HACCPの導入を促進するHACCP支援法について
2020年の6月に義務化が開始しましたHACCPですが、一昔前まではHACCP支援法という法律があることをご存知でしょうか? 今回は、HACCP支援法という法律についてご紹介していきたいと思います。
HACCP支援法とは
HACCP支援法とは、正式名称を『食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法』という平成10年から平成25年までは時限法として制定されていた法律のことで、当時全世界で義務化が進んでいたHACCPを国内の食品関連事業者に対して推進することを目的で施行された法律です。平成25年には支援の期間を10年延長するとともに、従来までの制度に加えて、HACCPの前提条件となる一般衛生管理に関するものにまで支援の範囲が広がりました。
この法律は制定当時、資本金3億円以下、従業員300名以下の食品製造事業者を対象として、HACCPの導入に向けて必要となる施設・体制整備の計画を作成し、指定認定 機関から認定を受けることで、日本政策金融公庫から長期の低金利融資を受けることができるようになるというものでした。平成25年の改正以降はHACCPの前提条件となる一般衛生管理に取り組む場合にもこの制度が適用されることとなり、より多くの事業者が自主的にHACCPに取り組むことを国は推進してきたのです。
2020年のHACCP制度化に向けて
ところが日本においては、一般衛生管理こそ広く普及してきたものの、HACCPに関しては今年度から義務化が始まるというのに、まだまだ普及率が低い状況にあります。――というのも、改正食品衛生法で全食品関連事業者に対してHACCPの義務化が制定されたものの、その法律には罰則が定められておらず(※都道府県などの条令により罰則が定められる可能性はあり)、また2021年まで猶予期間があるため、まだまだ完全にHACCPが普及していない状態が続いているのです。
とはいえ、2020年以降はHACCPに取り組んでいなければ保健所から指摘が入ることにもなりますし、猶予期間が終了する2021年の6月以降にHACCPの導入ができていなければ、最悪の場合営業許可証などの剥奪も考えられます。
HACCP支援法の利用価値について
さて、そんな中でHACCP支援法については現在も有効でありますから、対象の事業者は利用することができる法律であります。――しかし、この法律はそこまで意義のあるものかというと、疑問がいくつか残ります。
まず、HACCP支援法による支援を受けるためには、以下の条件が必要になります。
- HACCP導入の施設・体制整備の計画を策定する
- その計画を認定法人に提出し、基準に適合をするかどうかの認定を受ける
- 日本政策金融公庫の審査を通過する
一方、HACCPという衛生管理方法の導入には、7原則12手順と呼ばれる12の手順を踏んで構築していくものであります。
手順1 | HACCPチーム編成 | 各部門の担当者を集め、HACCPに関する専門的な知識を持った人を含むチームを編成する |
---|---|---|
手順2 | 製品説明書の作成 | 製品の安全について特徴を示す書類の作成。様式は問われない |
手順3 | 用途及び対象者の確認 | 用途(製品の使用方法)と製品を提供する相手(消費者)を確認する |
手順4 | 製造工程図の作成 | 対象者の受入から食事提供までの流れを工程ごとにまとめた書類を作成する |
手順5 | 製造工程図の確認 | 製造工程図を実際の現場での人やモノの動きを確認する。また、必要に応じて書類を修正する |
手順6(原則1) | 危害要因の分析 | 製造工程図をもとに、工程ごとに発生し得る危険要因を列挙し、管理手順を挙げる |
手順7(原則2) | 重要管理点(CCP)の発見 | 危害要因を除去するために特に重要な工程を決定する |
手順8(原則3) | 管理基準(CL)の設定 | 危害要因分析で特定したCCPを管理するための基準を設定する。(○度まで加熱するなど) |
手順9(原則4) | モニタリング方法の設定 | CCPが正しく管理されているかを適切な頻度で管理し、その結果を記録する |
手順10(原則5) | 改善措置の設定 | モニタリングの結果、CLが逸脱していた時に講じる是正措置を設定する |
手順11(原則6) | 検証方法の設定 | HACCPプランに従って管理が行われているかを確認し、修正が必要かどうかを検討する |
手順12(原則7) | 記録の文書化と保管方法の設定 | モニタリングで記録した内容などをどのように文書化し、どのように保管するかを決定する |
HACCPについて少し調べた方なら分かると思いますが、HACCP導入には設備の要件やハード面で必要となるものはほとんどなく、衛生管理のシステムを導入すれば良いだけなのです。つまり、ほとんどの事業者が既に取り組んでいる一般衛生管理さえ構築できていれば、融資や支援を受けずともHACCPは導入できるわけです。
まとめ
今回は、HACCP支援法について解説をしてきました。上記で解説した通り、HACCPはどちらかといえばソフトな要素が強いものであるため、わざわざ計画書の策定や認定、審査などの労力を使ってまでHACCP支援法を利用する価値はないかもしれません。――しかし、一般衛生管理の整備などで設備投資が必要となる場合などはぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
ISOプロでは御社に合わせたHACCP・ISO22000取得・運用支援を実施中
ISOプロではHACCP、ISO22000、FSSC22000、JFSなどの各種食品安全規格の認証取得から運用まで幅広くサポートしております。
また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に認証を取得しているお客様においてもご提案しております。ぜひご相談ください。
こんな方に読んでほしい