製造業はISO認証を取得すべき?メリットや運用のコツを解説

FAQ製造業のISO取得に関するよくある質問
製造業では、取引先からの要求や品質管理の強化、業務の標準化などを目的にISO 認証を取得する企業が多くあります。ISO9001をはじめ、ISO14001やISO45001、ISO27001 など、目的に応じて選べる 規格 もさまざまです。
一方で、「どの規格を選べば良いのか」「今すぐ必要なのか」と判断に迷うケースも多いでしょう。
そこで、本記事では、製造業でISO認証を取得する目的やメリット、代表的な規格の種類、選び方、取得・運用時の注意点までわかりやすく解説します。自社に適したISO認証を検討する際の参考にしてください。
目次
製造業にISO認証取得は本当に必要なのか?取得する目的とは?

製造業にとってISO認証の取得は必須ではありませんが、取引先からの要求への対応や業務の標準化、取引競争力の向上など、明確な目的がある場合に有効です。
「ISOを取得すること」自体を目的にせず、自社が抱える課題や事業上の必要性を踏まえて検討しましょう。
ここでは、一般的にISO認証を取得している企業の取得目的を紹介します。
取引先からISO認証の取得を求められるから
製造業でISO認証取得を進めている企業には、取引先からのISO認証取得に対するニーズに対応する目的があります。
製造業では、新規取引の開始や既存取引の継続条件としてISO認証の保有を求められることがあるためです。
特に大手メーカーや海外企業との取引では、品質マネジメント体制が整備されているかを客観的に示す指標としてISO認証の取得が重視される傾向があります。
このような場合、ISO認証が未取得のままでは商談機会の損失や取引範囲の制限につながる可能性もあるため、事業戦略の観点から取得を検討する企業が多いのです。
業務を標準化したいから
業務の属人化を解消し、組織として安定した品質を実現するために、ISO認証を取得する企業もあります。
製造現場では、ベテラン社員の経験や勘に依存した業務運用が続くと、品質のばらつきや教育・引き継ぎ負担の増大といった課題が発生しやすくなります。ISO規格に基づくマネジメント体制の整備では、業務手順の文書化や責任・権限の明確化が求められるため、作業の見える化と標準化が自然と促進されます。
その結果、品質の安定や教育効率の向上につながることから、標準化を目的にISO認証の取得を検討する企業も少なくありません。
同業他社との差別化や取引競争力を高められるから
ISO認証は、自社の管理体制を第三者によって評価されたことを示せるため、同業他社との差別化や取引競争力の向上につながります。
取引先が複数の企業を比較する際、ISO認証の取得が信頼性を判断する材料の一つになることがあります。特に新規取引や入札などでは、認証取得が評価されるケースもあります。
そのため、取引先から取得を求められていない場合でも、品質管理や環境対応などの取り組みを客観的に示し、取引先から選ばれる企業を目指すという目的で取得を検討することができます。
そもそもISO規格とは?
ISO規格とは、国際標準化機構が策定した、製品やサービス、企業活動などに関する国際的な基準を示した規格のことです。ISO規格には品質、環境、労働安全衛生、情報セキュリティなどさまざまな種類があり、製造業でも目的に応じて活用されています。
また、ISO規格への適合を第三者の認証機関が審査し、基準を満たしていることを証明するのがISO認証です。認証を取得することで、自社の管理体制が国際規格に基づいて整備・運用されていることを取引先などに示しやすくなります。
製造業においても、品質管理や環境対応などの信頼性を客観的に示す手段として広く活用されています。
なぜ世界中の企業がISO規格を取得しているのか
ISO規格が世界中の企業で活用されているのは、企業同士が品質や管理体制を評価する際の共通の基準として利用できるためです。
企業ごと、国ごとに品質や管理の基準がバラバラだと、取引先は「本当に信頼できる会社か」を判断しにくくなります。そこで、ISO規格はその判断基準を世界共通でそろえる役割を担っているのです。
ISO規格への適合を第三者機関が審査で確認する工程がISO審査であり、審査を通過した場合にのみ付与されるのがISO認証です。ISO認証を取得していれば、一定水準の管理体制が整っている企業だと客観的に示せるため、新規取引や海外取引でも評価されやすくなります。
このように、世界共通の「ものさし」として機能していることが、世界中でISO規格が採用されている大きな理由です。
製造業でよく取得されているISO規格の種類

