OSHMSで求められる法的要求事項にはどのようなものがある?
労働安全衛生マネジメントシステム規格では、法的要求事項を満たすことが明示的に記載されています。この法的要求事項とは、簡単に言えば「法令を遵守すること」なのですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?
今回は、OSHMSで満たすべき法的要求事項について解説していきたいと思います。
対象となる法令
事業者が満たすべき労働安全衛生関連の法律は、その業種や作業内容によっても異なりますが、例えば以下のような法令が該当するでしょう。
- 労働安全衛生法及び関連法
- 高圧ガス保安法
- 毒物劇物取締法
- 放射性同位元素等の規制に関する法律
また、法令とは別に「組織が同意したその他の要求事項」に関しても考慮する必要があります。例えば、以下のようなものが該当します。
- 労働組合との取り決め
- 労働基準監督署の指導
- 労使協定で取り決められたもの
特に昨今は働き方改革関連法が施行されて労働基準法などの法令が一部改正され、労働基準監督署の目も厳しくなってきていますから、そのあたりについても注意しておく必要があるでしょう。
さて、ではそれぞれ具体的にどのような点に注意しておけば良いのでしょうか?
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保すると共に、快適な職場環境の形成を目的に制定された法律です。この法律によって事業者は労働者が快適かつ安全に労働できるよう、様々な措置を講ずべきであると定められています。
具体的には、
- 機械や設備による危険
- 爆発物・発火物等による危険
- 電気・熱その他のエネルギーによる危険
- 採石や荷役などの業務における作業方法による危険
- 墜落や土砂等の崩壊による危険
- ガスや粉じん、放射線や振動などによる健康障害
- 精密工作などの作業方法による健康障害
- 労働者の作業行動から生ずる労働災害
- 窮迫した危険に対する退避措置
などに対して措置を講じる必要があるとされています。
高圧ガス保安法
高圧ガス保安法は、高圧ガスによる災害を防止するために高圧ガスの製造、貯蔵、販売、輸入、移動、消費、廃棄等を規制する目的で制定された法律です。
圧縮ガス、圧縮アセチレンガス、液化ガスなどを業務上で利用するあるいは販売する事業者は特に注意しておくべき法令です。
毒物及び劇物取締法
毒物及び劇物取締法は、毒物、劇物について保健衛生上の観点から必要な取締を行うことを目的とする法令です。
毒物や劇物の定義は以下の通り。
毒物
大人換算で、2g程度が致死量のもの。
劇物
大人換算で2-20g程度を誤飲すると致死量に至るもの。
特定毒物
毒物のうち、毒性が強く、且つ一般的に利用されているもの。
こういった物質を取り扱っている事業者は注意しておくべき法律です。
放射性同位元素等の規制に関する法律
放射線障害を防止し、公共の安全を確保するために制定された法律です。この法律では放射線業務従事者が被爆する線量の限度が定められています。放射線物質を扱っている事業者は注意が必要になります。
その他労働関連法
その他の労働関連の法令では、特に最近施行された働き方改革関連法について注意しておきましょう。
特に多くの事業者に関係があるものとしては、
- 有給休暇の消化義務
- 時間外労働の上限規制
- 衛生管理の強化
の3つについて注意しておきましょう。それぞれの内容について以下で解説します。
有給休暇の消化義務
2019年の4月から有給休暇を付与される労働者(前営業日の8割以上勤務する労働者)に対しては、5日以上の有給休暇を消化させる必要があります。——これは、労働者が有給休暇を希望しなかった場合でも消化させる必要があり、従来までの付与義務とは異なるため注意が必要です。
時間外労働の上限規制
大企業の場合は2019年から、中小企業の場合は2020年から時間外労働に上限規制が設けられることになります。企業は年間720時間、複数月平均80時間、単月100時間を越えた時間外労働を労働者にさせることができなくなります。
衛生管理の強化
常時使役する労働者が50名以上の企業は、産業精神保健の観点より1名以上の産業医を配置する義務がありますが、働き方改革関連法で産業医の権限が強化されることになりました。
企業は産業医から労働者の健康管理について勧告を受けた場合、衛生委員会でその内容を報告し、適切な処置に取り組む必要があります。
まとめ
今回は、ISO45001などのOSHMS規格で取り組むべき法的要求事項について解説してきました。——とはいえ、これが全ての法的要求事項ではないため、自社の状況を振り返ると共にどのような法律が該当し、法的要求事項にはどのようなものがあるのかということについてはよくチェックしておく必要があるでしょう。
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