【入門】ISO9100とは?メリットや要求事項をわかりやすく解説
- ISO9100とは、航空宇宙・防衛分野に関する品質マネジメントシステムの国際規格
- ISO9001の要求事項をベースに、固有の要求事項が追加されている
技術の進歩や市場ニーズの高まりから、航空宇宙・防衛分野に関する産業の動きが活発化しており、注目を集めています。日本でも小型衛星の打ち上げニーズに応じてイプシロンSロケットの開発が進められています。
航空宇宙・防衛分野に関する製品は、一歩間違えれば人命に関わることから、非常に高度な安全性や品質が求められる産業です。そのため、ISO9100というISO 規格を取得することが国際的な基準として採用されています。
そこで、この記事ではISO9100の概要や要求事項、取得メリットなどについて詳しく解説します。
目次
ISO9100とは
ISO9100とは、航空宇宙・防衛産業に関わる品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
高度な安全性や信頼性、品質を満たす製品・サービスの提供を目的としており、そのために「航空宇宙・防衛産業における顧客および規制要求事項」を満たすことが求められています。
ISO9100の対象となる業種
ISO9100の対象となる業種は、航空宇宙や防衛産業に関わる企業です。例えば、以下のような業種が挙げられます。
- 航空機メーカー
- 宇宙機器メーカー
- 防衛機器メーカー
- 航空宇宙や防衛産業に関連する部品・材料メーカー
- 補給品の供給業者
- 機器の整備・修理業者
- 航空宇宙や防衛産業に関する製品の販売業者や流通業者
- その他関連する下請負業者や業務委託業者など
JIS Q 9100との違い
ISO9100とJIS Q 9100は、ほぼ同じものとして扱われます。というのも、ISO9100を日本語に翻訳して規格化したものがJIS Q 9100なのです。
そもそもJIS規格とは日本国内の規格であり、日本産業規格(JIS: Japanese Industrial Standards)のことです。JIS 「Q」は、JIS規格のカテゴリ「管理システム」であることを表しています。
多くの日本企業は、JIS Q 9100を取得することになるでしょう。JIS Q 9100は国内規格であるものの、アメリカのAS9100やヨーロッパのEN9100と相互認証されています。そのためJIS Q 9100を取得すれば、アメリカやヨーロッパでも有効です。
ISO9100とISO9001の関係性
ISO9100について理解する際、必ず目にするのがISO9001です。両者はどちらもISOマネジメントシステム規格であり、密接に関係しています。
ISO9001とは品質マネジメントシステムに関する規格であり、建設業や製造業をはじめとしたさまざまな業種で普及しています。
幅広い業種に対応できる柔軟性を備えた規格となっているため、航空宇宙・防衛産業や自動車産業、医療分野などの専門性の高い分野においては、ISO9001をベースにしつつ、その分野に特化した要求事項を追加して規格化しているのです。
航空宇宙業界でも、ISO9100が策定される以前にはISO9001を製品・サービスの基準として使用されていましたが、業界特有の要求を満たす国際的な統一規格としてISO9100が制定されました。
ISO9100の取得メリット
ここではISO9100を取得するメリットを解説します。
国内外における取引機会の増加
ISO9100は、国際的に統一されている品質マネジメントシステム規格です。認証されれば、自社製品・サービスの品質が一定の基準以上であることが証明されます。
またISO9100を取得することで、国際的な航空宇宙関連企業の代表者で構成される国際航空宇宙品質グループ(IAQG:International Aerospace Quality Group)のIAQG-OASISデータベースに登録されます。そのため、世界中の企業との取引機会が増加するでしょう。
事業体制の強化
ISO9100を取得するには、示されている要求事項をすべて満たすことが必要です。自社に適合した品質管理体制を構築できれば、品質向上につながるでしょう
また航空宇宙・防衛分野は人命に直結する分野であるため、特に信頼性や安全性が重視されています。ISO9100ではこうしたニーズに応えるべく、法令順守やリスクマネジメントに取り組むことが求められているため、事業体制の強化につながります。
業務効率化やコスト削減
ISO9100を取得する過程で、現在の業務プロセスを可視化し、問題点やムダな点、改良点などがないかどうかを見直すため、業務効率化につながる可能性があります。
またISO9100を取得することで、顧客からの監査などが免除、簡略化される場合があるため、監査にかかるコストを削減できます。
ISO9100の要求事項
ISO9100の要求事項は、「ISO9001の要求事項+ISO9100の追加要求事項」という形になっています。そのため、基本的な規格構成はISO9001と変わりません。
