ISO45001認証を取得することで得られるメリット5選
- ISO45001の取得は社内外の人間が安全で安心して働けるようなマネジメントシステムの継続的な改善が可能となる
- ISO45001は人的資源や経済的資源に依存しないため、無駄なコスト投下が減る
- 顧客・従業員・近隣住民などから「労働安全衛生管理」に対する信用を獲得できる
- 「この会社はISO規格を取得してまで労働者の安全を守ろうとしています」とアピールすることで、採用活動を有利に進められる
- すでに雇用している労働者と企業の信頼関係醸成につながる
ISO 45001は労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格 です。日本でも働き方改革関連法施行によって経営者の関心なども高まってきました。そこで知りたいのは、ISO45001を導入することで企業にとってどのようなメリットがあるのかでしょう。
そこで、今回はISO45001の概要やメリット・デメリット、取得企業をわかりやすく解説します。
目次
ISO45001とは
そもそも、ISO45001とはどのような規格なのでしょうか。ここでは、ISO45001の概要や制定の背景を解説します。
ISO45001は労働安全衛生に関する国際規格
ISO45001とは、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS
:Occupational Health and Safety Management System)に関する国際規格です。
労働環境を適切に管理することで、負傷や疾病といった労働災害などの
危険源
を排除する仕組みづくりに活用されています。
労働環境を改善し、従業員が安全に働けるようにすることは、企業の社会的責任の一つとして認識されるようになりました。そのため、多くの企業がISO45001を取得しています。
ISO45001の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO45001制定の背景
1990年代の労働安全における規格は国内規格が一般的でした。その中で初めての世界的な労働安全衛生基準として、1999年に各国の規格を参考に、OHSAS18001(Occupational Health and Safety Assessment Specification)が普及しました。
しかし、2001年にILO(International Labour Organization:国際労働機関)がILO労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン(ILO-OSH2001)を公表。このように複数の規格やガイドラインができてしまったことで、国際基準となる新しい規格の発行がISOに求められたのです。
そして、これまでの法令や規則などと整合性をもった国際規格として2018年に発行された認証規格がISO45001なのです。日本の代表的な労働安全衛生関連の法規制には、労働安全衛生法があります。ISO45001を取得する際にはこのような法規制を順守できるように対応することが求められます。
JISQ45001、OSHMSとの関係性
JISQ45001とはISO45001を日本語に翻訳したうえで、日本独自の要求事項を追加したJIS規格(日本産業規格)です。両者は国際的に同等の規格として承認されているため、同じ意味で使用されます。
OSHMSは、労働安全衛生マネジメントシステムのことです。言い換えると、「職場
の安全と健康を管理する仕組み」といえます。
一方、ISO45001はOSHMSの国際規格です。つまり、自社が「職場の安全と健康を管理する仕組み」を構築・運用していることを証明してくれるものがISO45001となります。
OSHMSの概要や特徴は、以下の記事をご覧ください。
ISO45001を取得することで得られるメリット
ISO45001は企業のステークホルダーである社内外の人間が安全で安心して働けるようなマネジメントシステムを構築する一助となるものです。もちろん、労働安全衛生マネジメントシステムを構築してISO45001を取得しないということもできるのですが、規格を取得すると以下のようなメリットを受けられます。
- 労働安全衛生リスクの低減
- 社会的信頼の獲得
- 従業員満足度の向上
- 採用活動で有利に
- 官公庁入札案件での加点対象に
- 保険料にかかる経費の削減
- 取引先の拡大
- 離職率の低下
以下では、それぞれについて解説していきましょう。
マネジメントシステムの継続的な改善
ISOのマネジメントシステムに関する規格というのは、いずれの規格も「マネジメントシステムの継続的な改善」が重要なキーとなります。要求事項ではPDCAサイクルを回すことが重視されているため、労働安全衛生マネジメントシステムを継続的に改善していくことが可能になります。
