HACCP導入が義務化されるようになった背景
HACCPは、1970年代にアメリカで考案された食品衛生管理手法の一種であり、今では多くの国で取り入れられている衛生管理の国際基準です。
HACCPでは、食品を製造するための原材料の搬入から製造、梱包、出荷までの全工程を細分化します。そして、そこで生じうる食品汚染の危険因子を分析し、その危険を回避するために科学的根拠に基づいた衛生管理を行っていくわけです。
こういった工程により、理論的には全工程での衛生管理が網羅的に監視されるため、従来の衛生管理よりも格段に高い精度で管理が行えるのです。
現在、日本でのHACCP導入率は全食品業者の3割程度であり、特に小規模な業者での導入率は2割以下という状況にあります。
しかし、世界では先進国を中心に全業者にHACCPの導入を義務化する国が増えており、日本でも2020年にHACCPの義務化を目指した取り組みが行われているところです。
ここでは、HACCP導入が義務化されるようになった背景について詳しく解説します。
HACCP導入が義務化されるようになった背景は?
食品の衛生管理方法には様々なものがありますが、従来行われていたのは「抜き取り調査」によるものです。
抜き取り調査とは、出荷の段階にある製品を無作為に抜き取り、その製品の品質を検査するもので、汚染があった場合には関連する一連の製品の出荷を中止することで、汚染食品の流通を防ぐことができます。
しかし、抜き取り検査はランダムに抜き取られた製品だけが検査の対象となり、汚染がある製品が調査をすり抜けて流通してしまうという欠点があったのです。
そこで発案されたHACCPは、出荷段階だけでなく、全ての工程で衛生管理が適切に行われているかを監視・記録されるため、管理基準に満たない状況で製造された製品の出荷を中止したり、汚染事故が生じた場合にどのような問題点があったのかをスムーズに追跡したりすることが可能になりました。
日本では、広く従来の衛生管理が行われていましたが、食の安全性がより一層重視される昨今において、精度の高い衛生管理手法であるHACCP導入は業者や消費者のニーズに合致していると言えます。
また、HACCPを義務化する国が年々増加しており、食品を輸出する際にHACCPに則った衛生管理を求められる機会も増えているのです。
このような背景を踏まえ、日本では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて国内外に日本の食の安全性をアピールし、ブランド力をアップするために義務化を目指しているのです。
世界の導入状況は?
世界ではHACCP導入を義務化する国も増えており、アメリカやEU諸国、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾などが順次全食品を対象に義務化を進めています。
また、中国、インド、タイでは輸出食品にHACCPを義務付けており、他国との食品取引においてHACCP導入をアピールポイントとしています。
日本での義務化は2020年
日本では、2020年の義務化を目指した政策が行われており、2018年度の国会で食品衛生法の改正案が提出される予定です。
2020年には一大イベントである東京オリンピック・パラリンピックが控えており、世界各国に日本をアピールする絶好の機会と言えます。そのため、日本の食の安全性を示すためにも2020年までの義務化が目指されているのです。
しかし、全ての業者が一律に義務化されるわけではなく、業種や業者の規模によって求められる衛生管理のレベルは異なります。
大企業や、より安全性が求められる屠畜場、食肉解体所などは国際基準に則ったHACCP導入が求められ、小規模な食品業者では一般的な衛生管理を基本として、できる限りHACCPの考え方による危険因子の分析と衛生管理方法を行うことが求められています。
しかし、どちらの基準が適応になったとしても、HACCPを新たに導入するためには自社製品と製造工程の詳細な分析を行う必要があり、入念な準備が必要です。
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