ファイナンシャル・リスクマネジメント 第2講座 ~ステージ0から1への行動会計~

投稿日:

ISOプロ担当者

最終更新日: 2019年04月04日

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会計の基礎

「混沌」のステージ0からステージ1に進むために必要な、企業会計の基礎の「いろは」について、行動会計の考え方に沿って紹介します。会計の基礎である行動会計は事業の損益分岐点を示すための方法であり、財務会計と管理会計の共通の基本データを導くもので、また管理会計の経営管理の領域に絡む戦略をも導くものです。

その意味では、ISOマネジメントシステム規格4.1状況の理解、4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解、6.1リスク及び機会への取り組み、の箇条に関連してくるものといえます。

会計の基礎的な考え方

売上高(PQ)に対してまず固定費(F)です。売上高はPQ=vPQ(直接原価)+mPQ(付加価値)と表されますが、固定費は付加価値から支出されるべきものと考えます。固定費には、人件費、賃貸料、水道光熱費、減価償却費、銀行借入金利などをさします。付加価値から固定費が支出され、残った分が利益(G)となります。つまりG=mPQ-Fという式になります。

損益分岐点とは、付加価値と固定費がイコールになるポイントで、付加価値を固定費が食い尽くすと、利益はゼロ、オーバーすると損になるそのポイントです。

直接原価のvは直接原価率です。これが40%であれば、固定費を0.6で除した値が損益分岐点の売上高になります。例えば月の固定費が100万円であれば、損益分岐点は167万円、月の売上が167万円を超えないと利益が出ません。売上がこれを割り込めば赤字、超えれば黒字ということです。付加価値のmは付加価値率です。

財務会計と管理会計の分岐

会計の基礎的な数値のデータを基本にして、過去の推移を表す財務諸表を作成するための会計が財務会計であり、Gを生み増やすために、つまり価値創出のために知恵を出す会計が管理会計への道となります。

戦略を考える

それではその知恵、つまり戦略の方に進みます。知恵を出して行動に移す軸を作ることから行動会計といいます。

決め手は数式の中にある、P/Q/v/Fの変数です。PとQを増やし、vとFを抑える知恵を出す、ということが戦略を考えるということです。

品質の向上はできないか…

P戦略:単価アップ⇒製品または、サービスの機能及び/または性能を向上させて品質の向上はできないか、顧客に対する付加サービスと販売力の強化はできないか、さらに、高付加価値の製品またはサービスを開発できないか、パッケージデザインなどの改善はできないか、ブランドイメージのアップはできないか、シェアの拡大はできないか、値引き額を抑制できないか、といった方向の知恵を考えます。

P戦略の例としては、顧客に対する付加サービスの強化の方策を検討し、イートインスペースの拡充を検討して、店内にそのスペースを新たに設ける、といったものがあります。かつて私が、パン屋さんの店舗設計について助言を求められ、店頭で買ったデリカパンをその場で食べることができるスペースを設けたらどうか、と提言したことがありました。その頃はまだ、どこにもそのようなスペースを設けている店舗はありませんでした。イートインのスペースは顧客への付加サービスの強化で、実際に最近はスーパーもコンビニも設けています。

顧客は増やせないか…

Q戦略:数量アップ⇒新ジャンルの製品またはサービスを開発できないか、新市場を開拓して顧客は増やせないか、製品または、サービスの機能及び/または性能の向上・品質の向上はできないか、ブランドの認知度のアップと浸透を促せないか、販売またはサービス提供の拠点を強化できないか、販売力の強化はできないか、といった方向の知恵を考えます。

Q戦略の例としては、市場開拓の方策を検討し、戸別訪問による販売方式を実験的に開始し、販売拠点と主婦層による戸別訪問販売部隊を創設する、といったものがあります。直接販売なので収益性は高いのですが、販売ルートの開拓から始めなくてはなりませんので、市場性は低い地点からの実験ということになります。販売ルートをしっかり築いた先行の成功事例をベンチマークします。実験の中で販売チャンスを発見し、ルートを開拓して販売力を強化し市場を拡大していくために、採用した主婦部隊からもアイデア提案を集めるなど、試行錯誤しながら新製品開発のヒントも見出す機会も作ります。

原価率は下げられないか…

V戦略:原価率ダウン⇒材料の歩留まり率を向上できないか、資材等の仕入れの合理化はできないか、発注方法の改善はできないか、設計・開発による改善はできないか、外注への生産指導の強化はできないか、といった方向の知恵を考えます。

V戦略の例としては、外注への生産指導の強化を検討し、アウトソース先の第二者監査を徹底するといったものがあります。監査の場で生産指導も実施して、最終的に外注先の収益を確保し増進しながらも、仕入れ原価のダウンを導きます。

固定費は下げられないか…

F戦略:固定費ダウン⇒冗費を削減できないか、作業のリードタイムを短縮できないか、設備・機器をもっと有効に活用できないか、要員の作業スキルの向上はできないか、設備投資によるコストの削減はできないか、設備の稼働率を上げることはできないか、在庫の回転率の向上は図れないか、といった方向の知恵を考えます。

F戦略の例としては、要員の作業スキルの向上はできないかを検討し、要員がスキルの向上に意欲を感じるような評価項目と評価方法を新たに作るというものがあります。意欲を刺激するために、作業員にも評価項目と評価方法の開発に参加してもらいます。

以上のどの戦略に焦点を当てるか、それをまず検討して、その課題について各事業部は内部で検討し、アイデアを出し合い、事業部の利益増進戦略を決定します。

この記事の著者
清水正敏(ISO マネジメントシステム構築運用コンサルタント /ISO 品質システム&食品安全システム審査員)
平成15年ISO品質システム審査員登録、平成20年からQMS 審査員としていくつかの審査機関の審査に従事。システム論と問題解決技法とを統合したマネジメント手法によるマネジメントシステム構築と運用の支援を標榜し、コンサルタント及び研修講師、審査員を勤める傍ら、取材・文筆など多方面で活躍。主な著書は『竹輪の頭はどっち?!』(メタブレーン)『ISO 審査革命』(オンブック)など。

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