【第8講座】ISOコンサルタントの選定基準

著者:清水正敏
投稿日:
更新日:2020年06月23日

内部監査を外部に委託するISOコンサルタントには、大きく“経営者を経験したこともあるコンサルタント”と“企業の品質 保証部責任者を経験して退職したコンサルタント”のに分かれます。企業が内部監査を外部に委託する場合、どちらのコンサルタントに委託することが良いのでしょうか。
コンサルタントの選定について説明するために、コンサルタントである私のコンサルタント経歴についてお話していきます。

経営者を経験したコンサルタントの強み

2015年版のISO規格から要求事項に”戦略的な方向性”という文言が登場しており、以前と比較しても経営戦略的な項目が強化されました。それに伴い、コンサルタントも会社経営の引き出しを多く持たなければいけません。そのため、コンサルタントを選ぶ基準の1つに会社経営の引き出しを多く持っているかが重要になります。

経営に強いコンサルタントを選ぶには以下の項目を確認してみてください。

  • コンサルタントは会社経営の経験はあるか?
  • 依頼組織の経営環境を理解し、経営に貢献するコンサルができるか?
  • コンサルタント業務の質を向上させるために経営学などの勉強をしているか?
  • コンサルティングが、結果的に依頼組織の存続と発展につながるようなプログラムか?

私の経験

私は大学では文化史学、文化人類学、言語学を学んでいます。卒業してからは広告代理店に就職し、コピーライターで広告プランナーでした。数年後に広告制作の会社に転職します。その後起業して、自分で広告制作会社を設立し、経営も経験しました。

コピーライター&プランナーは、広告主のクライアントから広告を撃ちたい製品についてオリエンテーションという説明を受けた後、広告展開の計画及び広告制作のためのコンセプトを策定しなければなりません。

訴求対象である広告ターゲットを決めて、広告媒体のミックスを考えます。広告媒体ミックスとは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4大媒体に、ポスター、店頭ポップ、折込チラシ、リーフレット、交通媒体、街頭看板、ビルボード、そしてパブリシティなどのミックスです。コピーライター&プランナーの仕事は、広告という企業が行なうマスコミュニケーションへのコンサルティングの側面があります。

媒体ミックスを考えたら次は広告表現のコンセプトづくりです。何を核にして、どんな手法で、広告目標はどこに定めるかを考えて、コンセプトとして提示します。そのうえで思いが至ったキーワードを、フレーズに乗せて表現にします。

例えば、ナチュナルなシルエットのデザインが売りのファッションブランドのキーワードは「普通」でしたが、フレーズに乗せて表現すると「素敵に普通が、ステキです。」となり、このフレーズにナチュナルメイクの女性の意志的な表情写真を組み合わせて、基本的なビジュアル表現として広告主のクライアントにプレゼンテーションします。

これは提案でありますが、コンサルテーションでもあります。コンサルテーションにもユニークなオリジナリティが必要なのです。ユニークなオリジナリティは相手企業のユニークネスを生み出し、発展に寄与するようになるからです。

広告制作の次は企業アイデンティティ=CI作成の支援、というコンサルティングでした。広告制作の技術を企業デザイン制作の方向に発展させることは、容易にできることでした。

依頼企業のトップマネジメントにインタビューをして、事業シナリオ、つまり中期的な経営展望と戦略、トップとしての思い、長期的なビジョン、市場状況と競合関係、現状の環境 認識、当面の活動ドメインの考え方、そしてこれからのミッションと思っている提供したい価値、そのために必要な知識や技術、新規性への経営志向と方向性、今後の人材計画、恐れているリスク、その予防策、組織とシステムのあるべき姿、最近気になることを確認します。

このインタビューで書き取ったメモからキーワードを選び出して、経営基本方針をセンテンスとして作成します。この時の手法がISOマネジメントシステムの構築と監査でも生きているわけです。インタビューで聞き取りをした後、経営基本方針を作成して、これをシンボルマークやシンボルカラー、キャラクターなどによる、ビジュアル表現に展開します。経営基本方針の作成がMIマインド・アイデンティティ作成、ビジュアル表現の展開がVIビジュアル・アイデンティティ作成です。

