労働安全衛生マネジメントシステム の国際規格 である ISO 45001。この規格は、適用範囲というものを決定する必要がありますが、近年の働き方の多様化によって、その境界線は曖昧になってきています。

一方ISO45001では、「職場 」や「働く人 」という概念が出てきますが、認証取得を目指す企業はこれらを明確にした上で危険源 を特定し、リスクに対応していく必要が出てきます。

さて、ではISO45001における職場や働く人はどの範囲の人々のことを指すのでしょうか?

ISO45001における働く人の定義

働く人の範囲
ISO45001では、労働安全衛生方針労働安全衛生目標 を決定する必要が出てきますが、これらは「働く人」を考慮した上で決定する必要があります。――つまり、ISO45001の対象者というのは、「働く人」の定義を読み解けば理解できるのです。

ISO45001を日本語訳したJIS Q 45001では、働く人を以下のように定義しています。

組織(3.1)の管理下で労働する又は労働に関わる活動を行う者。
注記1 労働又は労働に関わる活動は,正規又は一時的,断続的又は季節的,臨時又はパートタイムなど,有給又は無給で,様々な取決めの下に行われる。
注記2 働く人には,トップマネジメント(3.12),管理職及び非管理職が含まれる。
注記3 組織の管理下で行われる労働又は労働に関わる活動は,組織が雇用する働く人が行っている場合,又は外部提供者, 請負者 ,個人,派遣労働者,及び組織の状況によって,組織が労働又は労働に関わる活動の管理を分担するその他の人が行っている場合がある。
JIS Q 45001

以下では、いくつかの例を挙げながら、それらの人々は「働く人」に該当するのかどうかということについて解説していきましょう。

正規雇用で労働に従事する人々

これは誰もがイメージしやすいですが、所謂正社員は当然働く人に含まれます。組織の管理下で労働を行い、通常の場合は通年で労働を行っています。

非正規労働者

アルバイトやパートタイマー、派遣労働者のようなその他の非正規労働者も組織の管理下で労働をする人間であります。これも正社員と同様イメージしやすいでしょう。一点だけ注意しておきたいのは、ISO45001では雇用形態に関わらず労働者は平等に扱う必要があるということです。――どういうことかというと、正社員を危険源から遠ざけるために非正規労働者を危険源に晒すようなことはあってはならないのです。当然ですが、逆もまた然りです。

トップマネジメント

所謂経営層、役員や取締役も組織の管理下で労働をする者とみなされるため、働く人に含まれます。

お手伝い

家族経営の場合は「手伝い」として労働を提供するようなケースも存在するでしょう。このような場合でも、それは働く人に含まれます。ISO45001では、賃金は発生しているか、雇用契約を締結しているか…ということは関係なく、労働を提供するかどうかによって対象者が決定することを意識しましょう。

請負者

請負者とは、合意された仕様や契約に基づき、組織に対して請負労働などのサービスを提供する外部の組織または個人のことを指します。

イメージしやすいのは、常駐のフリーランスのような人々です。あるいは、派遣労働者もある意味ではここに含まれるでしょう。その個人やチームがどの組織に所属しているかに関わらず、組織の管理下で労働を提供しているのであれば、ISO45001では働く人に含まれることになるのです。

取引先

取引先も場合によっては組織の管理下で組織に対して労働を提供する人になりえます。日本では、IT業界などでは比較的このような労働形態が見られるでしょう。

では、これらの人々が取引先のオフィスから労働を組織に対して提供しているような場合はどうでしょうか? あるいは、在宅で組織に対して労働を提供するフリーランスはどうでしょうか?

ここで着目したいのが、働く人は「組織の管理下で労働をする者」ということです。これは組織の管理下――つまり「職場」の定義に左右されることになるでしょう。

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職場とはどこが該当するのか?

職場の範囲
職場は、ISO45001では以下のように定義されています。

組織(3.1)の管理下にある場所で,人が労働のためにいる場所,又は出向く場所。
JIS Q 45001

つまり、オフィスや建設現場のような組織の管理下にある場所であれば、そこで労働を提供する人々のことを「働く人」に位置づけて問題ないでしょう。しかし、在宅で労働を提供するような人々の職場――つまり人の家にまで組織が介入して管理を行うことはできません。

このような場合は「働く人」から除外しても問題ないでしょう。

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