序文 | 適用対象
|
|
1 | 適用範囲 | |
2 | 引用規格 | |
3 | 用語及び定義 | |
4 | 組織の状況 |
|
5 | リーダーシップ |
|
6 | 計画 |
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7 | 支援 |
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8 | 運用 |
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9 | パフォーマンス評価 |
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10 | 改善 |
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●:航空宇宙・防衛産業固有の要求事項が含まれている事項
ただし、ISO9100の審査範囲はさらに顧客要求事項や法令・規制上の品質マネジメントシステムに関する要求事項も追加されるため、注意しましょう。
ISO9100特有の要求事項
以下にISO9100特有の主な要求事項についてまとめました。ここでは一つひとつの項番について解説します。
8 運用 | 8.1 運用の計画及び管理 |
|
|
---|---|---|---|
8.5 製造及びサービス提供の管理 | 8.5.1 製造及びサービス提供 |
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8.1 運用の計画及び管理
- 8.1.1 運用リスクマネジメント
- ISO9001ではリスクマネジメントについては「6.1 リスク及び機会への取組み」で示されています。ISO9100ではさらにリスクマネジメントを強化するべく、以下を含む運用プロセスに関連するリスク管理が求められています。
- 責任や役割の明確化
- リスクアセスメントのための基準(発生確率や影響の大きさなど)の決定
- リスクの特定、アセスメントやコミュニケーション
- リスク受容基準を超えるリスクに対する軽減処置の明確化や実施・管理
- 軽減処置を実施したあとの残留リスクの受容
- 8.1.2 形態管理(コンフィギュレーションマネジメント)
- 形態管理(コンフィギュレーションマネジメント)とは、製品のライフサイクル(設計、実現、検証、運用のサポート情報)に応じて形態が変化することを前提に管理することです。
例えば、航空機の部品を改良する際には設計図を改版します。その際に受ける製造手順や加工条件などの影響を認識し、管理することが必要です。
- 8.1.3 製品安全
- 製品ライフサイクル全体で安全を保証するために、必要なプロセスを計画したうえで実施し、管理することが求められています。
- 8.1.4 模倣品の防止
- 模倣品や模倣品が疑われる製品の使用や混入を防ぐプロセスを計画したうえで実施し、管理することが求められています。
8.5 製造及びサービス提供の管理
- 8.5.1.1 設備、治工具及びソフトウェアプログラムの管理
- 製造プロセスの自動化や管理、監視、測定に使用する設備や治工具、ソフトウェアプログラムについて、妥当性を管理して維持することを求めています。また保管に必要な処置や点検などの要求事項を定めることも必要です。
- 8.5.1.2 特殊工程の妥当性確認及び管理
- 特殊工程とは、通常の品質検査だけでは保証が困難な場合に、有効な検査を行う必要がある検査工程のことです。特殊工程に該当する場合、以下の事項を含めた手続きを行うことが求められています。
- プロセスのレビュー及び承認のための基準決定
- 承認を維持するための条件の明確化
- 施設や設備の承認
- 人々の適格性認定
- プロセスの実施及び監視に対する所定の方法及び手順の適用
- 保持すべき文書化した情報に対する要求事項
- 8.5.1.3 製造工程の検証
- 特殊工程について、製造工程の検証活動を実施することを求めています。具体的には、リスクアセスメントや生産能力調査、製造能力調査、管理計画が含まれる可能性があります。
その際、新規の部品や初回製造からの代表品を使用することが必要です。設計の変更や製造プロセスの変更などがあった場合には、繰り返し実施しなければなりません。
まとめ
この記事では、ISO9100の概要や要求事項、取得メリットなどについて詳しく解説しました。
ISO9100は取得することで、航空宇宙・防衛産業では国内外におけるビジネスチャンスの増加につながります。今後、ますます市場ニーズが高まるといわれている分野であるため、航空宇宙・防衛産業に進出を検討している企業や国際進出を目指したい企業は、早めに取得することで他社との差別化も期待できます。取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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