建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?義務化への対応をわかりやすく解説
- 建設キャリアアップシステムの活用が2023年から原則義務化された
- 建設キャリアアップシステムとは、建設業界で働く技能者を支援するシステムのこと
2023年から原則として建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用が義務化されました。取引先や公共工事の入札時にも建設キャリアアップシステムの活用が原則化されるため、対応しなければ受注機会の損失につながることも考えられます。
そこで、この記事では建設キャリアアップシステムの義務化について解説します。
目次
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
建設キャリアアップシステム(CCUS:Construction Career Up System)とは、建設業界で働く技能者のキャリアアップの支援や技能の公正な評価などにつなげるために導入されたシステムです。
建設業界の現場を担う技能者(特に若年層)の入職や定着を進めるために、国土交通省と建設業振興基金が運営しています。
建設キャリアアップシステムの義務化はいつから?
2020年からスタートした建築キャリアアップシステムですが、義務化はいつからなのでしょうか。
国土交通省の『建設キャリアアップシステム普及・促進に向けた官民施策パッケージ』によると、2023年度中に「建築キャリアアップシステムへの登録義務化」と「あらゆる工事で完全実施(原則義務化)」を目指していました。
しかし、2024年8月現在、まだ義務化には至っていません。建設キャリアアップシステムの登録・利用は推進されているものの、まだ任意の状態です。
2024年時点での運用状況
それでは、実際にどの程度の建設業許可業者が建設キャリアアップシステムを利用しているのでしょうか。
建設キャリアアップシステムのホームページから登録数や利用状況を確認できます。2024年7月の統計によると、以下のようになっています。
- 技能者登録者数:148万6,672人
- 事業者登録者数:27万1,752件
国土交通省の発表によると、令和5年度末の建設業許可業者数は479,383件であることから、全建設業許可業者の約半分が、建設キャリアアップシステムを登録しています。
また日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」では、建設キャリアアップシステムの登録状況の推移をグラフで確認できます。技能者登録数・事業者登録者数のどちらも右肩上がりで登録が増えており、完全義務化に向けて各事業者が取り組んでいることがわかるでしょう。
建設キャリアアップシステム義務化への対応方法
ここでは、建設キャリアアップシステム義務化への対応方法を解説します。
システムへの事業者の登録
まずは建設キャリアアップシステムに事業者情報の登録申請を実施しましょう。
「会社情報」「社会保険加入情報」の登録を行いますが、その際には事業者確認書類や社会保険加入証明書類を添付することが必要です。
申請方法は、インターネット申請と認定登録機関の窓口での申請の2つから選択できます。窓口での申請は予約が必要なことに注意しましょう。
審査に通過できれば、無事に事業者登録されます。申請・審査期間には大体3週間程度かかります。
システムへの技能者の登録
事業者の登録を済ませたら、次に技能者登録を行います。
「本人情報」「所属事業者情報」「社会保険情報」「保有資格情報」「健康診断のほか各種資格情報」の登録を行いますが、その際には、本人確認書類や加入社会保険等証明書類などの確認書類を添付することが必要です。
また登録料の支払いがあることも忘れないようにしましょう。
1.インターネット申請の登録料
- 簡略型登録 2,500 円(税込)
- 詳細型登録 4,900 円(税込)
2.認定登録機関申請の登録料
- 詳細型登録のみ 4,900 円(税込)
申請方法は、事業者登録と同様にインターネット申請と認定登録機関の窓口での申請の2つから選択できます。
審査に通過できれば、無事に技能者登録されます。申請・審査期間には大体4週間程度かかるため、余裕をもって準備を進めましょう。
システムへの現場・契約情報の登録
建設キャリアアップシステムを現場で運用するには、建設現場ごとに現場・契約情報を登録することが必要です。その際には、「現場名」「現場住所」「元請事業者名」「工事内容」などの情報を入力します。
また元請事業者は、現場管理者を選任し、現場・契約情報の登録と施工体制情報を登録しましょう。一方、下請事業者は、施工体制情報をもとに「作業員名簿」「技能者の立場(職長など)」「作業内容」「作業期間」をします。
現場にICカードリーダーを設置する
建設現場の情報を建設キャリアアップシステムに登録したら、元請事業者は技能者の入退場を管理するためのICカードリーダーなどの装置を設置します。
ICカードリーダーにキャリアアップカードをタッチすることで、技能者の就業履歴をシステムに自動で蓄積できます。
建設キャリアアップシステム義務化に対応しないデメリット
