企業の社会的責任とCSR活動のメリット
企業の社会的責任は、CSR (Corporate Social Responsibility)と呼ばれますが、ISO マネジメントシステムの視点で見たときに、CSRとはどのようなもので、取り組むことでどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
CSR活動とは
CSR活動とは、一般的に以下のような活動を指します。
- 法令遵守
- 社会貢献
- 環境保全
- 労働安全
例えば、工場から排出される廃棄物が環境に影響を与えていたとして、企業が環境破壊活動を行った分、環境保全に取り組むようなことは代表的なCSR活動です。廃棄物が出てしまうことは顧客に対してサービスを提供する上で仕方のないこととした上で、その分別などの取り組みによって埋め合わせようとする活動は多くの企業で実施されています。
こういった活動は日本ではまだまだ浸透していませんが、海外では様々な企業が取り組みを行っています。例えば有名なAppleは、環境保全を行うべく、自社で消費する電力を全て屋上に設置した太陽光パネルによる発電によって賄っています。また、サプライヤーとなる企業全てに環境マネジメントシステム規格であるISO14001の取得を求めるなどという取り組みも行っています。
このように、Appleの他にも様々な企業が様々なCSR活動を行っていますが、特にヨーロッパ圏ではPublic Relations(PR)という概念が浸透しており、「企業は利益を上げ、社会に貢献するべきもの」という考え方が強いのです。最近ではCSV(Creating Shared Value)といった考え方も浸透してきており、社会貢献と企業側の利益を両立させる動きもでてきています。
日本でも近年、食の安全問題や労働問題において不祥事が発覚した際に世間に対して「説明責任」や「対策の構築」などが求められていますね。これもある意味でCSR活動の一貫だと言えるでしょう。
例えば、皆さんは量販店で購入した商品が不良品であった場合、「この会社の製品はどうなっているのだ」と思うでしょう。あるいは、3.11の折に東京電力が海へ廃棄物を垂れ流しにしてしまった際には、世間から多大なバッシングを受けていました。これは、「事業を行って金儲けをするなら、最低限世間や環境への配慮をすべきだ」という考え方が高まっている典型的な例です。
ISO視点でのCSR活動
実はISOのマネジメントシステム規格の一つであるISO26000というものがあり、これは社会的責任ガイダンス規格と呼ばれるもので、ISO14001に見られるような環境側面のみならず、様々な分野における企業の社会的責任に関する規格です。
このISO26000では、企業の社会的責任は以下のように定義されています。
組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して、次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任:
-健康及び社会の繁栄を含む持続可能な発展への貢献
-ステークホルダーの期待への配慮
-関連法令の遵守及び国際行動規範の尊重
-組織全体に統合され、組織の関係の中で実践される行動
【出典】JIS Z26000:2012(2.18 社会的責任)
例えばステークホルダーの期待への配慮
というのは「品質」という話にも関わってきます。また、「環境」という言葉が明確に使われている点にも注目したいです。このように、CSR活動については、ISO26000以外のマネジメントシステム規格とも密接な関わりがあるのです。
CSR活動を行うメリット
さて、Public Relationsという概念が広く普及していない日本においては、CSR活動は「企業の目的である利益追求から逸脱した活動」とみなされがちですが、実はそうではありません。
なぜなら、CSR活動を行うことで様々なメリットがあるからです。——では具体的にどのようなメリットがあるのかチェックしていきましょう。
ファンを形成することができる
例えば皆さんの日常生活の中で、「いいヤツ」という方はいらっしゃいますでしょうか。「いいヤツ」は人から好かれて、様々なメリットを享受できます。例えば何か困っていればすぐに人が助けにきてくれたりするのです。
企業においてもそれは同じで「いい企業」とみなされることで様々なメリットが享受できます。例えば「この会社に就職したい」と考える人が増えるかもしれませんし、同じような製品が並んでいるときに「こっちの会社のほうがなんとなく好きだから」ということで商品を購入してもらうことができるかもしれません。
CSR活動を行うことで「いい企業だ」とみなされることは、企業のファンを形成するためにとても有効的な手段なのです。
メディアへの露出が増える
CSR活動の多くは、「企業が率先して、世間を先導する」という活動です。こういった活動は社会性が高く、特にマスメディアに好まれる活動なのです。例えば大企業が躍起になって慈善事業を行ったり、募金活動を実施したりすることには、先に申し上げた通り「ファンを形成する」という目的だけでなく「メディアに露出する」という狙いがあるのです。
こういった活動がメディアによって伝えられればより多くのファンを形成することができますから、慈善事業を行う価値というものは相当大きいのです。
従業員満足につながる
CSR活動を行い、法令を遵守し、社会的責任を果たすことで従業員満足の向上にも寄与します。社員は、「この会社で働いている」という誇りを持つことができれば満足度は向上するでしょう。また、それによってモチベーションが向上し、生産性が高まることもあるかもしれません。
CSR活動はマネジメントシステムの一つとして捉えよう
このように、CSR活動は、企業が長期的に存続していくために必要不可欠なものになりつつあります。近年は「ブラック企業」などという法令を遵守せずに利益だけを追求する企業が世間からバッシングを受けています。
しかし、このように目先の利益だけを追求するマネジメントシステムは後がなくなってきています。例えば従業員が集まらずに倒産する「人手不足倒産」というのはその典型例です。
今後ますます世間から企業の社会的責任が求められる時代に入ることになってくると予想されます。今一度このタイミングで自社の社会的責任とはどのようなものかについて見直し、CSRをマネジメントシステムとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
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