食品汚染による食中毒や異物混入事件は、毎年全国で発生しているものであり、食品製造業者にとって食品汚染は最も避けなければならない重要な課題の一つです。

これまでにも食品製造業者は、様々な方法で食品の安全管理を行い、汚染事故を無くそうと試行錯誤を重ねてきました。

食品の安全管理方法には多くの種類がありますが、現在国際基準として採用されているのは、1993年にガイドラインが示されたHACCPという手法です。

日本でも徐々にHACCPを導入する業者が増え、他の先進国では食品を扱う全ての業者にHACCPを義務化する国が増えています。

しかし、HACCPはその手法を自社内で確立するのにコストや手間がかかり、小規模な業者では導入率は2割以下であるのが現状です。

そのため、厚生労働省は特定の食品を製造する業者に対して、その安全管理の認証制度を作りました。

この制度は「総合衛生管理 製造過程」と呼ばれ、日本独自の安全管理手法として多く取り入れられています。今回は、そんな「総合衛生管理製造過程」について詳しく紹介していきます。

総合衛生管理製造過程とは?

総合衛生管理製造過程とは、缶詰やレトルト食品などの容器包装詰加圧加熱殺菌食品、はんぺん・かまぼこなどの魚肉練り製品、乳・乳製品、清涼飲料水、食肉製品を対象とした安全管理の認証制度のことであり、食品衛生法第13条に定められています。

総合衛生管理製造過程は、HACCPの考え方に基づいた安全管理手法です。

HACCPとは、食品を製造・加工・流通するすべての段階で起こり得る汚染の危険を事前に分析し、その危険を回避するためにどのような対策を行えばよいのかを形式化し、全ての食品の安全性を維持する効果が期待されるものです。

総合衛生管理製造過程では、各業者が自ら設定した食品汚染の危険と、それに対する安全管理方法について承認基準を満たしているかどうかを厚生労働大臣が確認します。

認証を受けた業者は、承認基準に合った総合衛生管理製造過程に則って製造を行うことができます。

元来の画一的な安全基準を満たす製造法ではなく、製造工程の各段階において、それぞれ異なる安全管理を維持できる製造法を行うことができるのです。

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HACCPとの違いは?

総合衛生管理製造過程はHACCPの考え方を基に作られた制度ですが、HACCPは、形式化した安全管理が適切に行われているかを厳密に記録に残せるという点が特徴です。

これによって、安全基準に満たない製造が行われた製品は汚染の危険が高いとされ、事前に出荷を止めることができます。また、形式化した安全管理に問題が生じた時には管理方法を再分析し、更なる安全管理の技術向上を行うことができるのです。

一方、総合衛生管理製造では、あらかじめ決められた危険に対して、何かしらの汚染問題が生じて初めて対応するのが基本となります。

そのため、HACCPは危険を予知してそれに適した対策を行い、その中で管理方法の改善を模索することが可能ですが、総合衛生管理製造過程では安全管理方法の設定が不十分な場合があり、かつては認証施設でも大規模な食中毒事件が発生したこともあるのです。

また、HACCPの危険予測は食品の安全性についてのみですが、衛生管理製造過程では安全性だけでなく食品の「品質」に関しても危険予測を立てます。

HACCPを行う前段階の一般的な衛生管理方法まで含まれているため、食品に関する包括的な安全管理方法であると言えるでしょう。

さらに、HACCPは工場単位での認証を受ける必要がありますが、総合衛生管理製造過程では業者単位での認証となり、今現在日本では約700の業者が承認を受けています。

総合衛生管理製造過程の認証制度の効果は?

総合衛生管理製造過程はHACCPの考え方を取り入れているため、HACCPを導入するに至らない小規模な業者に対してHACCP導入の前段階としての役割を持ちます。

しかし、根本的にはHACCPと考え方が異なるため、認証を受けた業者であっても、十分な安全管理が行われない可能性もあります。

かつては認証を受けた業者から大規模な食中毒事件が発生したため、承認獲得後も数年に一度更新しなければならなかったり、食品衛生管理者を配置しなければならなかったりと、大幅な改善が行われました。

しかし、総合衛生管理製造過程は食品の安全性だけでなく、その他の項目も盛り込まれているため、管理が煩雑であり、人件費などのコストがかさむとの意見も多く聞かれます。

食品の安全を守るためには業者の人員全員が力を合わせて管理を行う必要があり、いかに簡潔に分かりやすく管理を形式化するかがポイントとなります。

そのため、総合衛生管理製造過程は、人員全てがその考え方や手法を習得するのは難しいと言えるでしょう。

導入のメリットとしては、国が定めた基準に則った安全管理を行っている製品として、ブランド化を図れるという点、そしてそれをアピールポイントにつなげられる点などが挙げられます。

このように、総合衛生管理製造過程には様々な問題点がありますが、商品取引の現場では大きなメリットとなる可能性もあるため、対象となる業種では慎重に導入の検討をする必要があるでしょう。

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