ISO45001におけるリスクアセスメントの流れについて理解しよう
ISO 45001規格 の労働安全衛生マネジメントシステム では、危険源 を特定してその危険源がどの程度の影響を持つのかということについて調査し、評価する必要があります。この一連のプロセスはリスクアセスメントと呼ばれるものですが、初めてマネジメントシステムを構築する場合、リスクアセスメントが何の目的で実施されるものかわからないかもしれません。
ということで、今回はISO45001におけるリスクアセスメントはどのような役割を持ち、どのようにして行われるものかについて、解説していきたいと思います。
目次
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、どのようなリスクがあるかを発見し(リスク特定 )、リスクの重要度や影響範囲を調査し(リスク分析)、リスクがどの程度の頻度で発生するのかを想定し、重要度や影響範囲を考慮してリスクのレベルを決定する(リスク評価 )一連のプロセスのことを言います。
ISO45001では、リスクとは働く人が職場 で怪我や疾病をする要因のことです。
つまりわかりやすく言うと、「働く人が、労働災害に見舞われる可能性のある要因を見つけ出し、そのリスクについて調査した上で10点満点中何点なのかを採点する」ことがリスクアセスメントです。
ちなみに採点は一例であり、その他の評価方法でも問題ありません。
リスクアセスメントの考え方とは
リスクアセスメントを行う組織がまず理解しておきたいことは、労働環境において顕在化しているリスクはすべて抽出するということです。
洗い出したリスクはすべて管理しなければならないというわけではありません。洗い出してから管理の必要性を検討し、管理する場合にはリスクにおける重篤度と事故や災害が発生する可能性の度合いによって管理の優先度を決めて、どのように管理するかどうかを検討していきます。
リスクアセスメントを行うことで、組織における事故や災害の可能性を把握できるため、リスクを低減していくための対策を取る体制づくりにつながるのです。
リスクアセスメントは何のために行われるのか
労働安全衛生という視点で物事を見ると、リスクというものは非常に多くあります。例えば長時間労働というのもリスクですし、化学薬品が体の中に入ってしまうこともリスクです。この他にも、ちょっとした段差が怪我をさせる原因になってしまうことも考えられます。
しかし、細かいところまで気にしていると何もできなくなってしまいます。このため、「そのリスクに対しては本当に対策を講じる必要があるのか?」「そのリスクはどのように対処すべきか?」ということを、合理的に判断する必要が出てきます。
この「合理的判断」を行うためにリスクが一定の基準を満たしているかということを評価する…これがリスクアセスメントの目的です。
リスクアセスメントはどのように行われるのか
リスクアセスメントは、
- リスク特定
- リスク分析
- リスク評価
の3つのプロセスによって実施されます。
リスク特定
リスク特定は、リスクを発見するプロセスです。このリスク特定では全てのリスクを特定する必要はありませんが、顕在化しているリスクを見ないふりしたり、リスクであると認識すべきなのにリスクであると認識しなかったりしてはいけません。
マネジメントシステム構築の初期段階で定めた労働安全衛生方針からブレないように心がけると良いでしょう。
リスク分析
リスク特定によって発見したリスクがそれぞれ、
- どの程度影響のあるものか
- どの程度の影響範囲があるのか
- どの程度の頻度で発生するのか
ということを分析します。可能であれば定量的な基準を持ってリスクを分析することが望ましいでしょう。
リスク基準の設定方法
ISO規格ではリスク基準の設定について定めてはいませんが、最低限評価すべき要素が2点あります。
- リスクにより発生した事故や災害の重篤度
- リスクにより事故や災害が発生する可能性の度合い
代表的な手法には、この2点を表の縦軸と横軸に据えて、あらかじめリスクの点数を割り振っておき、リスクの基準を設ける方法です。
事故や災害の重篤度 | |||||
---|---|---|---|---|---|
致命的 | 重大 | 中程度 | 軽度 | ||
事故や災害が発生する可能性の度合い | 極めて高い | 5 | 4 | 4 | 3 |
高い | 4 | 4 | 3 | 2 | |
可能性あり | 4 | 3 | 2 | 1 | |
ほぼない | 4 | 3 | 1 | 1 |
点数 | 管理の優先度 | |
---|---|---|
5~4 | 高 | 即時、リスク低減措置を取る/作業を停止する |
3~2 | 中 | リスク低減措置を取る/できる限り作業を停止する |
1 | 低 | 必要に応じてリスク低減措置を取る |
例えば、工場内でのフォークリフトの運搬作業における以下のリスクを抽出したとします。
「フォークリフトにボックスパレットを高く積みすぎていて、視野が遮られたことで前方にいた従業員に激突し、大怪我を負わせる」
先ほどの表をもとに点数を割り振り、リスク評価を行って、リスク低減措置を取る優先度を決めていきます。大怪我につながるため重篤度は「致命的」、発生する可能性も「極めて高い」ため、「5」で即時リスク低減措置を取る必要がある、といった具合です。
ご紹介した例は最低限の要素によるリスク基準です。組織に合わせたリスク基準を決定したうえで、リスク評価を行っていきましょう。
リスクアセスメントを行ったら
リスクアセスメントを行ったら、その結果については文書化しておきましょう。
- リスク特定によって発見した危険源のリスト
- リスク評価の結果
- リスク分析の結果
これらはマネジメントレビューでも活用することができる文書です。
また、リスクアセスメントは一回行ったらそれで終了というわけではありません。組織の状況の変化によってリスクは変化するためです。定期的にリスクアセスメントを行うためにも、文書化して過去の記録として残しておくことが望ましいでしょう。
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