ISO14001とSDGsの違いは?活用するための枠組みを解説
- ISO14001とSDGsは、広義の環境に対するガイドライン
- ISO14001とSDGsは理念や目的に違いはあるが、共通点も多く、親和性が高いことから活用が可能
ISO14001とSDGsは、異なる立ち位置にあるものの、親和性が高いと言われています。
この記事は、ISO14001をすでに取得しており、SDGsへの参入を検討している企業向けの内容です。ISO14001とSDGsの違いや関連性が高いと言われる理由、そしてISO14001をSDGsに活用する際の枠組みについて解説します。
目次
ISO14001とSDGsの違いとは
まず、ISO14001とSDGsの概要や、それぞれの違いについて解説します。
ISO14001とは
ISO14001とは、環境
マネジメントシステム
に関する国際規格
です。
企業活動における環境リスクを分析し、そのリスクを低減するための仕組みを構築するガイドラインとして定められています。
そのため、ISO14001の取得を希望する企業や組織は、規格の要求事項を満たすマネジメントシステムを構築・運用し、審査を受けることが必要となります。
ISO14001における「環境」とは、海洋や森林など自然環境のことだけではありません。取引先や政府、自治体、従業員や顧客といったステークホルダーなど企業を取り巻く環境すべてを含んでいます。
ISO14001の認証を取得することで、対外的な信頼の獲得や環境リスクの低減・回避、省エネルギー推進によるコスト削減などの効果を得ることができます。
SDGsとは
SDGsとは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略です。
地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓った目標として、全世界で取り組みが行われています。
2015年に国連で採択され、2030年までに地球市民全員で達成するべき17の目標から構成されています。17の目標の中には地球環境、労働環境などあらゆる事業の企業活動に深い結びつきがある目標も含まれています。
ISO14001とSDGsの違い
ISO14001とSDGsの違いは、国際規格か目標であるか、という位置付けが大きく異なります。その位置付けの違いにより、審査の有無・達成期限の有無・対象の違いなども挙げられます。
まず、ISOの取得においては、審査を受ける必要があります。取得後も、定期的に更新審査を受ける必要がありますが、達成期限は設けられていません。
また、ISOは主に企業や自治体などの組織が対象であり、一般市民などの個人は対象になりません。
一方でSDGsは、世界中の国、自治体、企業、個人問わず取り組みが推奨されている目標です。そのため、誰でもSDGsへ参加することができ、その内容を対外的にアピールすることも自由となっています。
また、達成期限が2030年に定められており、国連が中心となって全世界で活動が行われています。SDGsは、あくまでも「目標」という位置付けであるため、SDGsへの取り組みを行うにあたっての審査や、資格更新などの手続きは不要です。ただし、すでに認定企業を支援する取り組みは始まっており、今後、認証規格となって審査などを受ける必要が出てくる可能性はあります。
企業がSDGsとISOの相乗効果を狙うためには、まずは、それぞれの立ち位置を理解することが大切です。
ISO14001とSDGsの関連性とは
次に、ISO14001とSDGsは、どのような関連性にあるのかを解説します。
ISO14001とSDGsの共通点
異なる位置づけにあるISO14001とSDGsですが、その考え方や目指すべき姿には共通点があります。
バックキャスティング
ISO14001とSDGsはどちらもバックキャスティングをコンセプトとして、持続的な発展と成長を実現するための要件やガイドラインとなっています。
ISO14001とSDGsにおけるバックキャスティングとはアウトサイド・インとも呼ばれ、企業や国、自治体、個人の現状から取り巻く環境を考えるのではなく、社会や地球の未来のニーズから考える手法です。
ISO14001は、企業活動における自然環境や労働環境などの環境に及ぼすリスクを分析・低減する仕組みを構築するガイドラインとして示しています。一方でSDGsは、2030年に達成すべき17の目標を通じて、未来視点から環境への対応を促しています。
詳しくは本記事の「【実践編】SDGsコンパスとISOの要求事項を紐づける」でご紹介していますので、ご覧ください。
事業との一体化が必要
ISO14001とSDGsは、どちらも対外的なアピールのためだけに取り組むのではなく、事業と一体的に取り組む必要があります。
