フィードフォワードのない「想定外!」

2018年9月の北海道の地震によるブラックアウトでは、「想定外」の言葉が聞かれました。

2011年3月11日、東日本大震災が日本列島を襲いました。津波の凄まじさ、原発事故の先の見えない不安、筆舌に尽くせない被災状況、2万人を越える死者不明者、自然の猛威をとことん実感させられました。原発事故での「想定外」の連発は原発でのリスクベースシンキングのお粗末さを露呈していました。

コンサルティングをやっていてつくづく感じるのは、訳語が分かりづらいこともあり、取得しようとする組織の要員が規格 を読んでいないということです。それでいてISO への先入観があり、ISOとは文書化が大変なものだと「想定」してしまっていることが多いのです。

だから規格の意図を8つの原則(2015年版から7つ)の実行であり、標準化・文書化が目的ではないこと、手順化と手順の文書化は別物であることを説明すると、「想定外」と口をそろえます。

さてリスクベースシンキングとは、不確かな事象に対処するため予め準備するというフィードフォワードの思想です。 防災対策はもちろんのこと、組織経営の根本的かつ最大のテーマで、「想定外」を作らないフィードフォワードの基本であるはずです。

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経営リスクは絶好の機会

ISO認証 制度の現状もこの状況をよく反映していると感じました。規格の意図の根本がフィードフォワードにあることを、一切触れずに来てしまっているからです。

このままでは規格の意図を生かしきれず、優秀だった現場が経営戦略から切り離され、監査では現場の「重箱の隅をつつく」形式的な指摘ばかりで、どの組織もフィードフォワードがうまく機能しないまま、経営の将来システムが働かないのではないか。

つまりISO9004で言うビジョンやミッションが、マネジメントシステムのなかで無視され、経営テーマとしてのリスクへの事前対応という戦略的で創造的な組織運営 にも、さらに 創造性コードという組織学習を促し将来システムを活性化する機能の発動 にも、ISOマネジメントシステムの現状の方法では導けない結果に終わる、という危惧です。

フィードバックの逆発想

本論考で言う「フィードフォワード」とは、結果を原因側に戻して調節する、よく言うフィードバックの逆で、「結果の前に原因側で最良の状態にすること」を意味します。つまり問題が起きてから処置をするのではなく、不確実が起きても対処できるように事前に原因要素に対して「想定外」のない最善の取り組みをしておくということです。

経営リスクを未然に防ぐための、財務管理、品質管理、労働安全衛生、製品安全、食品安全、プロセス環境活動、製品環境活動、不良品率低減、エネルギー管理、情報セキュリティなど、すべてフィードバックではなくフィードフォワードのマネジメントです。 また「創造性コード」とは、規格に隠されている将来システムを動かす創造性を発動させる仕掛けコードです。

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品質保証に将来システムをプラス

マネジメントシステムの法思想がISOの規格に取り入れられたのは、ISO9001 :2000からです。1994年発行の品質 の第2版の国際規格は、「品質保証システム」でした。

だから今でも認証機関の名称には、QA(Quality Assurance)、「品質保証」を冠したものが多いのです。 品質保証システムがマネジメントシステムへと拡大したのには、求められる結果を出すための組織は、例えば品質であればそれを保証するプロセスだけでは不十分だ、と結論づけられたからであると私は考えます。

保証することは一部であってそのプロセスを含む全体のシステムが必要だ、ということです。 マネジメントシステムという語句の定義をISO9000:2005で見ると、3.2.2に以下のような記述があります。

マネジメントシステム(management system)方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム。」とあり、3.2.8には「品質マネジメント(quality management)品質に関して組織を指揮し、管理するための調整された活動
【出典】JIS Q9000:2006(3.2.2 マネジメントシステム)

また、その注記には指揮及び管理には、品質方針及び品質目標の設定、品質計画、品質管理、品質保証及び品質改善が含まれる。 とあります。そして3.2.11には品質保証(quality assurance)…品質マネジメントの一部。 とあり、品質保証は品質マネジメントシステムの一部のプロセスであることが明記されていました。

「将来システム」とは、ブレイクスルー思考法で言うシステムの次元の一つで、組織の将来に関わる次元の仕組みです。つまり2015年版の「機会」(opportunity)への取り組みのことです。品質保証のシステムに将来システムを明確にプラスするということです。

品質保証を評価する1994年版を改定へ

品質保証システムからマネジメントシステムになぜ変わったのでしょうか。それは品質保証のための計画と管理と評価をいくら徹底させても、必ずしも組織の存続と発展に結びつかず、むしろ品質が品物という「物」の質に偏ってしまって、「物」が良いことが全てであるといった間違った認識を招いてしまったからでした。

「モノづくり」の質の高さはもちろん標榜するべきことでありますが、物に偏ったら顧客が見えなくなってしまったという弊害が表われたのです。例えば「我が社の製品の品質は最高のものだから、我が社の製品を買わない客はありえないし、いたとしたら大馬鹿だ」といった自惚れでした。

もちろん品質保証システムの1994年版にも、品質の方針・目標・計画・管理・保証・評価・改善の各プロセスについて要求事項がありましたが、重心は製品保証のための計画と管理とその評価であったのです。それに対して2000年版は経営者の責任を強化し、マネジメントシステムの概念を中心に置くことによって、方針と目標の達成に重心が移動したのです。

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現場のプロセス+組織横断的PDCA

品質保証のための計画と管理は現場レベルのプロセスです。つまり品質保証プロセスは現場のプロセスなのです。特に製造業の場合、現場は顧客との接点がない場合が多く、作る物の質にしか視野がないと、顧客が見えなくなることがあることは当然といってよいのですが、その結果、良い製品を作れども売れず、存続の危機に直面する、という事態でした。

こうした危機を回避できるのは経営手腕だけです。つまり経営者がコミットメント=心血を注いで専念すること によりその責任を全うし、方針のもと目標を達成せしめること、マネジメントレビュー を通じて組織横断的PDCAサイクルを回すこと です。これがマネジメントシステムのはずです。 次講座 ではナレッジマネジメント の組織運営について論じます。

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