マネジメントシステム認証 を受けようとすると、「是正処置」と「 予防処置 」というキーワードが頻繁に出てきます。これらは似たような言葉に聞こえますが、その意味は全く違うものです。今回は、是正処置、予防処置についてそれぞれ解説していきましょう。

是正処置とは

是正処置とは、内部監査や認証審査の結果、規格 不適合とみなされる状態があった際にその不適合の原因を特定し、不適合を正す計画を立案・実施することのことを言います。また、実務の中で顧客からの苦情等も是正処置が必要な対象となります。

もう少しわかりやすく是正処置について述べると、「要求事項と、自社が構築したマネジメントシステムや実行したことにギャップがあるということがわかった時に、良くない部分を直して要求事項を満たすことができる状態に近づけること」が是正処置です。

なお、ISO 9001では、是正処置を以下のように定義しています。

検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去するための処置
ISO9001:2015

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予防処置とは

予防処置とは、現在のマネジメントシステム上で発生する不具合や望ましくないリスクに対してそれらを除去する計画を策定し、リスクの低減や不適合の除去を図っていくことを言います。

是正処置と同じようにISO9001で予防処置については以下のように定義されています。

起こり得る不適合又はその他の望ましくない起こり得る状況の原因を除去するための処置
ISO9001:2008

つまり、泥縄式に対策を行うのではなくリスクや不適合を予め認識した上でそれらを低減、除去していく活動のことを予防処置というのです。

是正処置と予防処置の違い

改めて是正処置と予防処置の違いについて整理すると、是正処置とは要求事項を満たしていない状態を修正し、再発防止を行うものであるのに対して予防処置は前段階で行うリスク管理のようなものです。

是正処置は問題発生後に行うものであるのに対して、予防処置は問題発生前に行うものであるという点において、この2つのキーワードには大きな違いがあるといえるでしょう。

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ISO2015年版からは予防処置という言葉が消えた

さて、そんな予防処置ですが、ISO9001の2015年版からは「予防処置」という箇条がなくなっています。その代わりに、予防処置は「リスク管理」という言葉に置き換えられているのです。ISO9001の2015年版では、予防処置(リスク管理)は組織が手順書に従って実行するものではなく、リスク管理として実施しなければならないものであるとされているのです。

それもそのはずです。リスクというのは、簡単に予期することができたのであれば誰もマネジメントシステムの構築に苦労はしませんし、これほどまでに経営で苦労する企業は増加しなかったでしょう。世の中はIT化によってますます流動的になっており、予期できないリスクというものがあるからマネジメントシステムの構築は難しいです。それ故ISOをはじめとするマネジメントシステム規格は基本的に「継続的なマネジメントシステムの改善」に重きをおいています。

つまり、手順に従って行うリスク管理では現代の社会のマネジメントシステムとしては不十分であり、予期できないリスクが発生するものとして常にマネジメントシステムをチューニングしていくことが求められるのです。ISOのマネジメントシステム認証は時代の流れに併せて規格を改訂したといえるのではないでしょうか。

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