こうしてCI作成のコンサルテーションを提供した企業から、幹部・中堅社員教育の依頼がきます。しかしながらその時は、研修のノウハウがありませんでしたので、研修の専門会社と提携して、その支援で研修のノウハウを習得しました。

研修のコンテンツは、人づくり組織づくりをモットーに、管理職の責務、管理の方法、仕事の教え方、危険予知訓練、一仕事するとはどういうことか、問題の構造、問題の見方、現場での品質管理のポイント、そしてKJ法、歩行ラリーといった手法に至ります。

これらの手法はマネジメントの手法であると言っていいでしょう。これらの研修を実施するうえでの大きな特徴は、ラベルを使うワークショップ方式で進めるという点でしょう。小さなラベルに裏移りしないマーカーで書き込み、そのラベルを模造紙に貼って表などを作成します。自分の手で書き、貼り込む作業は感情移入が起きて、参画意識とそこに表現される内容への認証を深くすると思います。手での作業は強い感情移入を生むことは、広告制作におけるクリエイティブで学んだことでした。

こうした研修事業を展開する中で、問題構造学、ワークデザイン、ブレイクスルー思考法、知力経営、学習する組織、といった経営手法、経営学も学びました。

マネジメント手法の研修というコンサルテーションは、自ずとISOマネジメントシステムに繋がって行きます。

しかしながら当時のマネジメントシステムは品質保証 システムで、多くの文書化した手順を求め、文書体系を作ることがISOであるようなシステム観に支配されており、勧められるものではないと思っていました。

ところが、2000年版の改定で文書化の考え方が大きく変わり、私が勧めたいシステム観に変身してくれたのです。私がISOマネジメントシステムに取り組むべきと決意したのはこの時でした。

私がISOマネジメントシステムに取り組むまでの経緯を紹介したのは、私にはこのようなISOマネジメントシステムへのアプローチがあり、これがコンサルティングのバックグランドになっていることを伝えたかったからです。ISOマネジメントシステム構築のコンサルティングに至るアプローチには、人それぞれの様々な方向からのアプローチがあることでしょう。そこにどれくらいの層があり、その結果としてどれくらいの引き出しがあるのか、それがコンサルティングの奥の深さになっているのです。

品質担当を経験してきたコンサルタントの強み

ISOコンサルタントの中には、大手企業の品質保証部長や品質管理部長など企業がISO認証取得をする時に管理責任者など務めていた方がいます。この方々のバックグラウンドは務めてきた会社で経験した知見です。そこから品質保証部出身者のISOコンサルタントは、生産現場のコンサルティングが極めて有効だといえます。

経営経験もあるコンサルタントは、経営戦略的な引き出しを持っていますが、品質保証部出身のコンサルタントは、生産現場に関する引き出しを持っています。コンサルタントには一長一短があるので、ISOを取得する目的、会社の将来的なビジョンを描いた上で、コンサルタントを選ぶようにしましょう。

コンサルタント選定のチェックポイント

上記の2種類のコンサルタントを理解した上で、チェックポイントを見てみましょう。

  • 経営層としての会社経営の経験があること。
  • 過去にISO取得責任又は支援の経験があること。
  • 業種経験が少なくないこと。
  • コンサルティングの幅ができるだけ広いこと。
  • 自分の経験を話してもひけらかさないこと。

上の項目に当てはまる項目が多ければ多いほど理想のコンサルタントと言えます。

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この記事の著者情報
清水正敏 ( ISO マネジメントシステム構築運用コンサルタント /ISO 品質システム&食品安全システム審査員 )
平成15年ISO品質システム審査員登録、平成20年からQMS 審査員としていくつかの審査機関の審査に従事。システム論と問題解決技法とを統合したマネジメント手法によるマネジメントシステム構築と運用の支援を標榜し、コンサルタント及び研修講師、審査員を勤める傍ら、取材・文筆など多方面で活躍。主な著書は『竹輪の頭はどっち?!』(メタブレーン)『ISO 審査革命』(オンブック)など。

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