近年、SDGsが注目され、物流業界でも取り組みが始まっています。実はCO2排出量のうち大きな割合を航空機や自動車の排ガスといった物流関連の活動が占めているのです。物流業界では具体的にどのような試みが求められているのでしょうか。事例とともにご紹介します。

なぜ今「SDGs」が注目されているのか?

SDGsとは?

SDGsとは国連が定めた「持続可能な開発目標」です。
17の目標から構成され、国や企業、個人などの区分を超えた地球市民全員が取り組むべき目標とされています。2015年9月の国連サミットで採択され、2030年を達成期限としています。

SDGsとサステナビリティ

SDGsはサステナビリティ(持続可能性)の取り組みのひとつです。
サステナビリティにはニュアンスがいくつかあり、一般的には、地球社会の中長期的な発展と成長のために取り組む活動を意味します。

一方、ビジネスにおけるサステナビリティとは、地球社会と共生しながら企業が持続的成長や発展を実現する取り組みと定義されます。
サステナビリティ自体は新しい概念ではなく、1987年にノルウェー首相を委員長とした「環境と開発に関する世界委員会」の報告書で初めて使用されて登場したものです。その後、1992年に国連「地球サミット」で地球環境問題に取り組むアジェンダ21が採択され、2000年にミレニアム開発目標(MDGs)が採択されました。SDGsは1980年代後半からのこうしたサステナビリティの流れを汲む取り組みであり、MDGsの次の目標として登場しました。

サステナビリティは以前より世界的に求められてきた概念であり、その高まりがSDGsにつながっています。SDGsを突然掲げられた目標と感じていた方も多いかもしれませんが、実は以前からのさまざまな議論の末に成立したといえます。
そして、17の目標として具体的に可視化されたことで、企業はサステナビリティの実現のための行動に移せるようになり、結果として注目を浴びるようになったのです。

SDGs、396,000円/月から作業工数ほぼ0実現!SDGs導入完全サポートならISOプロ

物流業界におけるSDGs関連の課題

SDGsはさまざまな業界で取り組まれています。物流業界ではどのようなSDGs関連の課題があるのでしょうか。

CO2排出量

物流では、多くのCO2を排出します。国土交通省のレポートによれば、2019年の日本全体のCO2排出量11億800万トンのうち、運輸部門からの排出量は2億600万トン(全体の18.6%)でした。

物流業界のCO2排出量の内訳は、主にトラックなどの燃料消費によるCO2排出が中心と推測されます。ほかにもプラスチック梱包資材をつくる際に生まれるCO2など、物流業界は多くのCO2排出が生まれる業界です。

参照:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」

資材のリサイクル

物流業界では梱包資材を多く使用するため、資材のリサイクルが課題に挙げられます。
通販で配達されたものには、段ボールや緩衝材などの梱包資材によって包まれているのが一般的です。こうした資材は多くの場合、配達先に届けられたあと、不要になれば捨てられます。
毎日、大量に捨てられている梱包資材のリサイクルが求められるのは必然であり、物流業界にとって大きな課題といえます。

労働環境の改善

大きな課題として挙げられるのが労働環境の改善です。
物流業界では、ドライバー不足による慢性的な長時間労働が続いています。ドライバーが不足する一方で、ECサイトへの需要が高まり、物流は増加の一途をたどっています。配達員が不足し、一人で大量の荷物をさばく事態が起きているのです。配達員が荷物をさばききれず、放棄してしまったことがニュースにも取り上げられるほど、物流業界では慢性的な長時間労働と重労働が強いられている状況です。

SDGsの目標に当てはめて考えると、環境に関する課題だけでなく、資材や労働環境の課題も存在することが分かります。

物流業界で取り組まれているサステナビリティ活動

さまざまな課題が存在する物流業界において、課題を解決するべくサステナビリティ活動を実践するための制度や体制づくりが進められています。実際に行われている2つの活動を見ていきましょう。

物流総合効率化法とは?

