マネジメントシステムの方針策定は知の結集と止揚

2000年版2008年版マネジメントシステム での、新しい組織での審査や内部監査員 養成講座をしていた当時、審査や研修のたびにそれぞれの組織の品質マニュアル が届きましたが、それらを見てはマネジメントシステムの方針のありきたりな表現にうんざりしていました。また組織を訪問して、目標について確認すると、これもまたなんとありきたりの多いことか。 ISO マネジメントシステム 規格 を導入して運用しているさまざまな組織の、このような実態を知るなかで、あるとき講義の中で ISO9000 での定義を再確認する機会がありました。このとき私は初めて気がついたのです。ISOマネジメントシステムはナレッジマネジメントのシステムだったのだと。

マネジメントシステムにおける方針・目標の作成プロセスは、知の結集と止揚のプロセスです。方針の作成を個人の内側で実行するときのプロセスの流れでは、自らの中に蓄積した知識を動員して、その源泉を確認しながら思考を巡らしていると、何かをきっかけに直観が働き、それぞればらばらにあった知識が一つの方向に向かってまとまりだして方向性が決まる、というのが知の結集と止揚です。つまり直観的な閃きによる方針の作成です。

私も、かつて探求し今も親しんでいる幾つかのナレッジマネジメントの方法論が一方にあり、ISOマネジメントシステム規格の意図の理解とそれに基づく審査やコンサルティング、また研修での講義がもう一方にありました。マネジメントシステム構築のコンサルティングや講義では、ナレッジマネジメントの方法論を用いることはありましたが、審査の場でこれを用いるということまではなかなか思いが到りませんでした。

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組織の価値創造と価値提供のための知識

ISO9001:2015の7.1.6 組織の知識に以下のような記述があります。

「組織は,プロセスの運用に必要な知識,並びに製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識を明確にし…この知識を維持し,必要な範囲で利用できる状態にし…変化するニーズ及び傾向に取り組む場合,組織は,現在の知識を考慮し,必要な追加の知識及び要求される更新情報を得る方法又はそれらにアクセスする方法を決定しなければならない。」
【出典】JIS Q9001:2015(7.1.6 組織の知識)

規格でいう知識とは、まずは製品・サービス実現のための知識で、言い換えると組織の価値創造と価値提供のための知識です。価値創造の知識とは、製品・サービスを考案し創るための知識で、価値提供の知識とは、創った製品・サービスを社会に提供していくための知識です。この創り提供するための知識にはその仕組みに関する知識も含まれます。

「知力経営」の「知識論」

組織に内在する知識について、紺野登、野中郁次郎共著の「知力経営」は、組織の次世代競争力の源泉としていますが、彼らの「知識論」について確認をしておきます。

まず組織内の知識をいくつかのレベルに分類しています。すなわち、革新的技術、価値や概念、製品としての知識、知的資産、技術ノウハウ、顧客と共同創出される知識、企業間で共同創出される知識、もう一つ「環境を認識し、情報を獲得・処理し、意思決定する「知的基盤」としての知識 (未来予測能力、業務的知識、経営プログラム、専門諸知識が含まれる)であるとして、それらと他の知識の相互関係を系統樹に示しています。この知的基盤としての知識が、企業ビジョン・理念・目的であり「自己知識」 です。これを根底として、組織の知識のダイナミックスは展開されるとしています。

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定義「商品の本質は知識である」

商品=製品・サービスの本質は知識であるとは、優位な領域での自己知識の経験的蓄積や、経営者の能力・知識、組織的に共有された認知的能力、組織文化・風土としての自己知識、個々人に体化された知識教養、これらの自己知識を組織資源として、これらを土台に創出されたものが製品・サービスということです。つまり、組織に内在する創発の知識を土台にして、実体化している能力によって製品・サービスは創出されるということです。

さらに、今後の競争の源泉は有効な知識であり、知識資源のマネジメントのための組織的な能力であるとします。この「能力ベース経営」の基本は、「自己進化のための資源を内部に持つ『有機体』だという見方です。」その狙いは、組織の持続的な成長を実現することで、品質マネジメントの7つの原則と共通しています。

こうした狙いを持つ能力ベース経営でエンジンとなるのは、組織資源レベルの自己知識を成果に結びつける知識変換レベルのマネジメントです。そのレベルでは組織は自己の現在の組織資源を把握し、明確な方向性においてマネジメントしなくてはなりません。この知識変換のマネジメントが、組織に内在する根底となる創発の知識から、顧客が必要としながらも誰も想像もしていなかったような、組織を発展させる製品またはサービスを創出するのです。

組織特有の知の「創出運動」創造プロセス

さまざまなヒット商品がありますが、どの商品も知識変換のマネジメントの結果です。したがって知識変換レベルを意識的に動かし、新規開発のマネジメントをすることが組織を存続と発展に結びつけるのです。 ちなみにISO9004:2009には知識について次のような記述がありました。

「6.7.2 知識 トップマネジメントは、組織の現在の知識ベースを明らかにし、如何にして保護するかに対処しなければならない。トップマネジメントは、アカデミックで専門的な機関のような、内的および外的な情報源から組織の現在および将来のニーズを充たすために必要な知識を、如何にして獲得するかも考慮しなければならない。」 ISO9004:2009(米戸康彦訳)

いかなる組織にも、組織特有の知の「創出運動」創造プロセスがあり、どのような部門・業務であっても、何らかの知識や価値の創出が行なわれうるのです。その創造プロセスには、イノベーション・プロセスとビジネス・プロセスの二つの側面があり、前者は革新的なアイデアの創案、後者は知的付加価値活動としての顧客満足の創出です。 いずれも新規の開発であります。

この創造プロセスは、知識変換を中心的な特性とする知を作る組織のダイナミックスです。こうした知のメカニズムを内蔵している組織を知力ある組織と呼びます。この創造プロセスを意識的に顕在化させ、知識変換の場を作り、変換プロセス全体を促進するマネジメント力が、知力です。

組織が目的を定義し、方針と目標を設定して、これを達成するプロセスはこの創造プロセスであるはずです。新規の開発プロセスも当然この創造プロセスであります。

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