ISO9004とは?概要や指針の構成、活用方法をわかりやすく解説

- ISO9004は、ISO9000シリーズの規格で、品質マネジメントシステムに関する規格
- ISO9004は、組織の持続的成功を達成するための指針であり、第三者認証の対象ではない
品質マネジメントシステムの規格といえば、代表的な国際規格にISO 9001があります。
ISO9001は大企業から中小零細企業まで幅広い企業が適用できるような柔軟性をもたせています。そのため、取り組みやすい一方で、物足りなさを感じる企業もあります。
このように「より効果的な品質マネジメントシステムを構築・運用したい」という場合におすすめなのがISO9004です。より効果的な実行から持続的成功の実現に活用できます。
そこで、この記事ではISO9004の概要や規格構成、活用するメリットなどをわかりやすく解説します。
目次
ISO9004とは
ISO9004とは、「品質マネジメントシステムにおける持続的成功を実現するための指針」を提供する規格です。
ここでいう持続的成功とは、組織が品質マネジメントシステムの運用により、長期にわたって顧客満足度を達成し続けることを指します。IT技術が進歩を続け、国際的な貿易が活発化し、ますます企業を取り巻く環境は複雑化かつスピーディーに変化するようになっています。
こうした中で、企業が継続的に目標を達成し続けるためにISO9004では、持続的成功を達成する能力を強化し、支援します。
組織の規模や業種、形態などに関わらず、あらゆる組織が適用できるため、品質マネジメントシステムの運用に悩んでいる企業の方は、一度ISO9004を読み込んでみることがおすすめです。
またISO9004は、品質マネジメントシステムに関するISO9000シリーズの規格の一つです。ただし、あくまで「指針」であって認証制度ではないため、持続的成功の実現に向けて、組織が自発的に活用すると良いでしょう。
ISO9004が制定された背景と変遷
ISO9004が制定されたもともとの背景には、品質マネジメントシステムに関する中心的な規格であるISO9001を補強する意図がありました。
というのも、ISO9001は組織の規模や業種などを問わず、あらゆる組織で適用できるように構成された内容であるため、より高い品質管理のレベルを求める組織にとっては物足りない部分があったのです。
そこで、ISO9001を補強し、組織の品質パフォーマンスの強化を目指すための品質マネジメントシステムのモデルとしてISO9004が制定されました。
2009年の改訂によって、ISO9004の目的が「品質マネジメントシステムのパフォーマンス改善」から「持続的成功の達成」へと移行し、現在のバージョンまで続いています。
ISO9001との違い
ISO9001とは、「品質マネジメントシステムに関する国際規格」です。
ISO規格の中でも世界中で最も取得されている規格で、日本においても製造業や建設業を中心にさまざまな企業で取得されています。
ISO9001には組織が達成すべき要求事項が策定されており、第三者認証の認証制度の対象にもなっています。つまり、ISO9001を取得するには認証機関による審査を受ける必要があるのです。
以下に、ISO9004とISO9001の主な違いをまとめました。
ISO9004 | ISO9001 | |
---|---|---|
目的 | 持続的成功の支援 | 顧客満足度の達成 |
要求事項 | なし | あり |
認証取得 | なし | あり |
備考 | 自社の体制を改善し続けるための参考書のような位置づけ | 認証取得を目指す組織向けの規格 |