経験と勘によるマネジメントシステムから脱却し、ISO規格に準じたマネジメントシステムを構築することは、結果として企業や事業所のメリットになるでしょう。
労働安全衛生に関わるコストの削減
ISO45001規格に準じたマネジメントシステムを構築することで、管理やマネジメントシステムの改善がしやすくなるため、無駄な人的資源や経済的資源へのコスト投下を減らすことが可能です。
ISO45001による労働安全衛生マネジメントシステムは、人的資源や設備に依存しないものです。継続的改善によって、業務の無駄なコストのカットや適切な人材配置につながります。
人や資源に依存しないマネジメントシステムを構築しておくことで、長期的なコスト削減が期待できるのです。
社会的信頼の獲得
近年は労働に対する企業の不誠実な対応に関する世間の目は厳しくなってきています。不祥事は、「管理不足」としてまたたく間にインターネット上に企業の悪評が拡がることも、珍しくありません。
一方で、労働者に対して誠実な取り組み(安心・安全で働ける労働環境の提供など)に対する世論のプラスイメージは非常に強力です。
ISO45001規格は、国際的な労働安全衛生マネジメントシステムに関する規格であり、第三者認証によって取得することが可能な規格です。つまり、ISO45001を取得している企業は、ISOから「労働安全衛生」に関するお墨付きをもらえるということになるのです。
つまりISO45001を取得することで、顧客・従業員・近隣住民などの様々なステークホルダーから信用を獲得することができるというわけです。
採用活動で有利に
企業の労働に関する不祥事から、日本の労働者は「安全・安心な職場で働きたい」と考える人も多くなっています。
そのため、ISO45001を取得していると「この会社はISO規格を取得してまで労働者の安全を守ろうとしている」ということを求職者にアピールできるため、採用活動を有利に進めることにつながります。
「実際働いてみたら過酷な職場で健康を害した」という意見も多くあるため、求職者に安全を訴求できるというのは、非常に大きなメリットになるはずです。
労働者満足の向上
職場の労働安全衛生環境を整えることは、これから採用をする新たな労働者だけでなく、すでに雇用している労働者にとってもメリットがあることになります。
「会社が労働者を守ろうとしてくれている」「私たちも会社のために頑張ろう」という労働者と企業の信頼関係醸成の一助にもなります。労働者満足の向上は、自社の人材を確保し、生産性向上にもつながるでしょう。
ISO45001を取得・運用するデメリット
それでは、ISO45001を取得・運用することによるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ISO45001を取得・運用するデメリットを解説します。
文書管理する手間が増える
ISO45001の要求事項を満たすには、文書化が必要なものがあります。また、OHSMSを構築するうえで新たにマニュアルや管理方法を策定した際には、文書作成する機会も増えるでしょう。
他にも運用時には日常業務における記録を作成することが必要です。これまでは口頭のみで行っていた確認も記録する場合があるでしょう。
また、文書は作成して完了ではなく、適切な保管・管理も求められます。文書化により、文書作成や管理をする手間が増えてしまいます。
維持に労力と費用がかかる
ISO認証取得は、取得後も運用・維持に労力と費用が必要です。というのも、ISO45001認証を取得したあとも、「構築・運用したOHSMSは有効に機能しているのか?」「ISO45001の要求事項を満たしているのか?」を確認するために、定期的な審査があるためです。
審査があることでOHSMSの形骸化を防げるという利点もありますが、審査の準備や対応に労力がかかります。また、審査料も必要であることはデメリットといえるでしょう。
ISO45001の取得企業
ISO45001の取得企業数は、公益財団法人日本適合性認定
協会(JAB)の「
適合組織検索
」から調べられます。
2023年12月18日現在では、292件の企業がISO45001を取得しています。2018年に発行されたばかりの新しい規格であるため、知名度や取得件数はあまり多くありません。ただし、労働安全衛生に関する社会的なニーズは高まっており、取得件数自体は年々増加しています。
労務中の労働災害が発生しやすい建築・建設業や製造業、産業廃棄物業などの業種では、特に取得することがおすすめです。
ISO45001の取得企業数の詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
労働安全衛生マネジメントシステムを構築し、ISO45001規格を取得することは、様々なメリットがあります。しかし、自社に見合わないマネジメントシステムを構築してしまうと、事業を円滑に進めるためにあるはずのマネジメントシステムが逆に重荷になってしまうこともありますので、注意しましょう。
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