FSSC24000とは?概要・要求事項・FSSC22000との違いを解説

近年、製造業・消費財業界では、労働環境・人権・ビジネス倫理といった「社会的責任(Social Responsibility)」への対応が、サプライチェーン全体における取引条件として重視されるようになっています。こうした背景のもと、FSSC財団(Foundation FSSC)が運営する社会的責任認証スキーム「FSSC24000」が注目を集めています。
一方で、「FSSC24000とはどのような規格なのか」「FSSC22000との違いは何か」「自社に導入すべきか」といった点について、体系的に整理された情報はまだ多くありません。
そこで本記事では、FSSC24000の概要・要求事項・対象企業・FSSC22000との違い・認証取得のメリットまでを、初めての方にもわかりやすく解説します。
目次
FSSC24000とは?
FSSC24000とは、企業の「社会的責任(Social Responsibility)」への取り組みを第三者が審査・認証する国際的な認証スキームです。
FSSC財団(Foundation FSSC)が開発した規格であり、労働環境・人権・安全衛生・ビジネス倫理など、サプライチェーン全体における持続可能な組織運営を評価対象としています。
近年は、欧州を中心に「強制労働の排除」「人権デューデリジェンス(人権DD)」「ESG対応」への要求が急速に高まっており、製造業や食品業界でも社会的責任への対応が取引条件に含まれるケースが増えています。
FSSC24000は、こうした国際的な社会要請に対応するための認証スキームとして注目されています。すでに取引先監査の共通基準の一つとして扱われ始めており、企業の信頼性を可視化する手段として活用が進んでいます。
対象となる業種
FSSC24000は食品製造業以外にも幅広い業種を対象とした認証スキームであり、特に以下のような業種・企業で導入が想定されています。
| 業種 | 主な対象例 |
|---|---|
| 食品製造業 | 食品加工、飲料、原材料メーカー |
| 消費財製造業 | 日用品、化粧品、包装材メーカー |
| 製造業 | 部品製造、組立工場、OEM企業 |
| 物流・倉庫業 | サプライチェーン管理企業 |
| 小売・流通業 | プライベートブランド調達企業 |
| 農業・一次産業 | 農場、農産物加工業 |
特に、海外バイヤーや大手企業との取引がある企業では、労働環境や人権対応を含む「社会的責任の管理体制」を示す手段としてFSSC24000への関心が高まっています。児童労働・強制労働・労働安全・差別防止などのリスクを体系的に管理したい企業に適した規格といえるでしょう。
FSSC24000とPAS24000との関係性
PAS(Publicly Available Specification:公開仕様書)とは、BSI(英国規格協会)が発行する規格文書の一形式です。
つまり、PAS24000が「要求事項そのもの」であり、FSSC24000は「要求事項を第三者認証として運用できるよう仕組み化した制度」という関係になります。
PAS24000:2022とは
AS24000:2022とは、社会的責任に関する要求事項をまとめた国際的な公開仕様書です。英国規格協会(BSI)によって発行されており、企業が労働環境や人権への配慮をどのように実践すべきかを整理したガイドラインとして位置づけられています。
正式名称は「PAS 24000:2022 – Social management systems」であり、企業が適切な労働環境や人権配慮を実践するための基準を定めています。
主な要求事項には、以下のような内容があります。
- 児童労働・強制労働の禁止
- 安全で衛生的な労働環境の整備
- 差別やハラスメントの防止
- 適正な労働時間・賃金管理
- 苦情処理メカニズムの整備
- 倫理的な事業運営
また、PAS24000はISOマネジメントシステム規格と同じ「ハイレベルストラクチャ(HLS)」を採用しているため、既存のISO9001・ISO14001・FSSC22000などと統合運用しやすい特徴があります。
PAS24000を認証化したものが「FSSC24000」
PAS24000はあくまで社会的責任に関する要求事項を示した公開仕様書であり、それ自体は認証制度ではありません。
一方でFSSC24000は、このPAS24000をベースにしながら、第三者認証として運用するための枠組み(審査ルールや認証プロセスなど)を追加したスキームとして整理されています。
