「設備機器・工具管理編(校正機器)」は、製造現場で使用する設備機械や工具類の精度を管理する「校正」をテーマにした内容となります。製品品質を管理する上で「校正」は必要不可欠ですので、是非ご一読ください。

まず、校正の必要性についてです。
【校正の必要性】
企業では様々な製品が製造されていますが、製品を顧客に販売する以上、製品品質が要求(規格値)されます。そこで製品品質が規格値を満たしているか検査が必要になりますが、検査結果は妥当で信頼できることが重要であるため、検査で使用する測定器の精度が要求されます。

測定器の精度は、日常の点検とは別に定期的な校正を実施することで精度を維持できますが、
◎重要なことは、
信頼性の高い「国家計量標準に遡及できる計量標準」によって計測器を校正することです。(この方法で校正した機器を「標準器」といいます)
※JCSS(計量法トレーサビリティ制度)を利用することで国家計量標準にトレーサブルな校正が可能です。
検査機器の校正

≪補足事項≫ 
社外校正した場合、校正結果(書類)を必ず入手します

校正結果3点の場合: 「校正証明書」、「トレーサビリティー体系図」、「検査成績書」
ISO 9001監査では校正証明書のみ提示することが多く、顧客要求等で校正結果を要求された場合、どの書類が必要なのか確認しましょう。

≪注意事項≫

  • 校正結果(3点)の表記はメーカーや製品などによって異なります
  • 校正日や校正有効期間などに表記ミスがないか確認します
  • 校正有効期間はメーカー独自に設定する場合があります。疑問があれば確認しましょう。
  • 新規に測定器を購入した場合、製品保証書を校正証明書とするメーカーもあります。
    一般的に製品保証書は校正証明書ではありません。校正証明書が必要な場合、別途校正を実施しなければならないケースもありますのでメーカーに確認しましょう。
  • トレーサビリティーは「標準器」について記載されたものであり、校正証明書や成績書の機器名とは異なります。
  • JCSSマークを表示した校正証明書があれば、校正を受けた計量器が国家計量標準にトレーサブルであることを証明できます。従来の校正「一般校正」のように自らが証明する必要はありません。

ISO9001:2015における要求事項

ISO9001 :2015では、測定器に対して「7.1.5 監視及び測定のための資源」で要求しています。
顧客要求および製品・サービスの品質要求に適合するためには、品質マニュアル(品質マニュアルを作成されていない場合は相当する規定等)に関連づけされた設備機器および工具管理規定に従い、検査結果の妥当性を信頼できるよう定期的に校正あるいは精度検証して維持管理された測定機器を使用して、製品品質を保証しなければなりません。

■ISO9001:2015要求事項

7.1.5.1 一般
要求事項に対する製品及びサービスの適合を検証するために監視又は測定を用いる場合,組織は,結果が妥当で信頼できるものであることを確実にするために必要な資源を明確にし,提供しなればならない。

  • a) 実施する特定の種類の監視及び測定活動に対して適切である。
  • b) その目的に継続して合致することを確実にするために定期的に校正又は検証され維持管理されている。

7.1.5 監視及び測定のための資源

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検査記録の改ざん防止

2017年10月、神戸製鋼所の検査データ改ざん問題がクローズアップされましたが、昨年も三菱マテリアル子会社で品質データ改ざんにより罰金5千万円、スズキでも検査に不正があるなど、大手企業による品質不正問題は後を絶ちません。
 
例えば、神戸製鋼所の検査データ改ざんでは、以下のような不正行為が発覚しました。

■神戸製鋼所の検査データ改ざん-事例

不適切行為の内容
  • 顧客仕様を満たさない検査結果を満たす数値に改ざんする行為、実際に測定が行われていないにもかかわらず、測定したかのように試験結果をねつ造。
  • 不適切行為は、アルミ・銅事業部門のみでなく、その他の事業部門や当社グループ会社でも行われていた。

※参考サイト:https://www.kobelco.co.jp/progress/main-facts.html

多くの企業でISO9001認証 を取得し、プロセスアプローチにより品質管理プロセスを運用しています。定期的な内部監査 を実施しているにもかかわらず、何故このような不正行為が行われたのでしょうか。

ISO9001がデータ改ざんなどの不正行為を想定していないという専門家の意見もありますが、内部監査チェックリストを使用した内部調査頼みの監査では、「データ改ざん」などの不正行為を発見することは容易ではありません。仮に情報セキュリティのように「性悪説」や「性弱説」の考え方を前提とした監査を実施したとしても現行の内部調査頼みの監査であることに変わりはなく、結果は同じです。現在の監査のやり方では、「情報セキュリティの倫理」頼みです。

データ改ざんのような不正行為を防止するには、技術的・物的な対策が必要です。例えば、製品検査で測定器から読み取った測定データに変更が加えられないようソフトウェア側でデータ改ざん防止機能を持っていると良いでしょう。設備機械に付帯する記録計などでは既にそのような機能を持つものもあります。

測定器も同様に、パソコンにデータを取り込み、測定結果を表示させたいときは測定器メーカー提供の専用アプリでのみ表示可能にすることです。そのようなデータ改ざん防止機能をもつ測定器のみ検査で利用できるよう社内規定で定める方法もあります。

但し、専用アプリに測定データをCSV形式やExcel形式のデータに変換する機能がある場合、変換後のデータに対し編集できる場合もあります。そのようなアプリを利用する場合は、データ変換処理でログ出力するものを使用すると良いでしょう。

このように内部監査で校正機器の管理状態を確認する場合は、測定データに人の手が介在できない状態にあるか、データ改ざん防止対策を物的に講じているかなど確認することも必要です。

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