飲食店が注意しておきたい衛生管理と食中毒
2020年のオリンピックに向けてますます「食の安全」が求められています。飲食店にとって「しっかりとした衛生管理をすること」は店舗を運営していく上で最低条件とも言えます。
しかし、一言で「衛生管理」といってもどのようなリスクがあり、そのリスクはどのようにして低減することができるのかといったことを知ってかなければ、「衛生管理」できません。
今回は、飲食店が注意しておきたい食中毒リスクと、そのリスクの具体的な低減方法についてご紹介していきます。
食中毒のリスクはどこにある?
はじめに、食中毒は何が原因で発生するのかということを整理していきましょう。
細菌
特に夏場に多いのが、細菌による食中毒です。具体的な細菌の名前としては、以下のようなものがあります。
- サルモネラ菌
- カンピロバクター
- O157
- 腸炎ビブリオ菌
- 黄色ブドウ球菌
どれも一度は聞いたことがあるほど有名な細菌です。これらの細菌は自然界の至るところに存在していますが、主にサルモネラ菌は鶏や卵に、カンピロバクターやO157は牛や豚の生肉に、腸炎ビブリオ菌は生の魚介類、黄色ブドウ球菌は人間の皮膚や傷口で繁殖すると言われています。
ウイルス
ウイルス性の食中毒の中でも特に有名なのが、ノロウイルスです。ウイルスは細菌とは異なり、非常に高い感染力を持っており、12月〜1月の空気が乾燥している時期に繁殖します。
基本的に食中毒は年間を通して発生しますが、12月〜1月は食中毒の件数が非常に多く、ノロウイルスの驚異を物語っています。ノロウイルスはごく少量(10個〜100個)が体内に入るだけで食中毒を発症すると言われており、水洗やエタノールによる消毒だけでは対策をすることができないため、特に注意が必要な原因です。
毒
毒による食中毒の中でも特に有名なのが、フグの卵巣や肝臓に含まれているテトロドトキシンという毒素によるものです。この他にもホタテガイやムラサキガイのような貝類にも毒が含まれています。
また、魚介類以外にも、ジャガイモの芽や銀杏にも毒が含まれています。
化学物質
ウイルスや細菌による食中毒に比べれば件数は少ないですが、化学物質の中にも有毒な物質があり、これらを摂取することで食中毒を発症することもあります。具体的には水銀、カドミウム、世界的に使用が禁止されているPCBなどによって食中毒を引き起こすことがあります。
どのような対策をすればいい?
上記で紹介したような食中毒の原因になるものは、どのように除去すれば良いのでしょうか?以下で解説していきます。
加熱処理
細菌やウイルスは加熱処理によってある程度取り除くことが可能です。例えばカンピロバクターやO157、サルモネラ菌、ノロウイルスは加熱処理によってほとんどを除去することができます。
衛生管理手法でよく言われているのは、「85℃以上で90秒以上加熱」というものです。これはノロウイルスのほとんどを消毒することができる加熱方法なのです。
ただし、ノロウイルスは60℃程度の加熱では30分間加熱したとしても生き残るため、低い温度で長時間加熱すれば良いということではないので注意しましょう。
提供する食品によっては、85℃以上、90秒の加熱をできない場合もありますが、この場合は別の対策をする必要があります。
清潔を保つ
細菌やウイルスは、「水洗い」「加熱」「消毒」によって除去することができますが、逆にこれらができていない場合は細菌やウイルスが繁殖しやすい環境になってしまいます。
特に手洗い場の蛇口、調理場、従業員の手指は常に清潔を保つようにしておきましょう。
食品を放置しない
特に十分な加熱処理ができていない食品は、長時間放置しないようにしましょう。一度加熱処理を施した食品であっても、あとから細菌が付着してそこから繁殖していくこともあります。
一度に大量に調理して、小分けにして提供するような場合には、十分に衛生を保つことができる時間を決定し、その時間を超過した場合は廃棄するなどのルールを決めておくと良いでしょう。
調理器具のサビや傷を確認する
調理器具に傷やサビがあると、水洗や洗剤で汚れを落としにくくなってしまい、そこに細菌が付着してしまう可能性もあります。また、銅製の調理器具を利用する場合は、銅による食中毒にも気をつけましょう。
銅は大量摂取によって中毒症状を引き起こすためです。特に銅製の鍋で長時間カレーなどを煮込むと、急性銅中毒のリスクが高まってしまいます。
まとめ
ある調査では、日本における食中毒の60%以上は飲食店で発生していると言われています。食中毒が一度でも発生すると、規模によっては保健所から営業停止命令を受けたり、お客様への損害賠償の支払いで店舗の財政状況が傾いてしまったりします。
食中毒というリスクをしっかりと理解して、対策を施しておきましょう。
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