本稿では、ISO審査機関の選定方法について解説します。

ISO認証を取得する場合、ISOコンサルタント会社を利用される企業は多いですが、ISOコンサルのサポートを受けずにマネジメントシステムを構築し、自社の力で認証を取得することも可能です。ただし、自力で認証を取得する場合、ISO担当者はISO規格要求事項を正しく解釈。組織目的に合致し、かつISO要求事項に適合するよう社内規則を見直し、必要に応じてマニュアルや規則/手順書等を作成しなければなりません。ISOに関連する専門知識やマネジメントシステムの運用経験がない場合、ISO担当者にかなり業務負荷がかかります。そのため負荷配分や効率よくISO業務を遂行するための体制が必要になります。

また、ISO認証取得で審査機関を選定しなければなりませんが、現在、ISO審査機関(認証機関)は、日本適合性認定協会(*1)によると60弱の機関があります。

日本適合性認定協会はこちら↓
https://www.jab.or.jp/system/service/managementsystem/accreditation/

企業がISO認証を取得する場合、「組織目的」が最も重要になりますので、審査機関を選定する前に、まずは「自社の組織目的」について確認しましょう。

企業がISO認証を取得する場合、「組織目的」が最も重要

マネジメントシステムを構築する際に重要となるのが「組織目的」です。組織・事業目的に合ったマネジメントシステムを構築しなければなりません。組織目的が不明確では仕組みを作り上げることは困難です。仮に仕組みを構築したとしても、その後運用・維持できなくなり、仕組みは形骸化してしまいます。経営者は組織目的を明確にし、リーダーシップを発揮してマネジメントシステム推進活動を支援します。

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ISO審査機関の選定

事前準備

一般的に、ISO審査機関を選定する場合、ISO取得推進活動(業務)では以下のような事前準備が進められます。

≪ワークフロー≫

  • ①経営者はISO認証取得を決定します。
  • ②どのようなISO審査機関があるのか、銀行・取引先企業、インターネット等で情報収集します。
  • ③審査機関の特長や評判、他社との違い(メリット)等について把握します。
  • ④審査機関に問い合わせ、審査サイクル(審査・認証プロセス概要」)、審査工数、審査内容、審査費用等について説明を受け、見積もりを入手します。
  • ⑤ISO認証取得するための審査機関を決定します。
  • ⑥審査・認証プロセスについて詳細な説明を受け、組織体制や基本方針の策定、必要に応じてマニュアル作成・社内規定等の見直しをします。
  • ⑦業務プロセスごとに評価指標を設定し、経営者は承認します。
  • ⑧審査機関と本契約/認証契約

審査機関の選定

企業にとって、ISO定期・更新審査を通して年々マネジメントシステムの「質」を向上できることが望ましいです。組織/事業目標に向けて、ISO審査での不適切な運用に対する指摘や、効率よく業務改善するためのコメントは重要かつ有益です。審査機関の選定では、審査機関は企業の特長を理解しましょう。クライアントに対し適切な審査、的確な助言のできる審査員が所属する審査機関を選定したいものですが、限られた審査機関とのやりとりの中で判断するのはなかなか難しいことです。

以下に、選定する際のポイントについて記載します。

a.審査機関によって審査実績や審査能力は異なります

  • ・できる限り「審査の質」に関する情報を収集しましょう。まずは、品質方針や基本理念、代表者の挨拶など企業基本情報で総合的に判断します。
  • ・企業の特長を理解する柔軟性があるか
  • ・企業側から提示する規定関連の理解の速さ、ヒアリング能力があるか
  • ・ISO規格の要求事項について、わかりやすく解釈の仕方について説明できるか

b.あたり前のことですが、審査機関が社会的に問題ないこと、信頼できること

不正行為のあった組織を認証した審査機関の確認は、公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB *1参照)サイトで公表されます。そちらでご確認いただけます。
※JABでは、当該企業の認証を行った審査機関が、認証を行う能力を持つかを確認しています。

c.クライアントの業種に関する知識・実績の有無

要求事項が業務に当て嵌まらず、机上の議論に発展するケースもあります。
審査員がクライアントの業種に関する知識や実績を持つ場合、速やかに業務改善を実施するための的確なアドバイスをいただくことも可能です。

d. 審査機関の審査評価レベル情報の入手

同じ審査機関でも、審査員は一人一人考え方が異なります。例えば、実際の審査では、運用実績記録について1文字1文字規定どおりの表記になっているか注意深く確認する方もいれば、PDCAサイクルがしっかり機能していれば良しとする審査員もいます。
認証合否、審査結果はすべて外部監査報告書として残りますので、可能であれば、事前に審査機関の審査評価レベルや審査員などの情報についても入手しておくと審査機関を選定する際に役立つでしょう。

e.その審査機関に認証取得を依頼した企業の評価内容を入手

審査機関の公式ホームページや、その審査機関に認証取得を依頼したお知り合いの企業があれば評価内容を入手します。

f. マネジメントシステムの運用(ISO認証取得)が企業の組織目的と合致するか

ISO認証を取得しただけでは、企業の組織目的を満足させることはできません。
認証取得後、マネジメントシステムの運用で洗い出された課題および気づき事項について継続的改善することで、組織目的・目標を得ることが可能になります。
審査機関による審査を改善の機会と捉え、マネジメントシステム自体や業務における不適合候補を適切に指摘しましょう。的確な助言ができる審査機関かどうかを審査機関とやりとりする機会を増やし、判断するような環境づくりが大切です。

g.基本情報の確認

①審査サイクル:
定期審査や更新審査は審査サイクルが異なります。審査機関によっても異なりますので、初回審査だけでなく、更新審査、審査サイクルについても確認します。

②審査工数: 
適用範囲の規模や審査員能力によっても審査工数は異なります。
審査工数について確認します。

③審査内容:
審査はISO要求事項に基づき実施されますが、企業マニュアルに要求が反映されているか、マニュアル・規定通りに運用し、要求される文書記録に不備がないか、きちんと保管されているかなどの確認を受けます。
審査機関によって重要視するポイントも異なりますので、構築したマネジメントシステムのアウトプット、審査内容と運用面について合致するか確認します。

④審査費用:
初回審査だけでなく、定期審査や更新審査、交通費や宿泊費など審査に付随する費用も合わせて見積もりを取りましょう。

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