そのため、FSSC24000を取得することではじめて認証機関による客観的な審査を通じて、社会的責任への取り組みを証明できます。
また、FSSC24000は認証機関による定期審査や更新審査を通じて、継続的な運用状況も確認されます。そのため、「一時的な取り組み」ではなく、労働環境・人権・倫理管理を継続的に改善している組織であり続ける必要があります。
FSSC24000の取得メリット

FSSC24000を取得することで、サプライチェーンにおける社会的責任への取り組みを可視化でき、労働環境・人権・コンプライアンスなどの管理体制を客観的に証明しやすくなるとされています。
近年は、グローバル企業や大手小売業を中心に、ESGや人権対応を取引先評価の一部として重視する動きが強まっており、社会的責任への対応が企業選定に影響するケースも見られます。
大手バイヤー・小売業者からの信頼獲得
FSSC24000を取得することで、取引先に対して「労働環境・人権・ビジネス倫理に配慮した運営体制」を説明しやすくなります。
近年は、食品・消費財・アパレル・製造業などを中心に、サプライチェーン全体での人権リスク管理を重視する企業が増えており、取引先選定時に「社会的責任への対応状況」を確認されるケースも珍しくありません。
FSSC24000を取得することで、以下のような取り組みを整理して示しやすくなります。
- 強制労働や児童労働を防止する仕組みがある
- 安全衛生管理が整備されている
- 差別やハラスメント防止に取り組んでいる
- 法令順守や倫理的な事業運営を行っている
このように対外的な説明力が高まり、新規取引や海外取引における信頼性向上につながる可能性があります。
二者監査(サプライヤー監査)の負荷軽減
FSSC24000を取得することで、取引先ごとに実施されるサプライヤー監査の負担軽減につながる可能性があります。
大手企業では、仕入先に対して「労働環境」「人権対応」「安全衛生」などを確認する独自監査を実施するケースがあります。しかし、取引先ごとに基準や質問内容が異なるため、対応工数が大きな負担になりやすいのが実情です。
FSSC24000は社会的責任に関する要求事項を整理する枠組みとして活用されるため、監査対応時の説明資料やエビデンスの整理に役立つ場合があります。
その結果、以下のような二者監査(サプライヤー監査)にかかる負担を軽減できる可能性があります。
- 監査対応の回数削減
- 監査準備工数の削減
- 取引先ごとの説明負担軽減
特に、複数の大手企業と取引している企業では、管理負担軽減のメリットを感じやすいでしょう。
ESG・SDGs対応の対外アピール
FSSC24000は、ESG経営やSDGsへの取り組みを具体的に示す手段の一つとして活用されることがあります。
近年は、投資家・金融機関・取引先・求職者など、多くのステークホルダーが「企業の社会的責任への姿勢」を重視するようになっています。その中で、「人権方針を掲げているだけ」ではなく、第三者認証によって実際の運用体制まで証明する重要性が高まっています。
FSSC24000では取得に至る過程で、以下のようなテーマへの対応が求められるため、企業価値向上や採用ブランディング強化にもつながるでしょう。
- 労働環境:労働時間・賃金・差別防止など
- 人権:強制労働・児童労働の防止
- 安全衛生:安全な職場環境の整備
- ビジネス倫理:汚職防止・法令順守など
FSSC24000の要求事項
FSSC24000の要求事項は、「労働関係」「人権」「健康と安全」「ビジネス倫理」の4つを中心に構成されています。組織として継続的に社会的責任へ取り組むためのマネジメントシステムとして設計されている点が特徴です。
要求事項は「4つの領域」に区分される
FSSC24000では、社会的責任に関する要求事項を大きく4つの領域に分類しています。
| 領域 | 主な内容 |
|---|---|
| 労働関係 | 労働時間、賃金、雇用条件、結社の自由など |
| 人権 | 強制労働・児童労働の防止、差別禁止、人権尊重 |
| 健康と安全 | 労働安全衛生、事故防止、職場環境整備 |
| ビジネス倫理 | 贈収賄防止、コンプライアンス、内部通報など |
例えば、人権分野では「児童労働や強制労働を禁止する仕組み」が求められ、健康と安全の分野では「安全な作業環境の整備」や「労災リスク低減」が要求されます。
また、ルールを作るだけではなく、以下のような取り組みを通じて、継続的に改善するPDCAサイクルを回すことも重要なポイントです。
- 教育訓練の実施
- 内部監査
- 是正処置
