ISOにおける力量表とは
ISO 9001では、文書化する必要があるものが多数ありますが、力量 表もその一つです。ーーでは、力量表とはどのようなもので、力量表を作成する際にはどのようなことに注意しておけば良いのでしょうか?今回は、力量表について解説していきたいと思います。
力量表とは
力量表とは、力量管理表とも呼ばれるもので、業務を遂行する上で必要なスキルを洗い出し、従業員やアウトソース 先の人材がどの程度そのスキルを満たしているかということを定量化したものです。ISO9001 の要求事項には、力量表について以下のいような記述があります。
組織は,次の事項を行わなければならない。
a)品質 マネジメントシステム のパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
b)適切な教育,訓練又は経験に基づいて,それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
c)該当する場合には,必ず,必要な力量を身に付けるための処置をとり,とった処置の有効性を評価する。
d)力量の証拠として,適切な文書化した情報を保持する。
JIS Q 9001:2015
上記にある通り、力量の証拠として力量表等を作成する必要がありますが、力量表を作成することでメリット・デメリットが存在します。以下ではどのようなメリット・デメリットがあるのかということについて解説していきましょう。
力量表を作成するメリット・デメリット
メリット
力量表を作成することの大きなメリットは、業務管理を行いやすくなることです。もう少し具体的に言えば、以下のようなメリットがあります。
業務を細分化できる
Aさんは何ができて、Bさんは何ができないのかということを明確にすると、業務を細分化して考えることができます。これは個人の力量に左右されないマネジメントシステムを構築する上で非常に重要な役割を果たします。
例えば、1~4という工程を1つとして見做すよりも、1、2、3、4という4つに工程を分けるほうが品質の課題を発見しやすくなりますし、一人ひとりの役割を明確化することができるようになります。
教育計画を策定しやすくなる
誰に何のスキルが足りていないのか、全体的にどのようなスキルが不足しているのかということを明確にすることで、今後の教育計画を策定しやすくなります。また、どのような人材を獲得すれば良いのかということが明確にもなります。
ただし、ベテランのみで業務を遂行しており、全員が理想とする力量を備えている場合は、教育を行う必要はありません。
デメリット
しかし、私たち日本人は横一列の年功序列式の経営を長らく実施してきました。こういった実力主義的な考え方はデメリットをもたらす可能性もあります。例えば、以下のようなデメリットがあるかもしれません。
従業員のモチベーション問題
力量表を作成するためには、各スキルを数値化していく必要がありますが、その「各スキル」は必ずしも誰に対しても平等なフィールドであるとは限りません。つまり、その力量表を従業員が見て「私の評価はこんなに低いのか…」と落ち込んでしまう可能性もあるのです。
評価制度との関係
力量表を作成してみると、突出して優秀な人材が明らかになる可能性もあるでしょう。ーーこうした場合に給与などの待遇と結びつけてしまうと、社内の評価制度と合理性を保てなくなってしまうかもしれません。
「あれを身に着けろ」などと上の指示で勉強をしたはいいが、それに伴って待遇がよくならなければ当然従業員の間で不満が出てくるでしょう。力量評価をおおっぴらにして行う場合は、人事評価制度の改革を行う必要が出てくる可能性もあることを認識しておきましょう。
力量表はどのように運用するべきか?
力量表は合理的な経営を行うために非常に便利なものです。特に人材の入れ替わりが激しい昨今の日本では、こういったフォーマットの文書は別なところでも活用することができるでしょう。ーーただし、ISOもヨーロッパ的な考え方で策定されたものであるため、いささか感情論的な要素を持つ日本的な経営とは合致しない部分もあるでしょう。
また、力量表を作成するためには、理想となる力量を明確にする必要があり、極力定量化することが望ましいとされています。その理想と現実のギャップを明確にするためのツールであるため、形だけ真似して作成しても意味のないものとなってしまうかもしれません。
このため、管理者のみが更新・アクセスできるようにするなどの対策をとって運用していくほうが良いかもしれません。
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