ファイナンシャル・リスクマネジメント 第5講座 ~新会計基準5つのポイント~
5つのポイントの新会計基準
2002年に完全導入されて久しい新会計基準には5つのポイントがありました。
- キャッシュフロー会計の導入
- 取得原価主義から時価主義会計へ
- 税効果会計の適用
- 退職給付会計の導入
- 個別決算から連結決算重視へ
キャッシュフロー会計
まず、新会計基準にある5つの中のキャッシュフロー会計です。キャッシュフロー経営は、いかにして自社のキャッシュフロー=カネ=現金・預金を稼ぎ出し、どうすればそれを最も有効に最大化できるかを考えることが基本です。
新会計基準のキャッシュフロー会計のポイントは、単にキャッシュを貯め込むだけでなく、いかにして有効に投資し、将来に最大化するかを考えて実行することです。投資におけるグローバルスタンダードは、利益からキャッシュフローへと評価の基準を変えてきています。株式市場などの有価証券投資のみならず、新規事業に対する投資の判断基準も、キャッシュフローで行うことがもはや主流です。投資やさらにはM&Aの尺度としてもキャッシュフローが用いられます。
なぜ、新会計基準ではキャッシュフローなのでしょうか。キャッシュフローは客観性が高く、操作の余地がなく、誰が計算しても同じ数値が出るからです。もう一つの理由は、損益計算書と違って期間的なズレがないということがあります。したがって企業の客観的パフォーマンスを見る最良のツールとなる、という理由からです。
新会計基準にはキャッシュフロー経営の基本であるキャッシュフロー会計が組み込まれ、キャッシュフロー計算書が基本財務諸表の一つにされました。キャッシュフロー計算書とは、営業・投資及び財務の各キャッシュフローから構成され、営業キャッシュフローから現状維持のための投資キャッシュフローを差し引いたフリー・キャッシュフローは、EVA=経済的付加価値の計算や、1株当たりの期待配当にも大きく影響を与える指標です。
時価主義会計
金融商品については取得原価主義が取られることが多いのですが、これは簿価ともいい、資産を取得時に支払った対価で評価することですが、信頼性、検証可能性、客観性において利点があり、損益計算書を重視する財務諸表の利用者ニーズに合致していました。
しかし、次のような批判から、時価主義への移行が1990年以降潮流となってきています。それは第1に、含み益が貸借対照表に反映されないので、益出しに利用されるなど本来の事業の期間損益を歪め、企業経営の実態をタイムリーに開示することができないこと、第2に資産デフレが著しくなる傾向の状況下で、含み損を財務諸表に反映されないまま放置し、損失処理を先送りする不健全な状態を作ってしまうこと、の二つの批判です。
グローバルなマーケットの連動性が強まり、「企業の価値」そのものを知ることができる時価主義のニーズが高まったということでした。時価会計はキャッシュフローの予測に役立ち、企業の実態に即した経営判断を促します。時価会計は非事業資産や持ち合い株式の見直しと、資本構成の最適化を進めることにつながりました。
税効果会計
法人税等を処理する方式としては、納税額方式と税効果会計があります。それまで日本では、納税額方式とされてきましたが、国際的調和の観点から全面的に税効果会計が採用されることになりました。納税額方式では、法人税等は費用というより利益の配分として考えられていましたが、税効果会計では費用と考えて支払いの有無に関係なく発生主義で認識する方法です。
また、納税額方式では、会計上と課税計算上の損益認識時点がずれることがあり、同額の税引き前利益を上げても、税金費用の額が異なる場合が生じ、期間比較または会社間比較が適切に行えませんでした。1998年、基本的に規模の大小を問わず全ての企業に適用されました。
退職金給付会計
退職金給付会計が全ての退職給付制度に通じた包括的な会計基準になりました。社内積立か外部積立かを問わず、退職給付に関する資産・負債及び費用などを統一的に把握することになりました。それまでオフバランスであった社外積立制度による債務が、所定の計算に基づき貸借対照表に計上されるということです。
この基準により、日本の企業の財務諸表を外国の企業の財務諸表と比較することが可能になりました。日本の企業の企業価値を算出する会計基準を、グローバルスタンダードで示すようになったということです。
連結決算重視
個別決算書上では企業集団内での利益操作が表れませんでした。形式的に商品売買取引の要件が満たされていれば、利益操作であることが分からなかったのです。
しかし、連結決算書なら、個別決算書には表れてこない企業集団内の財務的情報が提供されます。子会社を通じた経済活動が拡大し、日本企業の多角化・国際化が進み、企業集団内のリスクやリターンを的確に把握できる情報ニーズ が高まってきていたのでした。例えば、減価償却の過不足、資産または負債の過大・過小計上などにより、財政状態・経営成績が正しく示されないときは、これを修正して連結決算を行わなくてはなりません。連結決算は企業集団の状況を正しく伝え、外部の利害関係者に必要な財務情報を表示するものでなければなりません。
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