【HACCP】工場・施設の設計で注意しておきたいこと
日本でも「食の安全」が叫ばれるようになってから久しいですが、食品衛生法の改正によりHACCP基準の衛生管理が義務化されました。設計段階からHACCPのことを考えて食品工場を建設しようという事業主も増えてきています。
予め設計段階からHACCPを念頭に置いて設計しておくことで、低費用で効率良くHACCPを導入することができるためです。――では、具体的にどのようなポイントに気をつけておけば良いのでしょうか?
今回は、HACCP対応食品工場を設計する場合に気をつけておきたいことをいくつかピックアップしてご紹介していきたいと思います。
目次
なぜ設計段階でHACCP(ハサップ)を意識するのか
設計段階でHACCPを意識しておくことで、建設後の設備投資を最低限に抑えることができるためです。HACCPの基本的な考え方は「危害防止のための重要管理点 (CCP )をリアルタイムで監視・記録し、PDCAサイクルによって、常に検証と改善を繰り返し、衛生管理のレベルを高めていくこと」にあります。
工場の設備というのはハード面であるため、ソフト面のみによって継続的な改善を行っていけるのであれば、設計後に苦労するようなことはなくなっていきます。
HACCP対応の工場設計で注意しておきたいこと
施設の立地や周辺の環境に関する注意点
まず注意しておきたいのが、周辺の環境や立地についてです。例えば周辺施設に飲食店が多いような場合、どうしてもネズミや害虫も多くなってしまいます。このような場所に製造施設を設ける場合は、施設内を虫やネズミが入りにくい構造にしたり、また排水口などで繁殖しないような設計にしたりする必要があります。
また、風向きや排水のことなども考えておくと良いでしょう。風向きによっては大量の塵埃が工場内に入ってきます。また、土地の高低差によって排水がしにくい環境となることもあります。他にも、以下のようなポイントに気をつけておくと良いでしょう。
- 周辺に煙や塵埃の発生源がないか
- 上下水道の環境
- ネズミや昆虫の発生源から離れているか
- 周辺に昆虫が発生しやすい樹木がないか
- 周辺環境の衛生状態は良好か
- 排水や廃棄がしやすいか
施設の構造や設備の配置に関する注意点
次に注意しておきたいのは、「どのような設備が必要か」「どこにどの設備を配置するか」ということです。例えばですが、
更衣室で着替える⇒エアーシャワー⇒長靴を履く
という業務フローをイメージする場合、更衣室の後にエアーシャワーがあったほうが、都合が良いです。つまり、長靴を履くスペースをエアーシャワー直後に設けることで作業は簡素化し、さらに衛生面も強化します。
このように、設計段階から業務フローをイメージしておくと無駄な設備を増やさなくても良くなるのです。
さて、設計では他にも以下のようなことに注意しておきましょう。
- 作業動線を加味した構造にしておくこと
- 外部環境のハザードに対して対応すること(昆虫や塵埃の飛来等)
- 防鼠対策をしておくこと
- 清掃がしやすい構造にしておくこと(床の材質や排水のための勾配など)
- 凹凸は鳥の巣にされやすいため避ける
- できるだけレイアウトが変更しやすいような構造にしておく
空調・換気設備に関する注意点
いかに排水口や出入り口で作業場に虫やゴミが侵入するのを防いでいたとしても、空調が原因でゴミが製品に混入することがあります。特に注意しておきたいのは古いエアコンです。エアコンは古くなってくると、吹出口からゴミが飛び出してくることがあり、エアコンの付近で作業をしていると商品にゴミが混入してしまう場合もあるのです。
この他にも、周辺環境によっては外気を取り入れる換気扇などから虫が侵入することもあります。例えば周辺にゴミ置き場があって、ハエがたかってしまうというのはよくある話です。こういった周辺の環境も考慮に入れた上で、以下のようなことに気をつけておく必要があるでしょう。
- 汚染区域から清潔区域へ空気が流れないようにする
- 外気から空気を取り入れる場合はフィルターを活用する
- 室内の温度管理をできるようにしておく
その他に関する注意点
上記以外にも設計段階から徹底した衛生管理をするなら気を使っておいたほうが良いことは様々です。例えばトイレ。トイレの蛇口やドアは手動ではなく自動のほうが衛生的に良いことは誰もがわかります。
他にも以下のようなことには特に気をつけておきましょう。
- トイレは作業室から直接出入りできないような構造にしておく
- 手洗い設備は自動水洗か足踏み式のものを採用する
- 長靴の殺菌槽は必ず通過するように配置する
- ドアノブに触れる必要がない自動ドアを採用する
- 床だけでなく壁や天井まで洗浄がしやすい仕様にする
- ペンキによる塗装は剥がれやすいものを使わない
- 照明器具はホコリが溜まりにくい埋込式のものを採用する
- ゴミ置き場は作業場や製造室から隔離する
- カラスや虫が発生しないようにゴミの管理をする(生ゴミは冷蔵保管するなど)
- 泡洗浄ができるように洗剤配管を設置する
まとめ
HACCP対応の工場を設計していくためには、今回ご紹介したハード面のことだけではなく、モニタリングの方法や記録の実施や検査計画といったソフト面も重要になってきます。
設備面ばかりに気を取られ、衛生管理教育ができていなければ、せっかくの設備が無駄となります。
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