- マネジメントレビュー
そのため、FSSC24000は「社会的責任への取り組みを文書化し、運用し、改善していく仕組み」といえます。
ISO規格に準拠している
FSSC24000は、ISOマネジメントシステム規格と親和性の高い構造で設計されています。
具体的には、ISO規格で広く採用されている「HLS(ハイレベルストラクチャー)」の考え方を取り入れており、PDCAサイクルによる継続的改善を前提とした構成になっています。
そのため、ISO9001(品質)やISO14001(環境)、ISO22000(食品安全)などをすでに取得している企業であれば、既存のマネジメントシステムと統合しやすい点も特徴です。
例えば、「内部監査」「教育訓練」「是正処置」「マネジメントレビュー」といった共通プロセスを活用できるため、ゼロから仕組みを構築する負担を抑えやすくなります。
また、既存ISOと統合運用することで、監査対応の効率化や文書管理の一元化につながる点も、FSSC24000導入時の大きなメリットといえるでしょう。
FSSC24000認証取得の流れ

FSSC24000の認証は、FSSC財団が承認したIAF(国際認定フォーラム)加盟認定機関から認定を受けた認証機関を通じて取得します。
基本的な流れはISO認証と似ていますが、FSSC24000では「労働環境」「人権」「ビジネス倫理」など社会的責任への対応状況が重点的に審査されます。
認証取得の流れ
一般的なFSSC24000認証取得の流れは、以下のとおりです。
1.要求事項の確認・ギャップ分析
FSSC24000の要求事項を確認し、現在の自社運用との差分を洗い出します。
人権方針・労働環境・安全衛生管理・内部通報制度などが適切に整備されているかを確認し、不足している項目を整理します。
2.マネジメントシステム構築
ギャップ分析の結果をもとに、FSSC24000に対応した管理体制を構築します。
人権方針やハラスメント防止ルール、サプライチェーン管理基準などを整備し、組織として運用できる仕組みを作ります。
3.文書・ルール整備
運用ルールや手順書、記録様式などを文書化します。
「誰が・何を・どのように対応するか」を明確にし、継続的に管理できる状態に整備します。
4.教育訓練・運用開始
従業員教育や社内周知を行い、実際の運用を開始します。
FSSC24000では、文書作成だけでなく「現場で理解・運用されているか」が重視されるため、教育記録や実施状況も重要になります。
5.内部監査・マネジメントレビュー
構築した仕組みが適切に運用されているかを社内で確認します。
内部監査ではルール順守状況や改善点を確認し、マネジメントレビューでは経営層が運用状況を評価して改善方針を決定します。
6.認証審査
FSSC財団データベースでライセンスを持つ認証機関を選定し、審査を申し込み、認証審査を受けます。
第一段階審査では、文書を中心としたシステム構築状況の審査ののち、第二段階審査では、構築したマネジメントシステムの運用状況の現地審査が行われます。
7.認証取得
審査で適合が確認されると、FSSC24000認証が発行されます。
ただし、審査時に軽微な不適合や改善指摘事項が出るケースもあります。その場合は、認証機関から求められた期限内に是正処置を実施し、再発防止策とあわせて報告する必要があります。
8.運用
認証取得後は、構築したマネジメントシステムを継続的に運用していきます。
FSSC24000は「認証を取得して終わり」ではなく、日常業務の中で継続的に改善活動を行うことが重要です。
また、FSSC24000では定期的な維持審査が行われるため、記録管理や運用実績の蓄積も必要です。
継続的な改善活動を通じて、社会的責任への取り組みを実効性のあるものとして維持していくことが求められます。
FSSC24000の認証機関
FSSC24000認証は、FSSC財団から承認を受けた認証機関で取得できます。
認証機関によっては以下のような点が異なるため、自社に合った認証機関を選定することが重要です。
- 対応可能業種
- 審査実績
- 審査員の専門性
- 費用
- 海外拠点対応
特にグローバルサプライチェーンを持つ企業では、海外拠点を含めた審査対応実績がある認証機関を選ぶことで、統一的な運用を進めやすくなります。
また、FSSC24000は比較的新しい認証スキームであるため、認証対応可能な審査機関が限られる場合があります。そのため、取得を検討している場合は、早めに認証機関へ相談し、対応可否やスケジュールを確認しておきましょう。
他規格(FSSC22000・ISO26000)との違いは?