ISO9004を活用するメリット
ISO9004を活用するメリットをまとめました。
- 組織の品質を判断する自己評価が可能
- 監査サイクルを問わず、臨機応変に課題の発見・把握ができる
- 持続的成功の達成において対外的な信頼の獲得につながる
ISO9004では、持続的成功を達成するために組織の状況を理解するために自己評価を推奨しています。そこで、ISO9004では附属書Aにおいて自己評価ツールを提供しており、品質を判断するための臨機応変な自己評価が可能です。
また持続的成功に対する取り組みを続けることで、顧客や取引先からの信頼獲得も期待できます。
ISO9004の規格構造とポイント
ISO9004の規格構造は、ISOマネジメントシステム規格とは異なり、要求事項ではなく指針として公表されています。
以下に、指針の目次をまとめました。
- 箇条1. 適用範囲
- 箇条2. 引用規格
- 箇条3. 用語及び定義
- 箇条4. 組織の品質と持続的成功
- 箇条5. 組織の状況
- 箇条6. 組織の個性(identity)
- 箇条7. リーダーシップ
- 箇条8. プロセスマネジメント
- 箇条9. リソースマネジメント
- 箇条10. 組織のパフォーマンスの分析と評価
- 箇条11. 改善、学習、改革
- 自己評価ツール
規格構造のポイント
ISO9004における規格構造のポイントとして、「組織の品質」と「組織のアイデンティティ」について解説します。
組織の品質
組織の品質とは、「持続的成功を達成するために、組織雇用の特性や顧客やその他の利害関係者のニーズ・期待を満たす度合い」のことです。
組織が持続的成功を達成するには、利害関係者の満足度や全体的な経験を向上させる意図をもって、それらのニーズ・期待を予測し、満たすことに重点を置くことが望ましいと示しています。
組織のアイデンティティ
組織のアイデンティティは、以下の4つの要素が含まれています。
使命 | 組織の存在目的 |
---|---|
ビジョン | 組織が目指すべき将来の方向性 |
価値観 | 組織の文化形成の役割を果たし、使命やビジョンを支持しながら、何が組織にとって重要なのかを明確にすることを意図する原則や思考パターン |
文化 | 新年や歴史、倫理、観察される行動や態度 |
ISO9004では、トップマネジメントが使命やビジョン、価値観を明確にする際、組織の状況を考慮することをおすすめしています。また組織の戦略的方向性及びその方針は,こうしたアイデンティティの要素と一貫していることを求めています。

ISO9004自己評価ツールの具体的な活用方法
最後に、ISO9004の附属書に記載されている自己評価ツールの具体的な活用方法を解説します。
組織の品質マネジメントシステムの現状分析
品質マネジメントシステムのパフォーマンスの評価を行うことで、現状分析が可能です。その方法は、組織のパフォーマンスの各要素について、5段階の成熟度レベル(1が基本レベル、5がベストプラクティス)が設けられたチェックリストを用いて自己評価します。
例えば、以下のようなチェックリストがパフォーマンスを左右する要素が挙げられます。
- 密接に関連する利害関係者
- 外部及び内部の課題
- 使命・ビジョン・価値観及び文化
- リーダーシップ
- 方針及び戦略、目標、コミュニケーション
- プロセスのマネジメント
- プロセスの決定
- プロセスの責任及び権限
各要素における自己評価を行うことで、組織の強みや弱みを可視化できます。そうすることで、自社に必要な改善案の立案につながるでしょう。
長期的な戦略的計画の策定
自己評価の結果から、自社における課題や問題点、補強すべきポイント、強化すべきポイントなどが明らかになります。そうしたポイントがわかれば、自社の長期的な戦略的計画の策定に活用できます。
例えば、品質マネジメントシステムに関わる従業員の教育訓練が不足している場合には、教育訓練の体系化やキャリアプランの構築などを戦略的計画として取り入れることにつながります。
改善活動の実行と評価・フィードバック
ISO9004でも、PDCAサイクルを回すことによる長期的改善を目指しています。
そのため、自己評価した結果をもとに発見した問題点があった場合、対策を実施したのちに再度自己評価を行い、必要に応じてフィードバックを行うことでPDCAサイクルを回すことができるようになっています。
1回きりのツールとして利用するのではなく、定期的に自己評価を行うことで、持続的な改善が見込めるでしょう。
まとめ
この記事では、ISO9004の概要や規格構成、活用するメリットなどを解説しました。
ISO9004は、品質マネジメントシステムにおける持続的成功を実現するための指針がまとめられた規格です。ISO9001と異なり、認証制度はありませんが、自己評価ツールが提供されているためとても実用的な規格です。
そのため、品質マネジメントシステムの持続的成功の達成を目指したい企業の方は、ISO9004を活用してみてはいかがでしょうか。

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