ISO返上からの回帰

ISO 返上は負担が軽くなるというメリットはありますが、そのままではせっかく構築し運用してきたマネジメントシステム が崩れて行くことは間違いありません。そこでISO返上後の専門家のコンサルタントによる内部監査をお勧めして、そのためのコンサルタントの選定について説明してきました。

ISO返上して、第一者認証と専門家による内部監査によって経営ツールとしてのマネジメントシステムの成長を期するとしても、ISO返上は対外的には認証を取得していない状態と同じです。第三者認証 は社会的信頼性の担保ですので、その面では不利になることがあります。一旦はISO返上をしても、そうしたデメリットが経営に影響を与えるようなら、審査機関を厳選して再取得を検討するということになります。

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審査機関の内部はどうなっているのか

ISO返上後の再取得における審査機関の選定について説明するために、審査機関の内部について少し説明をしておきましょう。

審査機関の規模は大小さまざまですが、基本的には審査部門と管理部門の二つの機能から成立ちます。審査部門は審査員を確保し、その力量 を保証して、審査スケジュールの作成と審査員の配置と手配、審査先の企業との調整を担当します。管理部門は営業と事務になりますが、営業は新規審査先の確保と継続を担当し、事務は審査先のデータ作成と管理、認定 機関への申請手続きやその他の連絡報告、請求書発行と審査員報酬の支払いを担当します。

審査機関で経験したこと

審査員である私の新規の審査員としての審査機関における経験についてお話しておきます。

先ずはISO9001:2000審査員養成研修の5日間コースを受講しました。受講準備として規格 のハンドブックを買うように求められます。各節の冒頭の頁にインデックスを貼りました。

研修の最初はISO規格の概要説明から始まり、規格の意図の解説、品質マニュアル の実例の解説、チェックリストの作り方、審査員としての態度と心得、チェックリストを用いての審査の概要、審査のロールプレイと進みました。最終日の後半に試験が実施されて、採点と合否判定は後日連絡ということで終了しました。

そのあと、合格通知とともに品質 管理技術の通信添削指導を受けるようにという連絡があり、研修の時に購入したテキストで、QCの基本とQC7つ道具についての通信添削をしました。これらの受講修了証書を添付して、JRCAに品質システム審査員補の登録をします。

それから4年後、ようやく最初に審査員契約したJAB系のA審査機関は、審査員教育に熱心で、教育担当の部署がありました。契約した直後に新規の審査員の3日間研修の日程が通知され、事前学習の資料が送られてきました。審査員の心得、コンサルティングにならない審査のテキスト、架空企業の特定製品製造の品質マニュアル、規格意図の解説資料、審査手順の概要と要領書、事前学習の記入用書式でした。

事前学習は、審査員の役割の記述、課題製品の業界調査、品質マニュアルの問題点の抽出、特定部署審査用のチェックリスト作成でした。これらの課題を実施して、その結果を郵送します。

3日間の研修のため、都内の研修施設に新規審査員8人と教師役の主任審査員2人は合宿しました。自宅から研修会場までの交通費は支給されました。教師役の主任審査員は、大手建設会社と大手資材商社の出身者です。1日目2日目は夜の10時まで研修が行われました。

研修の最初は、審査員としての心得について、そして規格意図の解説の講義です。規格意図の解説は時間をかけて丁寧に行われたのですが、有効性についての講義はあまりなかったように思います。続いて品質マニュアルの問題点についてのセッション、教師役の主任審査員はこれぞ得意の分野という感じで、皆があまり気づかない間違いや問題点を指摘して解説していました。夕食後の課題が出されて、その結果をUSBに入力して提出しないとテレビも見ることができません。

2日目は審査の手順の講義です。初回会議から終了会議までの手順と注意事項の講義のあと、チェックリスト作成の方法、検出事項の記述方法の説明と実習が続きます。また、審査の実例の描写が配布されて、そこに描かれている審査の進め方や言動、態度の問題点を指摘するセッションもありました。夕食後の課題は検出事項の記述でした。

3日目は前夜の課題の評価、講評から始まりました。エビデンスに基づく事実の記述、審査基準の引用、不適合の指摘、懸念事項の表現、使ってはいけない表現、など検出事項の記述の基本が教えられました。その後は審査の実習、ロールプレイ、初回会議と終了会議の必須項目と進め方の解説があり、最後は筆記試験でした。

次は交通費だけ支給される実審査への立ち合い実習、事後のレポートの提出、これを数回実施後に審査員に昇格、メンバー審査員としての報酬のある審査に携わることができるようになりました。

最初に付いた主任審査員は大手重機メーカー出身者、2回目は大手鉄鋼会社の出身者、その次は大手航空機メーカー出身者、その次の主任審査員もやはり大手の鋼板メーカー出身者、といったように大手メーカーの品質保証の経験豊富な方々でした。ただ、現役の時に経営のことには関わることはなかったようでした。

次に契約したやはりJAB系のP審査機関は、40才代50才代の社員審査員の方が多い機関でした。つまりサラリーマン審査員で、当然のこと経営経験があるわけではないのです。現場での品質保証システムの審査はできるとしても、経営方針についての会話はお聞きしておくだけに留まり、核心に触れること、例えば経営のリスク及び機会についての存続の危機に触れる事項の質問はできなくて当たり前のことです。

従って2015年版の4.1や6.1、また4.2に関することは、さらっと流す程度のインタビューになってしまい、せいぜい昨今の売上高の推移を確認する程度でお茶を濁すに留まります。実はここが2015年版のキーポイントで、マネジメントシステムの経営戦略的な有効性を判断できる基軸になっているのですが、それには触れずに審査を済ますことになってしまい、結果として企業の存続と発展に寄与できない審査員ということになります。

この審査機関では導入の審査員教育は全くありません。審査マニュアルが渡されるだけで、定例の審査員研修もありませんでした。そのうえ事前の審査員チーム内の打ち合わせもなく、審査技術のブラッシュアップもできません。

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審査機関を選定するポイント

ISO認証を返上して、自らの監査で適合を維持し、専門家による監査で内実を高めることができたとして、時により顧客から認証を取得するように求められることもあります。その時は、以下のような項目を確認して審査機関を選定してください。

  • 派遣する審査員は産業分野の専門性だけでなく、会社経営の経験があり、マネジメント知識も有しているか?
  • 派遣する審査員に審査技術の質向上のため、審査員研修を定期的継続的に実施しているか?
  • 審査業務の質を向上させるために審査員研修に経営学やマネジメント論なども組み込んでいるか?
  • 依頼組織の経営環境を理解し、事前準備を十分にして、経営に貢献することを心がける審査か?
  • 審査は結果的に依頼組織の存続と発展につながるようなプログラムか?

会社経営に詳しい審査員に注目

審査員の中には数は少ないかもしれませんが、会社経営について詳しい審査員はいます。私も数人のそうした経営経験のある審査員と一緒に審査をしたことがあります。業界についての専門的な情報もありますし、経営に影響を与えることにも言及して、審査先の社長も話し甲斐がある様子でした。

私も審査のトップインタビューの時は、事業シナリオの内容の質問を用意して臨みます。それは規格の4.1と4.2、そして6.1に繋がるのですが、それをベースに現場での監査をしました。経営戦略が現場で実を結ぶ方向に気づきを少しでも提供できればと思い審査を進めます。それも経営経験があるからできることと思っています。

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