ISO45001を取得したほうが良い業種とは?
労働安全衛生マネジメントシステムの国際認証 規格 である ISO 45001。認証を取得することで官公庁入札案件の加点対象となったり、組織の採用活動での優位性をアピールすることができたりと、様々なメリットがある規格でありますが、具体的にISO45001はどのような業種で取得したほうが良いとされているのでしょうか?
今回は、ISO45001のメリットを踏まえて、認証を取得したほうが良い業種について解説していきたいと思います。
目次
ISO45001の取得企業数は?
ISO45001は、日本国内や世界でどれくらいの企業が取得しているのかご紹介します。
国内
日本国内における最新のISO45001取得企業数を確認したい場合には、 公益財団法人日本適合性認定協会(JAB) のホームページから確認することができます。2022年9月現在で230以上の企業がISO45001を取得しています。
ISO45001は、2018年に発行されたばかりの規格のため、取得企業数は多くなく、他の規格よりも認知度は低いかもしれません。しかし、労働中の事故や災害におけるリスクを排除する仕組みを構築するという重要性から、取得数は年々増加しています。取得企業の中には「日本製鉄」などの大手メーカーも取得しているため、ISO45001は今後も普及していくことが見込まれています。
世界
世界全体における最新のISO45001認証件数を確認したい場合、 ISO本部のホームページから確認することができます。2021年のデータでは、29万件以上の認証件数となっています。
取得した企業名や企業数については非公開となっていますが、業種ごとの認証件数を確認することはできます。以下、取得が多い10種(その他のサービスや業種が不明な件数は除く)の業種をまとめました。
順位 | 業種 | 2021年の認証件数 |
---|---|---|
1 | 工事 | 61,101 |
2 | 卸売および小売業、自動車の修理、オートバイ、個人および家庭用品 | 38,617 |
3 | 電気・光学機器 | 26,770 |
4 | エンジニアリングサービス | 26,009 |
5 | 金属製品 | 24,321 |
6 | 機械・機器 | 20,693 |
7 | 情報技術 | 15,908 |
8 | ゴム・プラスチック製品 | 9,603 |
9 | 輸送、保管、通信 | 6,714 |
10 | 化学物質、化学製品、繊維 | 6,391 |
( ISO本部ISO Surveyのfull Survey dataの2021年データのからの集計)
データを見ると、日本と同様に建築業、製造業などを中心に取得されています。
2020年からの1年間で認証件数は9万件以上も増えており、世界的に見ても安全衛生は重要性が高い課題であると言えるでしょう。
ISO45001を取得したほうが良い業種
結論から述べると、下記のような業種については取得するメリットが大きいと考えられています。
- 建築、建設業
- 製造業
- 産業廃棄物業
また、上記以外にも、採用活動を有利に進めるために、以下のような世間一般的に「大変な業界」と認識されていたり、人的資源を扱ったり、人的資源が企業資産であったりする組織でも取得するメリットがあるでしょう。
- IT関係
- 広告業界
- 人材派遣業界
以下では、上記を踏まえながら、なぜISO45001を取得することが良いとされているのかということについて解説していきたいと思います。
ISO45001を取得するメリットとは
ISO45001を取得するということは、労働安全衛生マネジメントシステムを構築するということでもあります。このため、認証そのものの効果だけでなくマネジメントシステム構築のメリットを得ることもできるのです。こういった視点でISO45001を取得するメリットを列挙していきたいと思います。
労働安全衛生リスクの低減
言わずもがなですが、労働安全衛生マネジメントシステムを構築することで、組織は労働安全衛生リスク を低減することが可能になります。また、その労働安全衛生リスクについて、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していくことができます。
組織の構成員の疾病や怪我を回避し、効率的に従業員の健康を管理するということで労働安全衛生リスクを低減します。思わぬ事故やヒヤリハットを回避し、結果的に事業の長期継続が可能になるというわけです。
従業員の満足度向上
労働安全衛生に対して組織が積極的に取り組むことは、従業員の満足にもつながるでしょう。「少しでも安全で健康に労働をしたい」というニーズは、その程度は個人によって差はあるかもしれませんが、どのような労働者であっても持っているものです。
戦後の高度経済成長を支えた日本的経営の3本柱からもわかるとおり、「組織が守ってくれている」という安心感は必ず従業員満足にもつながり、それは組織の長期的な利益にもつながるでしょう。
また、従業員満足度の向上は、組織の人材定着率の向上にも寄与すると考えられます。そして、人材定着は組織の長期的に安定的な経営にもつながることになるでしょう。
採用活動の好影響
ISO45001を取得するということは、「うちの会社は社員の労働環境改善について積極的です」というアピールをすることにもなります。確かに、ISO45001の規格そのものは、世間的に浸透しているものではないですが、「こういう取り組みをしていて、第三者機関からも認められている」とアピールすることで、少なからず採用活動には影響するでしょう。
特に一般的に激務だとされる業界においては、求職者も多少なりとも労働環境について警戒をしているはずです。
取引先からの信頼向上
近年はインターネットやSNSの普及によって世間の目が厳しくなっています。このため、「安全性」や「信頼性」というのは取引を開始するときにも考慮すべき一つの要因なのです。皆さんもなにかの作業や納品を外部業者に委託する時に、「問題のある組織との取引は避けたい…」と感じますよね?
こういった視点からも、ISO45001のような第三者認証を取得することは、取引先の信頼向上にもつながると考えられるのです。
官公庁案件の入札加点対象に
主に土木・建築・建設業ではISO9001やISO14001が官公庁案件の入札加点対象となるため、取得されることが多いですが、ISO45001も入札加点対象となることがあります。
ISO45001取得におけるよくある質問
Q. ISO45001 とOHSMSの違いとは?
A. ISO45001は、そのOHSMSに関する国際規格です。一方、OHSMSは労働安全衛生マネジメントシステムのことであり、労働災害などのリスクを排除するための仕組みのことです。両者の違いを一言で表すと規格か、仕組みかということになります。
Q.ISO45001とOHSASの違いは?
A.OHSASは、労働安全衛生システムを構築・運用していくための国際規格で、ISO45001の前身の規格とも言えます。2021年3月に失効され、ISO45001への移行が行われました。
Q.会社で死亡事故が発生した場合、ISO45001の取得は可能ですか?
その事業者が労働安全衛生法や、それに基づく命令に違反して罰金以上の刑に処せられた死亡事故だった場合、執行が終了してから2年が経過していないと欠格事項に該当し、認証を受けることはできません。刑に処せられなかった死亡事故の場合には、認証を受けられないということにはなりません。ただし、審査時には運用や管理の体制に問題がなかったかどうかは特に見られることになるでしょう。
まとめ
今回は、ISO45001のメリットを踏まえながら、どのような業種で取得することが良いとされるのかということについて解説してきました。上記で解説した以外にもISO45001のメリットは様々ありますので、認証取得に迷っている場合は、マネジメントシステムの構築でどのようなメリットがあるのかということを今一度洗い出して見てはいかがでしょうか?
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