プロセスアプローチとブレイクスルー思考

プロセスアプローチと同じ構造の、ブレイクスルー思考について、ナドラー名誉教授の理論に沿ってその骨子を確認します。教授の授業を私は二回受講しています。なお理論の確認は教授と共同でこの思考法を開発した日比野省三と梶原拓の共著の「ブレイクスルー」によるものです。

カリフォルニア大学のJ.ナドラー名誉教授が提唱する「ブレイクスルー思考」は、同教授が1960年代に提唱した「ワークデザイン」の考え方を発展させたものです。

「ワークデザイン」の考え方は日本にもすでに多くの研究者・実践者がおり、独自の発展を見せ、企業革新や地域開発の手法としてコンサルタント会社がこれを用いて指導し実績を残しています。この考え方はその名の通り、仕事=ワークの、組み立て方=デザインの方法論でありますが、一貫して流れているものは、問題を現状分析からではなく「目的から考える」、というスタンスで、プロセスアプローチと同じです。「ブレイクスルー思考」も、目的から考えることを軸に、問題発見から問題解決に至る思考方法を、体系的に順序立てて示したものだと言っていいでしょう。

わずか5%の天才が自然とやってきた思考方法を解き明かし、多くの人々が思考の道具=ソフトウェアとして使えるようにしたものであるのです。ここで示されている原則にしたがって考え方を進めて行くと、それまでとは違った天才的な視点から考え方を組み立てられ、高次元のレベルで問題解決に至れるというわけです。

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デカルト的要素主義の構造を批判

ブレイクスルー思考はまずデカルト的思考の要素主義を批判します。J.ナドラーによるとデカルトの仮説の構造は次のように整理されます。

  1. 万物は要素に分解できる。
  2. 要素は置き換えが可能である。
  3. 要素問題を解決すると全体の問題が解決する。
  4. 要素の総和が全体である。

この仮説は近代の科学的思考の最も重要な枠組みでした。近代科学の発展はこの仮説が16世紀に神の思考をブレイクスルー=突き破って、思考の枠組み=パラダイムを転換したところから始まったからです。科学革命を起こし、産業革命を導いて、現代の文明、20世紀的世界を作り上げた根本のパラダイムはデカルト思考であると言っていいでしょう。

1980年代の終わりにこのパラダイムは壁にぶつかりました。現状を分析し、仮説を立てて実証するデカルト的思考では、もはや未来が見えてこなくなったのです。今までの延長線上にこれからの未来はありません。過去や現状を分析し、類似の事例を分析しても、未来が見えてこないということは、思考のパラダイムが大きく変わろうとしている、つまり時代の変革期であるということです。モザイクテオリー=要素主義の近代のパラダイムに取って代わる思考法は、フルスペクトルのブレイクスルー思考であるとナドラー教授は提唱します。つまりブレイクスルー思考は、21世紀に新しい世界を構築するための、思考の新しいパラダイム=枠組み=思考の構造なのです。改革のための思考方法なのです。

全体を見る定義「万物はシステムである」という法

全体を個々の要素に先立ってみるという考え方は、構造主義、ゲシタルト心理学、そして東洋思想にも通じるものです。

例えば人体の組織のような有機体は、分解はできないし要素の置き換えもできません。人体を含めてあらゆる有機体はそれぞれがそれ自身の全体の中にあり、その存在そのものがユニーク=ひとつだけのものである、ということを前提にします。この世界はひとつひとつの要素に分解できるものではなく、全体そのものにこそ真実がある。ブレイクスルー思考は全体を見る定義として「万物はシステムである」という法=世界観を提示しました。

システムとは複数の要素を持ち、要素は相互に連動して「目的」と「機能」を持ちます。この「目的」を手がかりに、全体のなかにある特定の問題に取りかかることで、未来の再定義ができ、問題解決の「特定解」を得ることができるとしています。

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ブレイクスルー思考法の7つの原則

(1)ユニークネス

ひとつの会社という組織はその存在そのものがユニーク=ひとつだけであるという前提に立つ。ユニークであるから、他の成功例を見習っても成功するとは限らず、ユニーク性に立脚した方法を見出して初めて成功する、と考える。

(2)目的展開

「目的」に着目する。社会システムとしての組織は「目的」を持っている。定款や社是などに書かれていたり、経営理念として掲げられていたりするが、ブレイクスルー思考はこの「目的」の再定義から始める。「真の目的」は何かを問い直すのである。この作業を「目的展開」という独特の方法で行なう。(あとの講座で詳述)

(3)先の先を見たあるべき姿

目的展開で発見された組織の真の目的=ユニークな着眼目的を軸に、「先の先を見たあるべき姿」を描く。真の目的が実現される時はどのような姿であるべきか、ということである。10年後、20年後、さらには50年後の姿だ。このあるべき姿の未来から逆に現在を考えるのである。

(4)システム思考

あるべき姿から考えた実現可能な近未来=およそ5年後の姿を描く。これをシステムとして組み立てることを考える。この時システムマトリックスを用い、システムを完璧なものにして行く。(あとの講座で詳述)

(5)目的に適った最小限の情報収集

デカルト思考ではどの要素に問題があるかを探すためにあらゆる情報を要求し、かなり無駄な情報収集に心血を注ぐということがよくあった。ブレイクスルー思考ではまず「真の目的」が再定義されるからその目的に適った最小限の情報収集に限定できるということである。

(6)参画・巻き込み

組織の中の、一握りの特別チームが行なうのではなく、多くの要員を参画させ、全関係者を巻き込む組織戦略を取る。

(7)より大きな目的からの継続的なプル

あるべき姿が再定義されているので、常にこの目的から継続的に引っ張り上げることができる。つまり、真の目的達成のために、常に実現可能な近未来を描き直し、未来へ未来へと組織をプル=引っ張りあげて行けるのである。 ブレイクスルー思考7つの原則とプロセスアプローチを考えます。

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