ISO規格は目的別に複数の種類があり、自社が強化したいリスクや取引要件に応じて選ぶことが重要です。
ここでは、製造業で取得事例の多い代表的な規格を紹介します。
ISO9001
ISO9001は、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。製品やサービスの品質を維持・向上する仕組みを構築・運用することで、最終的には顧客満足の向上を目指します。
製造業において最も代表的なISO規格であり、取引先からの要求事項になっているケースも多いことから、まず検討される基本的なISO規格といえます。
ISO14001
ISO14001とは、環境マネジメントシステムに関する国際規格です。企業活動による環境影響を管理・改善するための仕組みを構築・運用することで、環境負荷の低減を目指します。
製造業においては、環境配慮への社会的要請の高まりや取引先のグリーン調達基準への対応を目的に取得が進んでいます。
ISO45001
ISO45001とは、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。職場の労働安全衛生リスクを管理する仕組みを構築・運用することで、安全な職場づくりを目指します。
製造現場の安全管理を重視する企業や、労災リスクの高い業種で導入が進んでいます。
ISO27001
ISO27001とは、情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格です。顧客情報や設計データ、機密文書などの情報資産を適切に管理するための仕組みを構築・運用することで、情報セキュリティリスクの低減を目指します。
近年の製造業では、IT化・DX推進に伴ってISO27001の取得を検討する企業が増えています。
製造業におけるISO規格の選び方と判断基準
取得するISO規格を選び方は、「自社の目的」と「顧客・取引先の要求」の両面から選定することが重要です。
ISO規格は種類が多いため、自社の課題だけで判断すると、認証取得後に「取引要件を満たせていない」というミスマッチが起こる場合があります。まずは取引条件を確認し、そのうえで自社のリスクや経営方針に合った規格を選び、認証を取得することが失敗しないポイントです。
ここでは、製造業におけるISO規格の選び方と判断基準を解説します。
取引先・顧客から求められているISO規格か
最優先で確認すべきなのは、取引先から取得を求められている規格の有無です。
製造業では、新規取引やサプライヤー選定の条件としてISO取得が指定されるケースが少なくありません。特にISO9001やISO14001は、取引要件に含まれることが多い代表例です。
すでに要求が明確な場合は、その規格の取得を優先的に検討することで、受注機会の損失を防げます。
品質・環境・情報など、どのリスクを重視するか
自社が重点的に管理すべきリスクに合わせて、ISO規格を選定しましょう。
例えば、品質クレームの削減が課題ならISO9001、環境対応の強化ならISO14001、情報管理の強化ならISO27001が候補になります。
自社の経営課題や将来の事業方針と照らし合わせ、「何を最も改善したいのか」を明確にすることが、適切な規格選びにつながります。
複数規格を同時に取得・統合する必要があるか
複数の要求やリスクがある場合は、複数規格を統合して運用することも視野に入れて検討しましょう。
取引先から複数のISOを求められている場合や、品質・環境・安全などを横断的に管理したい場合は、複数規格の認証を同時取得する方法が有効です。
近年は、共通要素をまとめて運用する「統合マネジメントシステム(IMS)」を採用し、効率的に複数規格を運用する企業も増えています。
この場合には、ISOコンサルタントに依頼することで、運用負荷を低減しつつ、的確な効果が得られるマネジメントシステムの構築・運用につながります。ぜひ以下の記事もあわせてご覧ください。
製造業でISO認証を取得・運用するときの注意点