国土交通省は、建設キャリアアップシステムの義務化に向けて、登録・活用を促進しています。そこで、義務化に対応しないとどうなるのでしょうか。
ここでは、建設キャリアアップシステムの義務化に対応しないことによるデメリットを解説します。
事業における受注機会の損失
建設キャリアアップシステムの登録事業者数は年々増加しており、元請事業者も同様に登録・活用に向けて活動しています。
そのため、今後は建設キャリアアップシステムのデータをもとに、下請業者の企業情報や技能者の能力を客観的に分析したうえで発注先を選定する元請事業者が多くなるでしょう。また技能者の資格や実績を登録することで、元請事業者からの信頼獲得につながり、受注機会につながります。
しかし、建設キャリアアップシステムに登録していなければ、元請事業者に自社の情報を知ってもらう機会がなくなることで、受注機会の損失につながる可能性もあるでしょう。
従業員の定着率の低下
建設キャリアアップシステムでは、技能者は自身の資格や就業履歴を証明できるため、適正な評価と処遇を受けられるようになります。そのため、客観的な判断材料をもって人事評価や人材育成に取り組むことが可能です。
しかし、建設キャリアアップシステムに登録していなければ、従来の属人的な人事評価や人材育成に頼ることになり、正当な評価をしてもらえないと感じる従業員は離職してしまうリスクがあります。
建設業において人材不足に悩む企業は多いでしょう。建設キャリアアップシステムを導入しないと、従業員の定着率が低下し、より深刻な人材不足に陥るかもしれません。
経審で加点されない
公共工事において実施される経営事項審査(経審)において、「建設キャリアアップシステムへの登録有無」が評価数値の加点対象となりました。
建設キャリアアップシステムを登録しないと、経審で加点されず、公共工事の受注が受けられなくなる可能性があるのです。
経審を有利に進めたいならISO規格の取得がおすすめ
経審を有利に進めたい場合、ISO規格の取得が適しています。その理由は、公共工事を行う自治体によってISO規格を取得していると、経審の加点対象となる場合があるためです。
実際に建設業の経営者約1,000人に「ISO認証を取得することで、公共事業の取引がしやすくなると考えますか?」と質問したところ、8割以上の方が「とてもそう思う」と「そう思う」と回答。ISO規格取得の効果を実感されています。
そこで建設キャリアアップシステムの導入とともに、自社の事業体制を見直してさらなる業務効率化や品質向上などを目指したい場合には、取得を検討することがおすすめです。
ここでは、ISO規格のうち、特に建設業の取得がおすすめであるISO9001とISO14001について解説します。
ISO9001とは
ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
自社の製品・サービスにおける品質を向上する仕組みを構築し、最終的に顧客満足の達成を目的としています。
そのために、Q(quality:品質)C(cost:価格)D(delivery:納期)の三要素をバランスよく向上させることを目指します。
ISO9001では、QCDバランスに偏りがあり「いくら高品質でも、高額すぎる製品は購入できない」「いくら高品質でも、1年後にならないと手に入れられない」などの場合には、顧客満足を満たすことはできないという考え方から、QCDバランスを重視しているのです。
ISO9001取得による「公共事業の入札加点や参加条件を満たせる」以外の主なメリットを以下にまとめました。
- 取引先や顧客からの信頼を得られる
- 企業内ルールの明確化と業務効率化につながる
- 従業員の品質に対する意識が向上する
ISO9001の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO14001とは
ISO14001とは、環境マネジメントシステムに関する国際規格です。
自然環境をはじめとしたステークホルダーなど、自社を取り巻くあらゆる環境すべてに対して、自社の事業活動により与える悪影響を低減し、良い影響を伸ばすような仕組みの構築・運用を目指します。
ISO14001取得による「公共事業の入札加点や参加条件を満たせる」以外の主なメリットを以下にまとめました。
- 取引先や顧客からの信頼を得られる
- 業務の標準化や効率化につながる
- 法令を遵守できる
ISO14001の詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、建設キャリアアップシステムの義務化について解説しました。
建設キャリアアップシステムは、2023年度中に「建築キャリアアップシステムへの登録義務化」と「あらゆる工事で完全実施(原則義務化)」を目指していましたが、現在も登録と活用に向けて推進している状態です。
建設キャリアアップシステムに登録・活用することで、経審の加点につながり、受注率の向上に役立ちます。さらなる経審の加点を狙いたい場合には、ISO規格の取得も検討することがおすすめです。
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