新会計基準での企業経営

新会計基準の導入によって、企業経営の内容の伝え方も大きく変わりました。正確かつ迅速に市場に提供されるシステムづくり、そこではディスクロージャー制度の透明性だけでなく、海外企業との比較可能性も求められました。比較可能性とは、会計基準のグローバルスタンダードである新会計基準への収斂を意味します。

国際会計基準IASは、1998年末に基準が出揃い、1999年秋以降に本格的な適用が国際的な資金調達において始まりました。日本でもIASの趣旨を可能な限り日本企業の会計制度に組み込み、国際化をスムースに行えるようにしたもので、地球的な規模において重要な意義がありました。このような流れの中で、新会計基準の導入があったのであり「会計の比較」ではなく、「経営の比較」がより一層明確に行えるようにすることが、新会計基準の導入であったのでした。

国際企業や大企業に限らず、新会計基準の導入は全ての企業にとって重要な意味を持っていました。ディスクロージャー制度の整備・改革は中小企業までをも巻き込んで来ています。

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キャッシュフロー経営

新会計基準の導入で重要なポイントはキャッシュフロー経営です。キャッシュフロー経営とは、端的に言って企業経営の基本を、キャッシュフロー中心に考えるということです。それまでは、日本の企業は長い間、シェア、売上、利益の3つを経営の判断基準としてきました。これをキャッシュフローに切り替えて考えるということです。

それまでは主に資金繰りにあたっての財務的な観点からだけキャッシュフローを扱って来ていましたが、導入以降は事業評価そのものにキャッシュフローの要素を取り入れていくことが重要です。

例えば、ある事業を評価するとき、一定の期間にどのくらいの「利益」を上げたかではなく、いくらの「キャッシュフロー」を稼いだかで評価するというようなことです。また、予算作成にあたっては、利益目標と併記してキャッシュフロー目標も策定することになります。

さらに、キャッシュフロー経営を価値創造経営という観点で言えば、各事業部が作り出すキャッシュフローを向上させ、キャッシュフローの非営業部分を最適化させる経営です。従来の「含み依存経営」から脱却し、稼ぎ出したキャッシュフローを最大限活用して、将来のキャッシュフローを稼ぎ出すという経営になります。

経営指標も変化

戦後の復興期の経営指標はシェアと売上高が中心で、投資指標も配当利回りが主流でした。高度経済成長による株価の上昇により、PER(株価収益率)が主流となり、1980年代には株式や土地などの含み益を加えた純資産を株価で除したQレシオが流行しました。1990年代に入ると、投資効果で考えるREO(自己資本純利益率)、PCFR(株価キャッシュフロー倍率=株価と収益力を比較して、株式投資価値を測定する尺度)などの指標が用いられるようになりました。さらにEVA(経済付加価値)が注目されました。

キャッシュフロー分析の指標には、PCFRのほかに、キャッシュフロー・マージン(売上が営業キャッシュフロー獲得にどれだけ貢献しているか)、キャッシュフロー対営業利益率(営業利益の質的側面を測る指標。100%を下回ると良くない)、1株当りのキャッシュフロー(資金面から配当能力を判断する指標)、キャッシュフロー総負債比率(負債の元本返済能力を表す指標。倒産を予測する指標としても役立つ。高いほど余力がある)などがあります。

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時価評価による企業財務の再構築

保有する資産からどれだけの収益を上げることができているのか、全社的な資本コストは決まっているので、これを上回る収益を上げることが経営者の使命です。ROA(総資本利益率)はこれを測る指標です。資本コストを上回る収益を上げるには、資産効率を高めなければなりません。どのような資産をどう使うかが課題です。

日本の企業は、年間売上高に対する現金保有額比率が十数%と高いのですが、ムーディーズは年間売上高の一定比率を必要運転資金とし、超過分を余剰資金と見做します。現金保有額比率が高いということはそれだけ余剰資金を抱えているわけで、資本コストを引き下げるとしても、ROAは低くなります。したがって、多すぎる現金保有高は必ずしもプラスの評価だけではないのです。

設備投資等の多額のキャッシュフローが発生する予定があり、そのために保有しているのであれば問題はありませんので、むしろ積極的にそれを発信していくべきなのです。しかし、何の目的もなく多額の現預金を保有していることは、キャッシュフローを生み出していないので、必ずしもプラスではないということなのです。

企業価値をいかにして高めていくかということに集約して、財務の再構築を考えるとき、保有資産がいかにしてキャッシュフローを生み出すかが大きな課題であるのです。

コーポレート・ガバナンスの変化

コーポレート・ガバナンスのあり方にも変化がありました。株主総会の形骸化への批判や、株主の自覚から、株主の意識や行動に変化がありました。

海外の企業との経営比較の可能性を追求する改革も進んできています。経営成果の明確な開示とその責任分担をはっきりさせ、企業の価値が、その投資がどれだけのリターンを生むのかの一点に収斂することで、コーポレート・ガバナンスは転換することになります。具体的には、経営者はROE経営を意識することになり、経営資源の効率化と圧縮が要請されます。「企業は社会のもの」という観点で、転換していく方向が諸外国の変化といえます。

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