製造業でISO認証を取得・運用する際は、認証取得のために新しい業務を増やすのではなく、既存の製造プロセスにISOの仕組みを無理なく組み込むことが重要です。
ISO規格の要求事項を満たすことだけを優先すると、現場で使われない文書や重複した記録が増え、担当者の負担が大きくなる可能性があります。
ISO認証を継続的に活用するためにも、現在の業務や管理方法を確認したうえで、不足している部分を補う形で仕組みを構築しましょう。
ISO取得のためだけに現場の業務を増やさない
ISO認証を取得する際は、現在の製造現場で行っている業務を活かし、必要以上に新しい作業を増やさないことがポイントです。
ISO規格への対応を理由に、既存の管理方法とは別にチェック表や記録を追加すると、現場の負担が増えるだけでなく、記録の重複や管理漏れにつながる可能性があります。
まずは現在の業務や管理方法を整理し、ISO規格の要求事項を満たすために不足している部分だけを追加しましょう。既存の仕組みを活用することで、現場に定着しやすいマネジメントシステムを構築できます。
現場で実施していることと文書の内容を一致させる
ISO認証の運用では、文書に記載された手順と、実際の製造現場で行っている作業を一致させることが重要です。
文書上では実施することになっている作業が現場では行われていなかったり、反対に現場で実施している重要な作業が文書に反映されていなかったりすると、ISOの運用が形骸化する原因になります。
そのため、マニュアルや手順書を作成するときは、現場の担当者へのヒアリングを行い、実際の作業内容を反映することが大切です。運用開始後も、業務内容の変更に合わせて文書を見直しましょう。
品質・環境などの目標を数値で管理する
ISO認証を実効性のあるものにするには、品質や環境などの目標を具体的な数値で設定し、達成状況を継続的に確認することが重要です。
例えば品質管理であれば「不良品を減らす」という目標だけではなく、「不良率を前年比○%削減する」のように、達成状況を判断できる指標を設定します。
数値で目標を管理すれば、取り組みの成果や課題を把握しやすくなり、次の改善活動にもつなげられます。ISO認証を取得すること自体をゴールにせず、製造現場の改善に役立つ目標を設定することが大切です。
製造業がISO認証を取得する流れ

製造業がISO認証を取得するには、取得する規格と適用範囲を決め、現状とのギャップを確認したうえでマネジメントシステムを構築・運用し、認証機関による審査を受けます。
ISO認証は、書類を整えるだけで取得できるものではありません。実際の製造現場で仕組みを運用し、その有効性を確認したうえで審査を受けることが重要です。
1.取得するISO規格と適用範囲を決める
まず、自社が取得するISO規格と、認証の対象とする組織・事業・拠点などの適用範囲を決定します。
取引先からの要求や自社の経営課題を踏まえて、ISO9001(品質)やISO14001(環境)などの対象規格を選定します。あわせて、全社を対象とするのか、特定の工場や部門に限定するのかといった適用範囲も、この段階で明確にしておく必要があります。
2.現状とISO規格の要求事項とのギャップを確認する
規格を選定したら、自社の現状とISO規格が求める要求事項との間にどのようなギャップがあるかを確認します。
製造現場では、すでに品質管理や環境管理の仕組みが整っているケースも少なくありません。現状を整理することで、既存の仕組みを活用できる部分と、新たに整備が必要な部分を明確にできます。
このギャップ分析を行うことで、必要以上に新しい業務や文書を増やすことを防げます。
3.マネジメントシステムを構築・運用する
ギャップ分析の結果をもとに、ISO規格の要求事項を満たすためのマネジメントシステムを構築し、実際の業務で運用します。
必要に応じて、方針や目標、業務手順、責任・権限などを定めます。ただし、ISOのためだけに新しい仕組みを作るのではなく、既存の製造工程や管理方法を活用しながら構築することがポイントです。
また、一定期間運用することで、仕組みが現場に定着しているか、期待した効果が得られているかを確認します。
4.内部監査・マネジメントレビューを実施する
マネジメントシステムを運用したあとは、内部監査やマネジメントレビューを実施し、仕組みがISO規格の要求事項や自社のルールに沿って適切に機能しているかを確認します。
内部監査では、構築したマネジメントシステムが規格の要求事項に適合し、実際に運用されているかを社内でチェックします。その結果を踏まえて、トップマネジメントがシステム全体の有効性を評価するマネジメントレビューを行い、必要な改善につなげます。
5.認証機関による審査を受ける
最後に、ISO認証機関による審査を受け、規格の要求事項を満たしていることが確認されれば認証取得となります。
審査は、文書の整備状況を確認する一次審査と現場での運用実態を確認する二次審査の2段階で行われるのが一般的です。
審査に合格すると、ISO認証が付与されます。認証取得後も、毎年の維持審査や3年ごとの更新審査を通じて、継続的な運用が求められます。
まとめ
この記事では、製造業におけるISO認証の必要性や代表的な規格の種類、自社に合わせたISO規格の選び方について解説しました。
製造業におけるISO認証の取得は必須ではありませんが、取引要件への対応、品質の安定化、業務の標準化など、多くの場面で経営基盤の強化につながります。ISO認証は取得そのものが目的ではなく、「自社の課題解決のために、どのように活用するか」が成果を左右します。
まずは自社の現状と目的を整理し、認証を取得するISO規格の種類や運用方針を検討していきましょう。
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既存の仕組みを活かし、不足する部分を補う形で構築することで、現場の負担を抑えた運用につなげられます。