利益とキャッシュフロー

損益計算書で利益を出してさえいれば、資金不足の時は銀行が支えてくれる、という時代はとうに終わっています。利益だけの損益計算書経営ではなく、キャッシュフロー経営の時代が始まっていたのです。

例えば、売上、製造原価、純利益が、同額の会社が3つあったとして、この3社の損益計算書は同じに見えます。しかし、A社は売上の全部を現金で回収済みで、製造原価の支払いも現金で支払い済み、B社は売上を同じく現金で回収したが、製造原価は買掛金として期末時点の未払いがあり、C社は売上の未回収があり売掛金となっており、製造原価の未払もあるとします。減価償却費の計上はA社10に対して、B社15、C社5と違っていました。この期のキャッシュフローを出してみるとA社、B社はプラス、C社は大きなマイナスということになりました。C社は利益を出していても、このマイナス分の運転資金を借入などで調達しなければなりません。利益だけを見て同じに見えても、キャッシュフローを見ると、まるで違うということが分かります。

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貸借対照表と損益計算書

貸借対照表は企業のある時点での資産や負債・資本の内訳を示したものです。「資産の部」にはその時点での企業の資産状況が表されています。現金・預金・売掛金・棚卸資産などの流動資産と、土地・建物・車両・製造機械など、長期にわたって保有することを前提にした固定資産、研究開発費などを期間に応じて償却するためなどの無形固定資産に分けられます。

「負債の部」と「資本の部」は、企業にとっての資金調達状況を表しています。負債は借入によって賄っている資金、いつかは返さなくてはならない資金です。銀行などから借りた資金だけでなく、買掛金も仕入先から借りている資金と考えます。「資本の部」に含まれる資金は、株主が出資した資本と、企業が利益を出して蓄積した余剰金で、返済の必要はありません。

損益計算書はある期間、企業の業務活動の動きを、損益という観点からとらえたものです。売上、売上原価、売上総利益、一般管理費、営業損益、営業外損益、経常損益、特別損益、税金、純損益を把握するための計算書です。期中に事業着の投資があったり、また資金繰りのために遊休地を売却して期中に同額の土地を買ったりしていた場合、この2つの財務諸表からはほとんど分かりません。

キャッシュフロー計算書とは

営業活動のキャッシュフローは、期中の営業、投資、財務のそれぞれにおけるお金の動きを明らかにするものです。貸借対照表と損益計算書から計算することができ、キャッシュフロー計算書は一定期間中の企業の現金・預金の流れを表すものになります。キャッシュフロー計算書は次の3つの部分に分かれます。

  1. 営業活動でのキャッシュフロー
  2. 投資活動でのキャッシュフロー
  3. 財務活動でのキャッシュフロー

営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー+財務キャッシュフロー=企業のキャッシュフローの増減=貸借対照表の現金の増減です。

本来、企業活動の基盤である営業活動から得られるキャッシュフローは、プラスになっていることが健全な企業経営の前提です。投資活動には事業維持のためと新規事業のため、また事業外の短期投資などがあります。営業キャッシュフローから事業維持のための投資キャッシュフローを差し引いたものをフリー・キャッシュフローと言い、これは企業が将来のために使える資金であるので重要な意味を持ちます。

財務活動でのキャッシュフローは、企業の財務体質や株主に対するスタンスをよく表すものです。短期借入金・長期借入金の増減、増資、自社株買い入れ、配当などが主な項目で、営業キャッシュフローが低かったり営業キャッシュフローより投資キャッシュフローが大きかったりしたら、借入や増資で資金調達を図らなければならず、逆なら余剰の資金が借入金返済や配当などに回せる、といったキャッシュの動向が示されます。3つのキャッシュフローを見ることで、企業経営の動向がよく把握できるということです。

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キャッシュフローの違い

前に示したA社B社C社の損益計算書は売上100、製造原価50、純利益10と同じであるとします。減価償却費の計上はA社10に対して、B社15、C社5と違っています。この期の営業活動からのキャッシュフローを間接法で出してみると、配当と賞与はないことにして、キャッシュフローの増減はA社+20、B社+45、C社―30と異なりました。C社はこのマイナス分の運転資金を借入などで調達しなければなりません。もし銀行が貸し渋りをしたとすると、損益計算書は黒字でも資金ショートを起こし、黒字倒産ということもありえます。

業績は同じでもキャッシュフローの違いがこれほど大きな違いになる極端な例です。

中小企業にとっても

欧米の企業は資金調達に社債発行や増資などの直接金融と、自社利益から生まれるキャッシュフローを中心に資金繰りを行っていますが、日本の企業は銀行への依存度が高く、借入という間接金融が中心であるといわれます。これからは銀行依存形の間接金融から、自社利益から生まれるキャッシュフローを中心にした直接金融に切り替えていくべきであるという提言もあります。

中小企業にとってもこれは他人事ではありません。新会計基準の適用は全ての企業に及ぶものと考えるべきです。融資や事業提携に当たっての評価基準も、いずれ全てキャッシュフロー計算書が基本財務諸表の一つとされる新会計基準が基本になっていくからです。

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