FSSC24000とFSSC22000やISO26000は、認証対象や目的、労働・食品安全・社会的責任における基準に違いがあります。
それぞれの特徴を理解することで、自社にどの規格が必要か判断しやすくなるため、ここで概要や特徴について把握しましょう。
FSSC22000との違い
FSSC22000とFSSC24000は、どちらもFSSC財団が運営する認証スキームですが、対象分野が大きく異なります。
| 項目 | FSSC22000 | FSSC24000 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 食品安全管理 | 社会的責任管理 |
| 対象 | 食品安全リスク | 人権・労働・倫理リスク |
| 主な要求事項 | HACCP、PRP、食品安全管理 | 人権、労働環境、安全衛生、ビジネス倫理 |
| 主な対象業種 | 食品製造・食品関連 | 製造業・消費財・サプライチェーン全般 |
| 認証内容 | 安全な食品を提供する仕組み | 社会的責任を果たす仕組み |
FSSC22000は、「安全な食品を継続的に提供する仕組み」を構築するための食品安全認証である一方、FSSC24000は、「人権・労働・倫理面で適切な事業運営を行う仕組み」を評価する認証になります。
目的が異なるものの、両者は対立する規格ではなく、相互補完的な関係にあります。
例えば、食品業界では、両規格の取得を取引先から求められるケースも増えています。
- 食品安全への対応(FSSC22000)
- 人権・労働問題への対応(FSSC24000)
そのため、今後は「食品安全+ESG・人権対応」を同時に管理する企業が増えていくと考えられます。
FSSC24000とISO26000の違い
FSSC24000とISO26000は、どちらも「社会的責任」を扱う規格ですが、大きな違いは「認証制度の有無」です。
| 項目 | FSSC24000 | ISO26000 |
|---|---|---|
| 種類 | 認証規格 | ガイドライン |
| 第三者審査 | あり | なし |
| 認証取得 | 可能 | 不可 |
| 主な目的 | 社会的責任を仕組み化・認証化 | 社会的責任の考え方を示す |
| 対外的証明 | できる | できない |
ISO26000は、社会的責任に関する国際ガイドラインです。
企業に対して「どのような社会的責任が求められるか」を示すものであり、認証制度は存在しません。
そのため、「ISO26000認証取得」という形にはなりません。一方、FSSC24000は第三者認証制度を持つため、審査を通じて客観的に社会的責任への取り組みを証明できます。
特に近年は、取引先や投資家から「実際に取り組みが運用されている証拠」を求められるケースが増えているため、認証として対外的に示せるFSSC24000への注目が高まっています。
まとめ
この記事では、FSSC24000(社会的責任マネジメントシステム認証スキーム)の概要・要求事項・FSSC22000との違い・取得メリットについて解説しました。
FSSC24000は、FSSC財団が運営する「社会的責任」に特化した国際認証スキームであり、労働環境・人権・安全衛生・ビジネス倫理などへの取り組みを第三者認証として証明できる点が特徴です。
近年では、サプライチェーン全体で社会的責任への対応を求める動きが強まっています。そのした中で、FSSC24000は「社会的責任への取り組みを可視化できる」「大手企業や海外取引先からの信頼獲得につながる」といったメリットがある認証として注目されています。
グローバルサプライチェーンにおける社会的責任への対応が取引条件に影響する時代において、FSSC24000は取り組む価値のある認証です。まずはFSSC24000の要求事項と自社の現状のギャップ分析から取り組みを始めてみましょう。
ISOプロでは月額4万円から御社に合わせたISO運用を実施中
ISOプロではISO各種の認証取得から運用まで幅広くサポートしております。
また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に認証を取得しているお客様においてもご提案しております。
サポート料金においても新プランを用意し、業界最安級の月額4万円からご利用いただけます。























こんな方に読んでほしい