ISO返上しなければ審査費用が無駄となる審査

ISO 返上が良策と思われる事例です。地方のある建設関連のS社、規模は要員20人、現地一人日の定期審査です。この組織は認証 取得から8年目で、この定期審査の目的は「継続的にマネジメントシステムが維持改善されていることの確認」とされていました。

審査計画は、以下のようなスケジュールです。

09:00-09:30 初回会議
09:30-10:00 トップマネジメントインタビュー
10:00-11:00 管理責任者との面談
11:00-12:00 建設現場での審査
12:00-13:00 昼食時に内部監査記録と目標管理表を閲覧調査
13:00-15:30 二部門の責任者面談と関連文書審査及びシステムの有効性確認
15:30-16:30 審査レビューと報告書作成
16:30-17:00 終了会議

審査が立て込んでいたので、担当の主任審査員がこの組織の品質マニュアル に目を通したのは前日でした。用意されているのは白紙の審査メモ用紙だけであります。

審査日当日、8時45分頃到着した審査員は、用意されていた審査員室に案内します。応対に出た専務が管理責任者です。専務から、社長が急に終日不在になることが伝えられ、審査員はこれを受け入れ、トップインタビューは専務に対して行われることになります。社長は初回会議開始の直前に挨拶にだけ現れ、名刺交換をしてそそくさと出かけていきました。

初回会議では、伝えなくてはならないとされている事項の伝達が定型的に行われます。

専務に対して行われたトップインタビューは、社長がこの日現場で立ち会わなくてはならないという公共の土木工事についての質問から始まります。工事名、工期、工事の規模、現場の位置など。他の受注工事の質問になり、現場審査が行える工事が建築工事であることを確認します。そして受注工事の概況について、土木と建築、公共と民間のそれぞれの比率、この間に変化があったかなど。さらにシステム運用上の課題と思っているところ、マネジメントレビューへの報告内容と社長の指示内容、そして最近のクレームとその記録について、以上がトップインタビューでの面談の主な内容でした。

建設現場では、基礎工事がほぼ終わり翌週に棟上げという段階の現場をツアーし、この日の投入人員の確認、重機車検証紙及び計測機器の校正証紙の確認、掲示板の内容確認、現場事務所では現場代人と面談、設計図書、重機の日常点検記録、新規入場者教育記録、危険予知活動記録、それらの文書についての質疑応答が行われました。

昼食時は昼食をとりながら、内部監査記録と、品質 目標管理表を閲覧、実施内容を確認します。

午後1時からは各部責任者との面談ですが、まずは現場を見てきた建築部責任者に対して、現場に必要な記録の不備について検出事項としたい旨の確認と了解の後、専務も交えてシステムの運用状況の確認を行います。品質目標 の進捗状況、顧客満足度調査記録、内部監査の実施状況と内部監査員 数、供給者評価、要員の教育・訓練と資格、クレーム対応、実施された 是正処置 、そして最後に前回審査時の検出課題の対応状況確認が行われました。

検出課題は現場に必要な労働安全に関わる記録の不備について、軽微な不適合として一ヵ月以内の是正処置を求めるものとなりました。

指摘文書「○○ビル建設現場において、その日の現場入場者を確認したところ、下請けのB社の者が3名入場していた。また新規入場者はC警備会社の者1名であった。新規入場者教育は、記録から規定通りに行われていることが確認できた。しかし、B社の入場者に対する始業前の危険予知活動の記録が、その日も含めて数日間作成されていなかった。

入場手順書では毎日記録をつけることになっており、また規格4.4.2 b) には

プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報を保持する。
【出典】JIS Q45001:2018(8.1 運用の計画及び管理)

とある。文書化の不適合である。

指摘の背景は、現場での記録作成及び文書管理が不十分であることが、事故発生時に大きな禍根となる恐れがあることでした。

この例は現状行われている適合性審査の典型的な事例といってよいでしょう。検出課題は危険予知活動の記録の不備という、万が一に事故が起きたときには不利になる要素ではありますが、そうでなければそれ自体が何の問題も引き起こさないものであり、活動そのものは実施されていました。現場事務所の文書の管理には他にも改善すべきところは散見されましたが、是正を公式の文書で求めるほどの状態であるだろうか、と思うものだけです。

こんな審査はよくある審査ですが、これでは目の前の些細な欠陥は修正できても、経営方針を支援する審査にはなりません。審査費用が無駄ということです。

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膨大な文書類に押しつぶされISO返上のO社

1994年版で認証を取得した従業員50名ほどの電子基板実装のO社の事例です。背景としては最初の担当が文書づくりをISOだと誤認していたことがあり、またもう一つの背景として契約したコンサルタントが大手企業の品質管理部の退職者でとにかく大手並みの文書づくりを推進したことがあったこと、さらに審査を申請した審査機関の審査方針及び派遣された審査員からの指摘によって、審査のたびに文書を増やし、また内容を緻密化して来た結果、2018年の担当者交代の時は、膨大な文書類に押しつぶされるように感じたそうです。

この間に景気の落ち込みや市場の変化に伴って、従業員の数は20名前後になっており、重いシステムの維持は至難の業になっていました。そこで担当者は経営者と協議し、また顧客とも協議して、認証を返上の上、維持が可能な範囲で運用の継続はしていくことにしました。

曲げの程度判断を設計開発だと言われISO返上のT社

地方にある精密板金のT社の事例です。背景は選定した審査機関の審査方針にありました。2008年版までは、設計開発は除外項目としていましたが、何年にも渡って受けてきた審査機関の審査員は、審査の都度、設計開発はあるはずだと、不毛な議論を蒸し返し、無駄な時間を費やすだけで、経営ツールとしての成長を促すような指摘や議論はありませんでした。その上、2015年版のギャップ分析を別途費用で請負ながら、そのギャップを埋める方法は何も示唆することなく、さらに取り組むべきリスクの例として自然災害を上げたそうです。

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規格4.1や6.1についての質問ができない審査員

電装品製造のS社の数年間の審査記録に、146件の検出事項が記録されていました。その全てが、プロセスアナリシスによる形式的な欠点の掘り起こし、対応しても何のメリットもない瑣末な事象を捉えたものでした。この審査機関の審査員は製造工程の現場にある一本一本の木や枝や葉脈まではよく見ることができていましたが、経営という森のシステムを見ることはできなかったということです。S社にとっては審査費用の無駄でした。

品物の生産においては不良の原因をたたく源流管理を言いながら、目標の管理では目標の不適切の原因をたたく源流管理を問えない審査員の現状があります。審査のパフォーマンスを低くしているのです。これではISOの規格が組織の存続と発展に寄与できないのは当然でしょう。審査のパフォーマンスが上がらないのであれば、組織は審査に価値を見出せません。

経営経験のない審査員には、経営戦略に関わる4.1や4.2そして6.1についての質問をする勇気がないと実際に聞きました。そうだとすれば、審査費用の無駄になると思うのです。

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