ISO14001における「法令順守」をわかりやすく解説

- ISO14001における順守義務とは、「遵守すべき法的要求事項」や「自社が遵守すべきと決めた要求事項」のこと
- ISO14001における法令順守は明確化されておらず、自社で対応すべき法令を見極める必要がある
近年、環境問題はますます深刻化しており、各国が足並みを揃えて自然環境への対策に取り組んでいます。各国が法令や規制を制定し、組織はそうした法令や規制を順守したうえで活動することが求められています。
こうした動きが活発化していることで、環境マネジメントシステムの国際規格 であるISO 14001は、他のマネジメントシステム認証規格に比べて法的要求事項が多いといわれています。
そこで、この記事ではISO14001における法令順守や法的要求事項の概要、法的要求事項を満たす方法、代表的な環境関連法令について解説します。
目次
ISO14001における順守義務とは
ISO14001における順守義務は、以下のように要求事項に記載されています。
6.1.3順守義務
組織は、次の事項を行わなければならない。
a)組織の環境側面に関する順守義務を決定し、参照する。
b)これらの順守義務を組織にどのように適用するかを決定する。
c)環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、継続的に改善するときに、これらの順守義務を考慮に入れる。組織は、順守義務に関する文書化した情報を維持しなければならない。
つまり、順守義務とは主に以下の3つについて取り組むこととまとめられます。
- 「組織が順守しなければならない法的要求事項」と「組織が順守すると決めたその他の要求事項」を決定すること
- 組織としてどのように取り組むかを決定すること
- 環境マネジメントシステムを運用する際に、順守義務について考慮したうえで取り組むこと
そこで、ここでは組織が順守しなければならない法的要求事項とその他の要求事項について解説します。
法的要求事項
法的要求事項とは、組織が事業活動を行ううえで「義務として要求されている事柄」もしくは「暗黙の了解として満たす必要がある事柄」が挙げられます。
例えば、組織に適用される法律や政令、省令、規制、条例などです。また海外に製品を輸出している場合には、輸出先の国で適用されている法律や指令なども法的要求事項に含まれます。
しかし、事業内容や組織の活動内容によっては、対応しなければならない法令は異なります。
その理由は、毒物や劇物を取り扱わない企業に対して、「毒物及び劇物取締法を遵守せよ」とは言えないためです。
また各国によって法令が異なるため、ISO14001では「この法律を守りなさい」という具体的な点にまで触れることはしていません。
そのため、多種多様な法律や政令などがある中で、自社で順守すべき法的要求事項を定める必要があるのです
その他の要求事項
その他の要求事項とは、「組織がそれを順守すると決めたもの」です。
明確には定められていないものの、例えば組織や業界の標準となる基準や契約関係、顧客要求事項、行動規範、地域住民との取り決めなどが挙げられます。

ISO14001における順守義務の位置づけ
ISO14001における順守義務は、環境マネジメントシステムの構築・運用において重要な位置づけにあります。環境マネジメントシステムに関する取り組みの多くは、順守義務を考慮する必要があるためです。
そこで、順守義務を考慮して取り組むべき要求事項の内容を、以下にまとめました。
- 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
- 環境方針・環境目標の決定
- 環境マネジメントシステムにおいて取り組む必要があるリスクと機会の決定
- 環境マネジメントシステムにおける取り組みの計画策定
- 働く人々の力量管理
- コミュニケーションプロセスの確立
- 環境マネジメントシステムの運用プロセスの確立や実施、管理、維持
- パフォーマンス評価
- 内部監査・マネジメントレビュー
つまり、環境マネジメントシステムの構築・運用における会社の方向性を定めるうえで、順守義務は重要な要素であるといえます。
法的要求事項を満たす方法
法令順守においては、情報収集が重要です。というのも、法的要求事項は時代の変化に応じて制定・改正される可能性があるためです。
しかし、自社の業務を行いながら、すべての法的要求事項の最新情報を把握することは簡単ではありません。
そこで、ここではISO14001で求められる法的要求事項を満たす3つの方法を解説します。
官報をチェックする
官報は、法律の改正や政府発信の情報をまとめた紙媒体のことです。
インターネット上では直近30日の官報は無料で公開されています。インターネット版官報を購読して法的要求事項に変更点がないかなどをチェックすることで、最新情報を把握できます。
ただし、この方法は現時点で環境関連の法令をすべて順守している場合に有効な方法です。現段階で順守できているかわからない場合には、他の方法も合わせて行いましょう。
書籍から情報を得る
関連する法令における書籍から情報を得ることで、環境関連法令の内容を整理する方法です。
例えばダイヤモンド社から出版されている『新・よくわかるISO環境法[改訂第14版]ISO14001と環境関連法規』などを参考にすれば、現行の環境法令を整理できるでしょう。
県の環境課に確認を入れる
最もスピーディーな方法は、県の環境関連の課に問い合わせるという方法です。
県の環境課は企業に対して指導をする義務があるため、まとめて教えてもらうことで順守する方法を把握できます。
また県の環境関連の課に相談するメリットには、国で定めている法令や政令だけでなく、自治体が定める条例も同時に確認できることです。

代表的な環境関連法令
最後に、代表的な環境関連法令を表にしてまとめました。
法令のみではなく、REACH規則や改正RoHS(RoHS2)指令などの取引先の要求についても順守する必要があることは忘れないようにしてください。
廃棄物の排出 | 廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)、PCB特措法(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法) |
---|---|
化学物質の使用・管理 | 毒劇法(毒物及び劇物取締法)、消防法 |
危険物(燃料)の貯蔵・取扱 | 消防法 |
浄化槽の使用・管理 | 浄化槽法 |
空気圧縮機の運転・管理 | 騒音規制法、振動規制法 |
空調機の運転・管理 | 騒音規制法、振動規制法、高圧ガス保安法、フロン回収破壊法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律) |
送・排風機の運転・管理 | 騒音規制法、振動規制法 |
非常用発電機の使用・管理 | 大気汚染防止法、消防法 |
特定施設からの排水 | 水質汚濁防止法、下水道法、浄化槽法 |
ボイラーの運転・管理 | 大気汚染防止法 |
廃止した県有焼却施設の管理 | ダイオキシン類対策特別措置法 |
農薬(殺虫剤)の保管・使用 | 農薬取締法 |
受水槽の管理 | 水道法、建築物における衛生的環境の確保に関する法律 |
家電製品の使用 | 家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)、小型家電リサイクル法 |
建物の管理 | 建築物における衛生的環境の確保に関する法律 |
物品の購入 | グリーン購入法 |
まとめ
この記事では、ISO14001における法令順守や法的要求事項の概要、法的要求事項を満たす方法、代表的な環境関連法令について解説しました。
環境マネジメントシステムの構築・運用において、法令順守は非常に重要な要素です。ほとんどの取り組みは、法令順守を考慮したうえで取り組む必要があります。
そのため、法的要求事項やその他の要求事項を決定する際には、自社内外部の状況やニーズをよく理解することが大切です。
適切な法的要求事項、その他の要求事項を定めたうえで、法令順守を満たせるように取り組みましょう。

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