マネジメントシステムは経営の道具

追求し、目指す目標の達成、そのためのPDCA方法論とさまざまな管理技術、提供する製品やサービスと用いるプロセス、それらに基づいて構築され運用されるのが、組織それぞれの経営の道具であるマネジメントシステムです。

規格5.2.1 品質方針の確立にはa) 組織の目的及び状況に対して適切であり,組織の戦略的な方向性を支援する。 とあります。

マネジメントシステムの方針も、さらに上位の経営理念もありきたりの組織が多いと感じます。組織の目的の定義がありきたりで、戦略的な創造性がないからです。コピーライターの私はトップの戦略的で創造性ある事業シナリオを、そこで表明されている言葉を整理しなおして、創造性の表現ができる新しい文章にしてコンサルティングで提供することにしています。

マネジメントシステムの最大の目的は経営目標の達成でありますから、理念や方針が表現によって社員にどう伝わるかは重要なことなのです。

トップの創造性あるメッセージは、社員の共感を得て意欲を引き出し、未来志向、発展志向の目標を設定させます。自分たちの伸び代を見つけ出し、これを伸ばすことにより組織の未来を開こうとします。こうした活動があってこそ組織は存続し発展するのです。

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規格にもPDCA方法論

各階層の個々の目標を達成することで、その積み重ねによって全体の方針を実現し、社会的な役割である組織の目的を実現して、トップの思いを遂げさせる、それが存続と発展の条件です。その個々の目標達成のために、PDCA方法論と改善技術があります。

PDCA方法論を2015年版規格で確認しておきましょう。

PDCA サイクルは,あらゆるプロセス及び品質マネジメントシステム全体に適用できる。
PDCA サイクルは,次のように簡潔に説明できる。


Plan
システム及びそのプロセスの目標を設定し,顧客要求事項及び組織の方針に沿った結果を出すために必要な資源を用意し,リスク及び機会を特定し,かつ,それらに取り組む。

Do
計画されたことを実行する。

Check
方針,目標,要求事項及び計画した活動に照らして,プロセス並びにその結果としての製品及びサービスを監視し,(該当する場合には,必ず)測定し,その結果を報告する。

Act
必要に応じて,パフォーマンスを改善するための処置をとる。

【出典】JIS Q9001:2015(図2 PDCAサイクルを使った、この規格の構造の説明)

個々の部署のルーチンプロセスも、またその目標達成のプロセスも、この定義のPDCA方法論が適用できるのですから、ルーチンプロセスも組織の目的に対して適切でなければなりません。

組織横断的な包括的PDCA方法論は科学的アプローチです。 科学的アプローチとは、仮説→実行→検証→改善のプロセスが一般モデルですが、それは仮説に基づく計画→計画の的確性・妥当性の確認→計画の実行→計画実行の監視→実行された活動の経過とその結果の検証→計画から結果までのレビュー→計画の修正または是正及び改善のプロセスであり、規格が推奨するPDCA方法論 です。

ISOマネジメントシステムはナレッジ経営の仕組み

思いを未来に反映させる事業シナリオによるマネジメントは、ナレッジ(knowledge)マネジメントです。事業シナリオを方針にし、方針を具体的な目標にし、これを達成する行動に結びつける、目的→方針→目標→達成のシステムであるISOマネジメントシステムは、すぐれてナレッジマネジメントのシステムなのです。

方針と目標は文書化が求められています。文書化とは文字通りまず言葉を用いた表現にすることです。ただし規格では、文字に表現されたものだけを文書とは限定していません。写真や映像、要するに意味や意図が伝えられるものは媒体を問わず、すべてを文書としています。

意味や意図を伝える行為、それは知的行為、ナレッジの行為です。人々の知識、認識、理解を言葉=言語=文書によって確かなものにする活動です。方針によるマネジメントはこの活動をマネジメントすることで、ここではリーダーシップにおける、方針と目標の管理について論じたいので、「ナレッジ経営」という言い方で行きます。

例えば品質方針はどのようにして創られるべきでしょうか。それは組織の品質についての全体的な意図及び方向付けでありますので、組織の目的や役割、さらに戦略性に適切でなければならない、と規格は求めています。組織の目的は組織が置かれている社会環境と市場環境、その理解、課題認識によって決定され、あるいはまた変更されます。

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組織トップの知の結集と止揚

組織トップはその市場環境の中で何を意図し、何を目指すのか、どんな価値を創造し社会にそして市場に提供しようと考えるのかによって組織の目的を決めますが、その目的を実現するために適切な方針を創って表現しなくてはなりません。

方針作成のプロセスは、トップによる知の結集と止揚です。社会環境と市場環境の現在および未来に関するさまざまな知識を結集し、事実に基づき、吟味し、直観を働かせて判断をして、自らが率いる組織の将来の目的と活動ドメインを決定する、それを言葉に表すと経営基本方針=経営理念=意図する結果の表明となります。その達成のための組織の能力についての課題や利害関係者のニーズと期待も明らかにします。

品質方針はこれに基づいて作成されるわけですが、決定した目的を活動のドメインで実現するには、製品の品質についてどのような意図と方向付けが適切かを判断する、やはり知識を結集し止揚するプロセスがあります。

これらのプロセスはトップ一人または経営層で行なうことが多いと思います。しかし7つの原則の「人々の参画」を考慮すると、方針策定プロセスに幹部及び中堅の要員を参画させることは有意義で、方針によって枠組される目標の作成には幹部もしくは中堅が携わるでしょうし、また参画することによる士気の高揚も効果が大きいからです。

方針策定プロセスは、トップが主導し幹部及び中堅の要員を参画させ、目標管理のリーダーシップを確立する、これが目標管理における源流管理のナレッジ経営です。

次講座では組織に内在する知識について論考します。

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