【第10講座】ISO返上、それでも認証の再取得

投稿日:

ISOプロ担当者

最終更新日: 2019年04月30日

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ISO返上を勧めましたが

高い費用を費やして構築し、また高い費用を費やして維持してきたISOマネジメントシステムの認証、それなのに経営方針を支援する効果が期待できるところまで成長していないとすると、それは審査が成長を促すものでなかったからで、ISO返上と内部監査による第一者認証に切り替えることを勧めてきました。確かに審査員の経験からも、以下のようなISO返上の方がメリットある実態を見てきました。

ISO返上したい審査機関P

審査機関のP社は、適合性が維持されていることがすなわち有効性が維持されていることだとし、適合程度の審査と有効性の審査を分けて考えないとします。確かに規格は有効性のレビューと改善まで要求しているので、それを実施していれば適合であり有効性も担保していることになるかも知れません。では、規格の品質方針の「マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。」という要求事項への適合は、何を持って適合しているとするのでしょうか。コミットメントとは心血を注いで専念することで、単に方針の文書に記述されているだけでは適合とはいえません。しかし現実の審査の現場では、方針に関する文書に「有効性の継続的改善を…」といった意味合いの記述があればそれで適合としているのが実状です。

その主任審査員は、有効性はシステムが組織にとって「重荷」になっているかいないかで判定できると言いました。有効性の用語の定義を無視した解釈と言わざるをえません。傍で見ていてISO返上を勧めたくなりました。

有効性審査ができない審査員

また、S審査機関の主任審査員は、私が規格の内部監査の「品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されているか。が満たされているか否かを明確にする…」を基準に内部監査での検出が、効果的かという観点で行われていないことを指摘しようとすると、対応の方法が分からないからと反対しました。

さらに、私が経験した審査の現場で、ある部署の目標がその部署の現状の日常的業務を「しっかり遂行すること」となっていても、それまでのどの審査員も疑問を挟まず何年も経過してきており、目標の何たるかを審査員自身が認識していないのではないかと思ってしまうものがありました。

目標とは達成した現状の維持のことではなく、近い将来に達成すべき未達成の課題のはずなのに、です。そしてマネジメントシステムとは、組織の目的に対して適切な方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステムです。有効性とは、「計画した活動が実行され、計画された結果が達成された程度」であり、規格には「マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなければならない」とあるのですから、言い換えれば、「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステムの、計画した活動が実行され、計画された結果が達成された程度を、継続的に改善しなければならない」ということになります。この原点をおろそかにして有効性審査ができるはずはありません。

問題意識は形式的な適合程度

ある食品会社の社長は、ISO22000の二回目の定期審査の感想をこう語っていました。
「もっと今後の展開に関わる課題についても意見交換をしたいと思っているが、審査員の話は現場の細かいことばかりですね。指摘事項もCCPに関わる単純ミスですが、実態は何の問題も起きていないことなのに、私は問題だと思い、外部審査員から指摘して欲しいと思っている目標管理については、意見は言いましたがあまり効果的な意見ではなかったと思います。外部審査には、経営をバックアップしてくれる面がもっと欲しいですね。」

担当した審査員は大手食品会社の品質管理部門出身で、経営の経験はなく、用意してきたチェックシートは規格条項に沿って確認事項を記述した逐条的なものであり、問題意識も形式的な適合性にあったそうです。

製造工程の品質は見られても

ほとんどの審査機関の審査は、どちらかというと製造工程に力点があり、マネジメントシステムを体系的に捉えようとする審査にはまだなっていません。例えば、トップマネジメントとの面談時間が短かったり、規格の設計・開発の適用についてでは、すでに確立している処理方法の単純な組み合わせを運用するプロセスも適用すべきとしたり、またプロセスの監視及び測定では監視するプロセスを製造工程に限定したりしました。さらにリーダー候補者研修のコンテンツも、産業分野専門性とQC手法を背景に製造工程をしっかり見るという視点で構築されていますが、マネジメント課題解決の知識と手法を背景にマネジメントシステムを体系的に見るという視点の内容はほとんどありません。製造工程の品質は見られても、経営の品質は見られないという感じです。その意味で、経営的視点からはあまり価値の高い審査とはいえず、文書の形を整えることが審査品質だと考えられているきらいもありがちです。

ISO返上したい審査機関S

S審査機関の審査員レベルアップ研修で、顧客が満足する審査のポイントは何かというテーマで議論が行われました。提起されたのは「企業のパフォーマンスの向上に役立つ審査」「企業の経営に貢献できる審査」でしたので、ではその審査とはどんな審査なのかを質問してみると、誰も答えることができず、「ケースバイケース」「顧客アンケートで分かる」と言って逃れるのが精一杯でした。そういった審査の方法論がないからです。

再取得の審査機関の選定ポイント

このような審査機関があるのは事実です。だからこそ認証の返上をお勧めしてきたのですが、それでも第三者認証の価値はあります。第三者認証であるから社会的に信用されるという現実は確かにあります。だから審査機関を選び直しての再取得を、最後にお勧めします。再取得のために当社は審査機関を吟味し見極めて推薦しています。
第9講座で述べたように審査機関を選定しますが、以下のようなポイントで審査機関を選びます。

  • 適合程度の審査と有効性の審査を分けて考え、有効性審査、パフォーマンス審査を実施できる。
  • 内部監査について「品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されているか。が満たされているか否かを明確にする…」を基準に内部監査とその検出事項を審査できる。
  • 審査では、経営をバックアップする面も発揮できる。
  • 審査員は経営の経験があり、用意してきたチェックシートも規格条項に沿って確認事項を記述した逐条的なものではなく、事前準備で独自の問題意識から作成できる。
  • マネジメント課題解決の知識と手法を背景にマネジメントシステムを体系的に見るという視点で審査ができる。
  • 組織のパフォーマンスの向上に役立つ審査、組織の経営に貢献できる審査の方法を実施できる。

これらの条件を満たす審査機関なら、高い費用を支払うに足る審査になると思います。マネジメントシステムの成長を促す外部審査と専門家による内部監査が相まって、企業の存続と発展を後押しします。

この記事の著者
清水正敏(ISO マネジメントシステム構築運用コンサルタント /ISO 品質システム&食品安全システム審査員)
平成15年ISO品質システム審査員登録、平成20年からQMS 審査員としていくつかの審査機関の審査に従事。システム論と問題解決技法とを統合したマネジメント手法によるマネジメントシステム構築と運用の支援を標榜し、コンサルタント及び研修講師、審査員を勤める傍ら、取材・文筆など多方面で活躍。主な著書は『竹輪の頭はどっち?!』(メタブレーン)『ISO 審査革命』(オンブック)など。

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