マネジメントシステムはマニュアル化ではない

何でもかでも標準化 で個性を失う例は、ISO をかつてのQC活動のように、作業標準を作るものと決め込んでいるもので、PDCAのPの前にS=標準までくっつけますので、QC時代のように、なおさら創造、変革の掛け声は空しくなってしまいます。マニュアル大好きマネジメント、いまだにISOは 文書化マニュアル化 だと思い込んでいる人は多いのです。

ISOは“自律多様”のマネジメントシステム であって、TQCやTQMではありません。“命令による統制”ではないのです。かつてTQCは、縦軸の垂直命令系統、縦型の一次元管理で機械的世界観のコントロールと批判されましたが、これに陥らないようにしなければならないのです。

ISOの規格 要求事項はIS=国際標準です。しかしISOのマネジメントシステムの規格は標準化を求めていません。仕事をプロセスの連なりとして捉え、それらのプロセスの相互関連性を明確にし、システムとして組織のパフォーマンスを継続的に改善する仕組みを、どのようにするか求めている のです。目的は、 標準化することではない のです。

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ISOマネジメントシステムは目標達成システム

経営の道具としてのマネジメントシステムの中心核は、達成すべき目的であり、どのような社会的価値を創出し、市場に、社会に、世界に提供するのか、という目的です。それは社会システムとしての役割をも決定します。

市場や社会の環境と状況の中で自らの目的と役割を決定し、その役割を果たし目的を達成することが、社会的存在としての組織の使命です。その活動が経済を支え、人々の生活を支え、関係する人々に幸福をもたらすはずです。

目的達成の結果として利益を得て、組織に参加し関係した人々に分配し、国と地方に税金を納めて国と地域社会を豊かにする、それが現代世界における社会システムとしての組織のあり方です。そのあり方の維持と発展のための優れた経営の道具が、ISOマネジメントシステム規格です。社会と組織のより良い関係の持続と発展はより良い組織を作り、参加している要員をも幸せにします。カスタマーサティスファクション(CS)からエンプロイーサティスファクション(ES)へ、であるのです。

環境の生き物はPDCAサイクルで未来をつかむ

実際に設定されている方針と目標で、最もありがちな形が、「方針=品質 第一、目標=不良品の流出ゼロ、もしくはクレームゼロ」です。品質保証システムであればこうした形はごく自然であるし重要なテーマでありますが、マネジメントシステムの方針と目標はもっと発展を意図したものであるはずです。なぜならば、組織の目的は将来どのような価値を創出しようとしているのかという、ビジョナルな形で設定されるべきであるからです。

市場環境 の理解から創出される組織の目的は経営理念を形成しますが、こうした経営の上位概念から、PDCAサイクルで品質方針品質目標は導き出されなくてはなりません。この枠組みを提供することをリーダーシップとして規格は求めています。目的は方針にリンクし、それぞれの目標はその方針にリンクしていなければならないということです。個々の目標を達成することによって、方針が実現し、目的が成就する、そうした目標でなければならないということです。

不良品の流出ゼロ、もしくはクレームゼロは重要なことですが、これだけでは組織は発展しません。価値を創造する組織の知識を、現場に内在する知を結集して生み出し、これをさらなる高みへ導くような方針と目標の設定が求められています。その上でPDCAサイクルを回し、未来をつかむ活動をします。

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監査では目標設定の評価を

目標達成は方針によるマネジメントです。従って監査では目標設定の適切性も評価しなければなりません。トップの決定した目的と方針から、各部署、各階層の目標の目的及び方針に対する適切性を、監査では評価しなければなりません。

規模や要員数、その能力を考えると、発展志向の目標の新規開発までは手が届かない、新技術の開発には手がつけられない、にしても新規技術の外部からの導入や、営業展開での新規顧客の開発、または社内での現状技術の結合による既存顧客の新たなニーズの掘り起こしなどを目標にしていかないと、先細りの恐れが出てきます。組織の目的達成からも何らかの「新規」を枠組みにすることが、組織能力の課題としても重要です。

ISO9000:2005の3.2.5では品質目標(Quality Objective) 品質に関して、追求し、目指すもの。 としています。追求し、目指すものとは、当然現在は達成できていないもののことです。「追求し、目指すもの」とは、未来の到達点であり、ここに規格は創造的な未来志向、発展志向を求めています。また2015年版7.1.6組織の知識には

変化するニーズ及び傾向に取り組む場合,組織は,現在の知識を考慮し,必要な追加の知識及び要求される更新情報を得る方法又はそれらにアクセスする方法を決定しなければならない。
【出典】JIS Q9001:2015(7.1.6 組織の知識)

とあります。監査ではこの条項も考慮しながら、目標設定と達成計画の適切性を評価することになります。

トップは活動ドメインの定義を検討し、環境の変化に応じて戦略としてそれを変更して、組織の目的を再定義します。その目的にしたがって、製品または提供するサービスの意図や働きや意味も変わり、品質方針も変わります。方針が変われば目標の枠組みが変わるのですから、目標も変わります。マネジメントシステムはこのプロセスがあって初めて、将来エンジンがかかるのです。

組織の社会的ミッションの再定義

2015年版4.1組織及びその状況の理解の要求「組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。」は方針によるマネジメントのスタートです。

環境分析→組織認識→ドメイン(事業領域)の再定義→目的の再定義→経営目的=理念の再作成、これはCI=コーポレートアイデンティティ作成での、MI=マインドアイデンティティ構築のプロセスです。

トップは常におかれている環境を分析し、ドメインについて考え、社会的ミッション=目的を再定義すべきかを考えていなければ、環境の変化に対して経営を変革させていくタイミングを逃してしまう恐れがあります。逃してしまうと大変な経営危機に直面する事態もありうるのですから、そうした事態を予防する措置としても環境分析、課題認識、目的、方針の再検討は重要です。

次講座では戦略的PDCAのナレッジ経営について論考します。

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