われた結果、指を切ってしまったりするのであって、まな板の上に包丁があるだけでは誰も負傷を負わないのです。

別な例を挙げれば、粉じんは危険源ではありますが、リスクではありません。粉じんは人が吸引することによって疾病を発生させるのであって、粉じんが存在しているだけではリスクにはならないからです。

つまり、危険源とリスクには因果関係があり、危険源が要因となって与える影響がリスクということになります。

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労働安全衛生リスクとは

それでは労働安全衛生リスクとはどのようなものでしょうか? これは、リスクの発生しやすさとその重大性を組み合わせたものとして使用されます。

先程解説した危険源は職場には無数のものがあります。——例えば日常的に行う機械の操作も危険源といえますし、ちょっとした段差ですらも危険源といえます。——なぜなら、操作ミスという作用が加わることによってリスクをもたらすためです。

——そういった危険源とリスクを全て洗い出し、対応していくことは、非常に大変な作業です。このため、労働安全衛生マネジメントシステムではリスクアセスメントというリスクの見積もりを行い、その重大性や危険性から優先度を決定して適切な措置を取っていくのです。

労働安全衛生機会と労働安全衛生リスク

さて、ISO45001の規格では、労働安全衛生リスクと同じような使われ方をするキーワードとして「労働安全衛生機会」というワードが出てきます。この労働安全衛生機会と労働安全衛生リスクはどういう使い分けがされているのでしょうか? それは、以下の通りです。

労働安全衛生リスク:危険源から発生し得る可能性があるものの中で、望ましくないもの
労働安全衛生機会:危険源から発生し得る可能性があるものの中で、望ましいもの

ここで注意しておきたいのが、リスクの定義についてです。前に「労働安全衛生」がつくと、リスクは組織にとって望ましくないもののみの意味合いを持ちますが、単純に「リスク」と表現される場合には、良い意味と悪い意味の両方が含まれるのです。

まとめ

今回は、危険源とリスクの違いについて解説してきました。まとめると、

危険源:リスク(怪我や疾病)の原因になるもの
リスク:労働を通じて発生する可能性のある怪我や疾病のこと

となります。

また、労働安全衛生リスクとは、リスクの重要度や危険性を組み合わせたものということになります。

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