ISOには定期的な審査があり、認証を維持するためにはPDCAサイクルを回していく中で、継続的な改善が求められています。SDGsも事業とは関係のない見かけだけの取り組みだと、予算や人員を活動に割くことができず、取り組みが形骸化してしまう可能性があります。
方針の範囲
ISO14001では環境方針を定めることになっています。
社会環境など外部環境のニーズから、持続可能な社会を実現していくのか、認証を取得した企業のトップが方針を決定します。SDGsも、経営トップがどのように取り組んでいくのか、方針を示したうえで取り組みます。
ISO14001とSDGsは相性が良い
ISO14001もSDGsも、持続可能な社会の実現を推進しています。
ISO14001を取得している企業であれば、そのマネジメントシステムをSDGsの活用につなげられるでしょう。
【実践編】SDGコンパスとISOの要求事項を紐づける
ISOは要求事項、SDGsは実施のためのガイドラインとして「SDGコンパス」があり、両者は親和性が高く、活用する際に対応させて考えるとイメージしやすいでしょう。
SDGコンパスとは
SDGsコンパスとは、企業がいかにしてSDGsと経営戦略を整合させていくかをまとめたガイドラインです。企業がSDGsへの取り組みを簡単に行えるように道筋を示しています。ガイドラインの詳細はSDGコンパスの公式サイトに掲載されています。
ISO14001とSDGコンパスを紐づける
ISO14001取得の際に構築し、運用しているマネジメントシステムの対応するステップに、SDGsの段階を当てはめて考えることで、SDGsを実施する体制をつくることができます。
【SDGコンパスとISO14001との関係】
・ステップ1:SDGsの目標とISO14001の課題を選定する
まず、SDGsの17の目的のうち、自社の事業に適切な目標を選ぶ段階です。ISO14001では、適用範囲を理解します。自社の経営課題の整理を行い、SDGsの目標を踏まえたうえでISO14001における外部及び内部の課題を決定することが必要です。バックキャスティングを意識し、社会のニーズを正確にすくい上げることがポイントとなります。
・ステップ2:優先課題を決定する
SDGコンパスでは、企業のバリューチェーンの中で影響範囲を特定のうえ、課題の優先順位を決めます。ISO14001においても、リスク範囲を決定する段階です。
上場企業であれば、対外的に公表している有価証券報告書やIR情報の会社説明会資料などからリスクをピックアップして、どのように対応するかを整理するとよいでしょう。
また、リスク範囲の決定は重要な指針です。対外的なイメージも考慮しながら、責任範囲と優先順位を決めましょう。
・ステップ3:目標を設定する
SDGコンパスでは、目標の設定として、KPIとベースラインを決めます。ISO14001では、取り組みの計画や環境方針を決定します。
経営トップ自らが目標にコミットするとともに、自社における重要性を考慮しながら具体的で計測可能な目標を定めていきます。
・ステップ4:経営へ統合する
ISO14001とSDGs、どちらにおいても取り組みを企業に定着する段階です。また、ISOでは取り組みや運用の計画を定めます。
単にSDGsやISOの取り組みが全社の宣言だけにならないように、各部門の方針に組み込むとともに、経営陣や部門担当役員をリーダーとして推進計画を策定します。
・ステップ5:報告とコミュニケーションを行う
最後にコミュニケーションです。SDGコンパスもISO14001も、社内外へのコミュニケーションについて定めています。
特に、改訂版ISO14001では周囲の利害関係者に対するニーズや期待を明確にするとともに、企業が積極的にコミュニケーションを取ることが求められるようになりました。
このようにISO14001の仕組みを活かすことで、戦略の立て方~実施後の評価までのPDCAサイクルの実施につながります。
ISO14001をSDGsの実践に活かそう
ISO14001とSDGsはそれぞれ異なる理念から生まれたものですが、両者は一致する部分も多くあります。特にISO14001を取得している企業は、その範囲の親和性の高さから、ISO14001のマネジメントシステムをSDGsに活用することは難しいものではないでしょう。
SDGコンパスとISO14001を紐づければ、SDGsとISO14001の取り組みを連携させることもできるでしょう。そのためにも、まずは自社におけるISO14001で構築したマネジメントシステムを、SDGsの目標と紐づけて計画し、実践に活かしましょう。
ISOプロでは36万円から御社に合わせたSDGs導入サポートを実施中
ISOプロでは新たにSDGsへ取り組み検討中の方に、新規導入から運用支援まで幅広くサポートしております。
また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に導入しているお客様においてもご提案しております。ぜひご相談ください。
こんな方に読んでほしい