物流業界でサステナビリティ活動に関する法律として、物流総合効率化法があります。
物流総合効率化法とは、流通業務の輸送、保管、荷捌き、流通加工という一連の流れを一体的に実施することを推進する法律です。
また、「輸送網の集約」、「モーダルシフト」、「輸配送の共同化」などの輸送の合理化により、流通業務における効率化を目指す事業に対して支援措置や計画の認定等を定めています。物流業界は人々の生活を支えるインフラビジネスのため、国土交通省の許認可によってサステナビリティな活動が行われています。

物流総合効率化法により、許認可が一部緩和され、複数社が共同で物流センターを保有することや、共同配送を実施することが可能になりました。これにより、労働環境の一部改善、資材の削減に取り組むことができるようになったのです。

ホワイト物流推進運動

労働環境改善の取り組みとして物流業界では「ホワイト物流推進運動」を行っています。
トラック運転者の不足が深刻な事態のため、生活や産業活動に必要な物流の安定した確保と、物流業界の経済成長に役立つことを目的とした取り組みです。
ホワイト物流推進運動では、輸送生産性の向上と、働きやすい労働環境の実現に向けたチェックリストが用意されています。

法律的根拠のある活動ではなく、物流事業者が自主的に参加して取り組む運動です。しかし自主的に改善に取り組むことで、納得感のある活動になり得る点が評価できます。

SDGs、396,000円/月から作業工数ほぼ0実現!SDGs導入完全サポートならISOプロ

SDGsを達成するための物流業界の取り組み事例

課題解決のため、SDGsに取り組んでいる物流業界での事例をご紹介します。

事例1:テクノロジー活用による労働環境の改善

物流業界ではテクノロジー活用による労働環境の改善に取り組んでいます。
例えば、倉庫では、荷物のピッキングや配達先の選別の自動化がかなり進んでいます。ピッキングではロボットが荷捌きをして、梱包やラベリングまでを行っています。
また、倉庫内の荷物の移動も自動運転のパレットによって行われ、荷物がトラックまで自動で運ばれる仕組みもあるのです。さらに近年ではトラック輸送の自動運転化の研究も進んでいる状況です。テクノロジー活用により、ほとんど人がいなくても物流が成り立つ仕組みができ始めています。

事例2:環境に優しい梱包資材の採用

毎日、大量に消費される梱包資材も環境に優しいものが使用され始めています。
例えば、緩衝材はこれまでプラスチックが使用されてきました。プラスチック緩衝材は海に漂流すると、ウミガメなどの海洋生物へ危害を及ぼすことになります。そこで生分解性プラスチックを使用した緩衝材や、緩衝材の代わりに紙を使用するケースも出ています。また段ボールについても、古紙をリサイクルしたタイプが使用されています。地球に優しい梱包資材により、物流業界でも環境配慮の取り組みが進んでいる状況です。

事例3:ハイブリッド車によるCO2排出量の削減

近年ではCO2排出量を減らすべく、トラック輸送で使用するトラックをハイブリッド車にする企業が増えてきています。
例えば、トラックのような排気量の多い大型車では、ハイブリッド車にも大きな電池機能が求められるため、開発が難しい状況でした。しかし技術開発が進み、トラックでもハイブリッド車が開発されすでに市場に出回っています。ハイブリッド車を使用すれば、使用する燃料を削減できるほか、電気を一部動力として使用できるため排ガスにおけるCO2排出量も減らすことができます。

このように、物流業界の各企業は、さまざまな切り口からSDGsに取り組んでいます。

SDGsへ取り組み始める前に、専門家に相談するのもひとつです

全世界でSDGsへの取り組みが行われています。誰もが目指すべき事業戦略上でも重要な課題です。ビジネスでも業界に関わらず、企業が果たすべき役割を担う必要があります。

今回ご紹介したようなCO2排出量の多い物流業界のような業界では、特に重点的に実施することが求められています。しかし、実践するにあたり、本当に有効な施策かどうかを検討する必要があるでしょう。自社でよかれ、と考えた施策でも、専門家の視点からよくよく見てみると、実は総合的に環境負荷が大きくなる取り組みであることもあり得ます。

自社の視点だけに頼った取り組みはSDGsの「やっているふり」にもつながるため、リスクも大きいと考えられるでしょう。そのため、まずはSDGsを始める前に専門家に相談するのも一つの方法としてよいのではないでしょうか。

SDGs、396,000円/月から作業工数ほぼ0実現!SDGs導入完全サポートならISOプロ

ISOプロでは36万円から御社に合わせたSDGs導入サポートを実施中

ISOプロでは新たにSDGsへ取り組み検討中の方に、新規導入から運用支援まで幅広くサポートしております。

また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に導入しているお客様においてもご提案しております。ぜひご相談ください。

SDGs、360,000円/月から作業工数ほぼ0実現!SDGs導入完全サポートならISOプロ